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『窓際のトットちゃん』感想

特殊アニメーションがいくつかあって(水中、雨、悪夢……)、どれもほんとうに素晴らしかったけれど、個人的には雨のシーンが心に残った。

アニメーション化に当たって、当然、演出をどうするかがよくよく考えられるわけだけれど、「窓際」のモチーフが最後まで生かされていたのには感服した。

分かりやすいのは最初と最後の対比。トモエ学園よりも前の学校で、チンドン屋さんに呼びかけるため、危険を顧みずトットちゃんは「窓枠」をたやすく飛び越える。対してラストでは、同じくチンドン屋が見えているにもかかわらず、新しい命を胸に抱え、「窓際」にとどまる。「窓際」の対比。

以上はほんの一例だけれど、教室が車両であることも相まって、めちゃくちゃに車窓アニメだった。列車のモチーフに関して言えそうなことはいろいろあるけれど、まずは素朴に、車窓の向こう側に見えるアニメーションまで作画(運動)がめちゃくちゃ良くて感動した。

アニメーション的には、泰明ちゃんがいるだけでも重力が感じられるわけだけれど、そうでなくても、たとえばトットちゃんが自分より長い棒をなんとか扱ったり、身の丈に合わない自転車でローラーコースターするなど、重力を存分に味わえるような、根本的なアニメーション体験だった。

(それはそれとして、先生のラストは(それほどに狂気的な人物だという描写であるにせよ)さすがに笑ってしまう(眼に反射炎さしてたし)。)

もうひとつの特殊アニメーション、つまり、最初の車両の夢は、パンダの転がり方が巧みで良かった。

思えば特殊アニメーションで「水」が多く使われていたことも印象的だった。夢想だから煌びやかでも良いし、重力に囚われなくてもいい。そう考えると全体的に、アニメーションの基礎が、しかし類まれな素晴らしさで描かれたアニメだった、とまとめられるかもしれない。

2024.1.9

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