最低賃金の引き上げ対策に年俸制?!月給制と年俸制のメリット・デメリットを解説します
昨今、日本では円安や物価高の影響もあって、最低賃金の引き上げが進められていますね。
昨年もがつっとあがりましたが、これからも上がっていくことが想定されます。
これは労働者の生活向上に寄与する一方で、
特に医療・介護・福祉業界においては
非常に大きな経営課題の一つとなってきています。
いわずもがな、医療・介護・福祉業界は
基本的に国が価格を決める「公定価格」で動いているためです。
最低賃金はあがっても、診療報酬自体をあげることができるわけでもなく
支出だけが増えていくということになってしまいます。
(一応その対策としてベア加算が打ち出されましたが
ずっと続くのかどうかなどは不透明です)
そう考えると、最低賃金の上昇は医療機関の運営コストを圧迫し、
最悪の場合、病院の経営が立ち行かなくなる可能性があります。
このような背景から、医療・介護・福祉業界では
今、医師以外の職種でも「年俸制」を導入する動きが増えてきています。
それはなぜか?
年俸制にすれば最低賃金が上がっても、年収を変えずに雇用できるからです。
おそらく、全員をベースアップしてしまうと病院の経営を圧迫してしまうけれど、
年収ベースで考えれば全員最低賃金はクリアしている、というケースにおいては
年俸制を取り入れないと全員が共倒れになってしまう…
というくらい追い込まれている病院が増えてきているのだと思います。
そういうことであればうちも…とは思いつつも、
年俸制というとなんだか成果主義的なイメージがあったり、
この業界に適しているの?と疑問に思われる方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、年俸制と月給制における組織側の
代表的なメリット・デメリットについてご紹介してみたいと思います。
▼年俸制のメリット
・支払い総額が決まっているので経営面で計画が立てやすい
・12分割払いの場合、月額報酬があがるので離職予防になる
(月給制のところへの転職ハードルがあがるため)
・見かけの月収が高いので採用時のアピールになる
・賞与計算がなくなり、給与計算も簡便になりやすい
・最低賃金があがっても、テーブルを変更しなくてよい可能性が高い
▼年俸制のデメリット
・経営が苦しくても決めた年俸は支払わないといけないので、賞与で調整等ができない
・残業代の計算元の報酬額があがるので、残業代が増える
・賞与がないということが採用時のネックになる可能性がある
・成果主義的にイメージだけが先行して敬遠されがち
▼月給制のメリット
・経営が苦しくなった時には最悪賞与額で人件費の調整が可能
・年俸制よりも残業代の単価が低くなる
・「◯ヶ月分の賞与支給」などが求人の際に魅力的に映る可能性がある
▼月給制のデメリット
・最低賃金に抵触してしまうギリギリの額だと最低賃金があがるたびに
賃金テーブル全体を見直す必要が出てくる可能性がある
・給与計算、賞与計算等の事務系業務が年俸制より多い
・見かけの月額報酬が年俸制と比べて安くなるので求人に魅力を損なう可能性がある
結局どちらにもメリット・デメリットはあるので
どちらが良い・悪いということはいえないのですが、
よくあるイメージのように年俸制=成果主義というわけでもないので
(実際、年俸制と成果主義は必ずしも結びつかない)
今後の経営状況も鑑み、自分の組織にとって何が効果的な形か、
一度検討してみる価値は十分にあると思います。
その結果、
「年俸制に切り替える前に、まずは賞与のあり方を見直そう」
「年俸制か月給制の前に、まず私たちは何を基準にお金を払うべきかを考えよう」
「その前に異常なほど多い残業の実態を調査しよう」
などの意見が出てくると、賃金のあり方に関する本質的な議論が展開できます。
内部だけでも話を進める事はできると思いますが、外部の意見も聞きつつ
そもそもの枠組みから見直したいという方がいらっしゃいましたら
ぜひお気軽にお問い合わせください。
人事コンサルタント
金森秀晃
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