【詩】わるいこ、だあれ？

ある日、くまくんが、うさぎちゃんのお耳をぎゅうぎゅう、ぱちん
「くまくん、やめてよ、痛いよう」
「うさぎちゃんのお耳が、あんまりかわいいからだよ」
うさぎちゃんは泣いた、くまくん笑った

ある日、くまくんが、うさぎちゃんのしっぽをにぎにぎ、ぱんぱん
「くまくん、やめて！　いやだって言ってるでしょう！」
「うさぎちゃんのしっぽが、あんまりかわいいからだよ」
うさぎちゃんは怒った、くまくん笑った

別の日も、また別の日も、くまくんは何度も何度も
うさぎちゃんのお耳をぎゅうぎゅう、しっぽをぱんぱん
「やめて」と泣いても怒っても、くまくん笑ってやめやしない
大きいくまくんにつかまえられたら、うさぎちゃんは逃げられない
叩いても、押しのけようとしても、びくともしない

だいじなお耳とだいじなしっぽ、だいじな心を守るため
うさぎちゃんは、もう、くまくんと遊ばないし近づかない

遊んでもらえなくなったくまくんは
「ごめんね。うさぎちゃんが、あんまりかわいかったから」
そこへ、きつねさんがやって来て
「くまくんは、反省してるよ、謝ってるよ。遊んであげたら？」
それでも、うさぎちゃんは、もう絶対に、くまくんとは遊ばない

「かわいいから」は、ぼうりょくのいいわけにならないのにね
きつねさんも、くまくんが何してきたか見ていたのにね
本当に大切なお友だちなら、「やめて」を笑うはずないのにね
本当にかわいく思うなら、一度の「やめて」でやめるはずなのにね
さんざん傷つけられた側が、許すことを求められるのおかしいね

わるいこ、だあれ？

「やめて」と何度言われても、しつこく嫌がらせした、くまくん？
「ごめんね」されても許さないで、遊んであげない、うさぎちゃん？
ぼうりょくを止めもしないで、許しをうながす、きつねさん？

わるいこ、だあれ？

わるいこ、だあれ？