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対話における選球眼を養いたい
わたしは少年時代から選球眼に定評がない男である。
選球眼とは、野球用語であり、ストライクゾーンとボールゾーンを見極める力である。選球眼のいい打者はボール球には手を出さず、甘いストライクゾーンを確実に仕留める。すべての打者にとって理想像といえる。
対話と選球眼は似ている。
いきなり何を言い出すんだこの男はと思うかもしれないが、最近対話をこのように捉えるようになっている。
わたしは野球も対話も初球から投手の球種やコースにかかわらずフルスイングするタイプであった。そのため、安定感に欠けていた。時には、ボールがバットに当たらない程スランプに陥ることもしばしばあった。
なぜそのような事態になったのか、今ならはっきりとわかる。観察したつもりだったからだ。
つまり、早急に相手の特徴を決めつけていた。
相手の投じたボールを表層的に捉えるのではなく、その背景にある感情や価値観な何かに注力する。そして、そこに自分の価値観や解釈を入れてはならない。
これまでのわたしは極端に言えばどんなボールでも同じスイングをしていた。相手の投じたボールの意味するものを知らずに。
ただ、野球と対話の大きな違いは三振がないことだ。野球の場合、三球ストライクが投じられれば三振となり、次の打者と交代しなければならない。しかし、対話の場合、球数はほぼ無制限だ。
よって、相手がボールを投げ終える(言い終える)まで我慢する必要がある。投げ終える前にスイングしてはならない。また、ホームランを打ちたい欲が強過ぎる程、相手のボールをよく見えない。
対話のレベルが上がるにつれて、自分の知らないボールに触れる機会が増えてくる。その時こそ、スイングするのではなくどんなボールなのか観察するのだ。
はじめはうまく打ち返せないかもしれないが、よくボールを観察し、時には相手がどんなボールを投げているのか、投げてる張本人に聞くことも必要となるだろう。
とはいえ、まだまだ対話見習いレベルのわたしのミッションはホームラン打ちたい欲を醸し出さないことに尽きる。