入道雲のたまご
山の頂には
入道雲のたまご
たまごがはねると
太陽が笑って
風が両手で抱き上げた
“まだまだ遠くに
連れてってね
はじめての海を
見てみたいんだ”
草の波がさやさやと
鳥の群れがすいすいと
たまごは宙で背伸びして
今日の光をすいこんだ
青い海の向こうから
吹きつけてくる
潮風は
たまごを大きく
大きく
夕空をまるごと包みこむ
入道雲の背中には
楽しかった旅の記憶と
こらえきれないさびしさが
しずかに
丸まり合っている
きっとぶつかり合う
その時は
山が最後まで見守り
太陽が笑って
風が抱きとめるだろう