プラットフォームとコンテンツの力学〜動画配信サイトから見えること
今回は、プラットフォームとコンテンツについて、考察していきたいと思います。
私はサブスクリプションサービスの利用がかなり多いです。音楽・動画・書籍などなど。特に動画。Netflix、hulu、Amazonプライムに入っています。色々と検討をするのですが、なかなか辞められません。観たい作品が山ほどあって、山ほどあって。断捨離をしなきゃいけないと思っているこの頃です。
そのような体験から、今回は動画配信サイトを例にしていきたいと思います。動画配信サイトとは、NetflixやHuluなどの「器」と理解してください。コンテンツとは、映画や番組などの「中身」を想定してもらえればと思います。(youtubeなどの投稿サイトは今回は除外します)
これら二つの関係、「器」と「中身」の力関係の変化を概観していきます。
なぜ、動画配信は、サブスク化したのか?
まずは、そもそも論です。以前は動画配信としては、1作品ずつでの売り切りに近いものになっていました。では、なぜ月額定額となっていったのかを考えると、2つの面で理由があると考えています。
まず一点目としては、インターネット環境の進化です。具体的には、スマホ普及と4G普及で、ストーミング再生が容易な環境になったことが大きいと思います。非常に手軽に楽しめるようになりました。この理由に関しては、分かりやすいですね。
二点目は、月額定額(サブスク)が配信サイト運営者にとって財務面でメリットが大きいことも上げられると思います。サブスクは、一定の金額が毎月キャッシュとして入ってきますので、安定的なキャッシュフローが見込まれ、更なる投資余力が生まれていきますね。一昔前のダウンロード課金型では、相対的にキャッシュフローが不安定です。
そして、三点目。それは、顧客の囲い込みです。これは分かりやすいですね。
実はこの3つの理由が、動画配信サービスの「器」化を加速させていると考えています。
今までは、売り切りのダウンロードでは、消費者は特定のコンテンツのある場所を探していました。例えば、その時に乗りたい乗り物があれば、入場料は無料ですから、USJでもディズニーランドでも、どこでもいいということです。つまり、「場」「器」にあるコンテンツの重要性は今ほどは重要視されていなかったのではないかと考えます。
一方で、サブスクのストリーミングでは、様相が異なってきます。例えば、USJで入場料を払って、乗り放題。そのUSJにあるアトラクションを楽しみます。ビジネスとしては、競合であるディズニーランドと差別化をして、より楽しいアトラクションを作らなければなりませんよね。なので、サブスク動画配信サービスも同じ、今まで以上に「場」に何があるのか、「器」に何があるかが重要になります。
なぜ、動画配信サービスが巨額のコンテンツ投資を行うのか?
このように「器」「場所」をよりいいものにし、競合他社に勝つかが焦点となります。遊園地に例えてみましょう。動画配信サービスは不動産会社として考えてみましょう。遊園地の土地を確保し、場の整備し、そして、アトラクションを建てる。問題は、アトラクションが魅力的かどうかです。ですので、かなり各社とも巨額のコンテンツ投資をしています。
動画配信サービスは、①プラットフォーム先行型、②コンテンツ先行型の2種類あると考えています。
Netflixは、①に当たりますね。コンテンツ開発に巨額の投資を行なっている理由は、Netflixにしかない、魅力的なコンテンツを自ら作り、「器」に入れることで差別化をしているからです。しかも、圧倒的な資金とクオリティで。やはり、圧倒的な資金が出せるのはサブスクの安定的なキャッシュ創出の賜だと思います。そして、クオリティも確保できる。huluも、Amazonプライムも同じような理由でコンテンツ投資をしています。
一方、別のアプローチからの動画配信サービスの形もあります。②です。それは、ディズニーですね。ここはまずブランド力の高い圧倒的なコンテンツを持つ会社が、その後から器を作るという①とは逆の順番です。ただ、過去のキラーコンテンツだけではなく、サブスクで安定的なキャッシュ創出ができるので、新しいディズニーブランドコンテンツを作ることができ、一石二鳥の戦略です。
このように、ハリウッド映画を超える規模の投資をしてまで、コンテンツを自主制作していることから示唆されるのは、「コンテンツ」の価値が今まで以上に高まっていることです。
今まではプラットフォーマーが強かったと思いますが、ビジネスモデルの変化にしたがって、このような力学の変化も同時に起こっていると理解できるのではないでしょうか?
日本のコンテンツ産業の未来
コンテンツの価値が上がっているということを示唆しました。
では、日本のコンテンツ産業の未来はどうでしょうか?
結論から言うとかなりチャンスだと思います。クリエーター・アーティストの時代です。方向性を間違えなければですが。
まず、間違っていると思う方向性は、プラットフォーマーを目指すことだと考えています。要は、同じ土俵に乗らないことです。世界では残念ながら、勝てないと思いますし、巨額の投資に恐らく耐えきれないと思いますし、費用対効果が悪い。
チャンスは何かというと、非常に魅力的なコンテンツの蓄積があるということ、そしてノウハウも有していることです。特にアニメとかが強い。コンテンツを磨けば、かなりいい線にいくと思います。資金が集まります。ノウハウを駆使していけば、かなりのクオリティを出せる可能性が高まると思います。
どんどん、動画配信サービスの狙いを的確に把握し、利用し尽くせばいいと思います。コンテンツ側の方がかなり有利なんですから。どんどん、資金を引っ張ってくればいいのです。どんどんとそっちの方に振ればいいと思います。
実はこれ、動画配信サービスだけではありません。コンテンツ価値の増大がテレビやラジオ、雑誌もあらゆる意味でも同じことが起きると考えています。相対的に資本力が劣る「器」の企業は厳しい状況に置かれると思いますので、その際は、「器」をビジネス環境の変化に合わせて、最適化しないと立ち行かないのではないでしょうか。
プラットフォームとコンテンツの力学は確実に変化していると思います。
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