中小企業こそ、「人的資本」の可視化が必要
最近、岸田政権による「新しい資本主義」の一環で、人的資本についての言及が増えてきました。内閣官房が「人的資本開示指針」を策定し、公表していますし、上場企業の開示義務化も予定されています。
内閣官房「人的資本可視化指針」(PDF)https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf
世界の投資家も人的資本状況を中心とした「非財務情報」の分析にも力を入れています。投資家もやはり人的資本が企業価値向上の鍵であると十分に考えているということだと見ることができます。
やはり時代の変化というのが要因として、大きいでしょう。GAFA、メタバース、ビックデータなどの社会の高度化等々、財務諸表には出てこない「無形資産」が生み出す価値の重要性が高まり、決して無視ができなくなってきていると考えることができます。
人的資本についての開示義務のある企業は、「必須項目は何か」というように、試行錯誤を重ねているようです。非財務情報を開示するというのは難しいものですね。「財務情報」は数字で表現するもので、監査基準なども含めて、ノウハウも多くあります。
「人的資本可視化と開示」は、人事戦略構築のきっかけ
人的資本の状況を「開示する」「可視化する」。
ESGを射程に納めた上で、様々な資料を読んでいますが、この施策の目的は何かということが見えてきました。
それは、「開示させるために強制的に可視化させ、合理的な人材戦略を立てさせる」ということだと私は読めました。しかも、ステークスホルダーに十分に説明をできるように。
つまりは、「きっかけにしなさい」ということでしょう。
そして、企業単位から社会全体での生産性向上を目指しているという構図になっていると思います。
正直、開示や可視化のみの近視眼的な視点で捉えると痛い目に遭うと考えています。おそらく、見破られるでしょう。
様々な意見があることと思いますが、私としては非常にいいことだと思います。人的資本に目をむけ、人事戦略を再構築するいいきっかけです。
(本当は国から言われる前に主体的に取り組むのがいいんですが・・・)
既に着手している企業については、その先見性が評価され、報われることでしょう。
中小企業こそ、可視化と戦略の構築をやるべき理由
しかし、これ、主に上場企業が対象となるもので、あまり中小企業の関心が高くありません。あくまで、個人的な体感ですが。
私は中小企業こそ、人的資本可視化をやり、人材戦略、人事戦略構築をやるべきではないかと思っています。
そう、中小企業にとっても、きっかけにするべきなんです。
世界的インフレとなりました。日本も相対的には低いですが、インフレです。給与が上がらなければ、実質賃金は下がるのです。つまり横ばいでも、実質的には賃下げだと同じということです。今後の物価動向は分かりませんが、少なくとも直感的に「インフレとは何か」ということを体感できたのではないでしょうか。
(デフレ時代の申し子である37歳の私がそうです)
さらに労働市場も流動化してきています。特に若手から中堅(20代〜30代)においては転職はあまり珍しいことではなく、やはり自分の存在意義や待遇で職場を選んできています。
(労働市場の流動化については、岸田政権の「新しい資本主義」においても言及されています)
逆にいうと、存在意義や賃金・待遇を疎かにしてしまうと、中核的な戦力世代が容赦なく逃げていくことを意味することだと思います。
中小企業の存立に関わる人的資本マネジメント
採用が難しいということのみならず、企業成長の足枷になるでしょうし、存立すら危うくなる可能性もあるわけです。
全ての中小企業がそうであるとは思いませんが、相対的に中小企業はその点が脆弱でありますし、個人的に危機感を覚えているところです。
人的資本についての可視化や人材・人事戦略の再構築は絶対にやらないといけないことではないでしょうか。早急な対応が必要だと考えています。
できるか、できないのか、するのか、しないのか。
ここが各社の企業競争力にとって、大きな分かれ道になると思います。
人材についてのマインドが変わらない経営者は退場を迫られるケースもあるかもしれません。(結構本気で思っています。)
ですので、まずは、内閣官房の「人的資本可視化指針」を読んでみてください。参考になる点もあると思いますし、専門家でもある私も中身の説明やお手伝いできることがあると思います。
閉塞感を打破する時代が到来している
いい時代になったなぁと思いますよ。
リーマンショック直後に社会人がスタートしましたが、何だか隔世の感があります。今まで、何かおかしかったとの念を持たざるを得ません。
そういう意味でも、閉塞感を打破するいい時代です。
企業も、従業員も、地域社会も、全てがハッピーになる時代の到来を期待してもいいのではないか、そうポジティブに捉えています。そんな時代づくりを個人的にもしていきたいなぁと常々思っているところです。
ここが正念場になっていくのではないでしょうか。