まだ生きている~さざなみのよる~
以前から少し気になってた作品に手を伸ばしてみた。実は小さい頃に好きで今も思い出すドラマの脚本家でもある方だった。それは「セクシーボイスアンドロボ」というドラマで、なんで好きだったかというと簡潔にいうと、日常にありふれてるけど小さな感情が埋まってる感がたまらなく好きだった。
https://www.amazon.co.jp/さざなみのよる-木皿-泉/dp/4309025250
43歳でなくなった女性に纏わる彼女の家族や友人、知人を巻き込んだ物語。正直いうともう少し前から本の存在やあらすじには目を通していたんやけど、どうしても読む気分にはなれなかった。それは、有名な俳優さんがなくなったことで「死」というものに向き合いきれてなかったからである。その方のすごいファンと呼べるほどのものでものないけれど、心に刺さる演技をされる方でSNSなんかもフォローするぐらい。なんというかあまりにも突然過ぎて、どうしても受け入れたくなかった。それからは起こりも得ない不幸に突然襲われるのではないかと不意に病むことが少なくなかった。例えば、自分の親しい人が亡くなるのではないか、自分の好きな人が心を病んでしまわないだろうかと。
それからやっと普通の生活が戻って来て突然の不幸を考えることも少なくなった。だからこの「さざなみのよる」を読んでも大丈夫だと思い、物語の中に入ることを決意した。
物語の中の言葉はどれも繊細でどれもあぁ生きていると率直に感じるものだった。一番心に刺さったのは、亡くなったナスミさんが元同僚に言った言葉。
お金にかえられないものを失ったんなら、お金にかえられないもので返すしかないじゃん。だから、やるんだよ
そう、そうなのだ。どんなに悲しいことがあっても前を向いて進むしかないということ。そして人は死んでいく。それでも誰かの心のなかで生きていくということ。いいときも悪いときもどう捉えるかは自分次第。
読み終えた時、ちょっとは自分の、誰かの人生にちゃんと向き合えた気がする。そう思える一冊だった。
またどうしてもたまらない不幸が襲ってくる日が来ると思う。そんな時はちゃんと四股を踏んで、思いっきり取っ組み合いたいと思った。そして土俵際に追い込んで思いっきり投げてやる。自分だけじゃない心のなかにいる色んな人の力を借りて。