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視聴メモ:「花燃ゆ」を一気見した
『虎に翼』ロスの反動か、はたまた松山ケンイチさんのなんと初見・虎に翼の一気見チャレンジのX(旧Twitter)の素晴らしすぎるコメントの波にのっかってしまいたくなったか。←へそは曲がっているけれど、わりとミーハーで乗せられやすい性格なのです。
配信であれこれドラマをつまみ見して、エンジンをあっためておりましたが。本来は海外ドラマのほうが得意なんだけどね。和製ドラマも、タイミングと相性さえかみ合えば結構イケる。最初の1話を見てセリフのわざとらしさやキャラ造形の捻りのなさに「う」と思って、それっきりになるものも多いとはいえ。和製ドラマはセリフが命……
そういう「1話でさようなら」した作品まで、きっちりどこかにメモしておけばいいんだけどね。それだって、あとから見直すと楽しいから。ただ、あまりに数やコメント(自分のウダ話に自分でうんざりしてしまうパターンもよくある)が増えると、メインの情報を上手く管理することもできなくなってしまう。
このへんは、試しにギリギリのところをまとめてみた。
で、ふと気づいたら、やっちまっておりました。
大河ドラマの一気見というやつです。45分×50話ぶん。それも「気づいたら」のノリで、体調がイマイチだけどドラマはそれなりに面白く見られるというコンディションに後押しされて、仕事机の前で仕事椅子に座ってタブレットを横にセッティングして見る。その体勢に疲れるとソファに移動して楽な姿勢。場合によっては寝っ転がって、あるいは布団に移動してそのままアームにタブレットをセットして見続ける。
正味3日で完走してしまった……。おそろしい。
これも緩いとはいえ〆切りに追われているからできたこと(違!)。けど学生時代、大きな試験が迫れば迫るほどドラマや映画をたくさん観てしまい、しかもそれが当たりというか面白く思えるものばかり、という夢(悪夢)の追体験をいたしました。
『花燃ゆ』でございます。朝ドラや大河で呪文のよう召喚される「ワースト視聴率」という冠を誇る作品。視聴率が出ないことを放送中からすでに関係者全員が責められたという伝説も多々。そのへん、今回は直前に虎に翼ですべての制作スタッフや中の人たちが「視聴率うんぬんという寝言につきあう余力まですべてを作品クオリティをあげることに注ぎきる」という気配を漂わせていて、だからこそ、ここまでの素晴らしい虎に翼という作品が完成したんだと。あくまで市井の視聴者の戯れ言ですけれどね。部外者でしかないライターが誰かの(自分じゃなく)視点&都合で無責任に書くライトな噂ばなしや貶しの記事なんて無視すべし、という教訓を得ました。
花燃ゆ、ですが、とても面白く見ました。少なくとも今のこのタイミングでマラソン一気見するなら、私にとっては最適な出会いだったと断言したい。
主演の井上真央さん、とてもよかった(可愛らしいし)けれど、過去のドラマや映画ではあまり印象に残っていなくて。いや、よく言うことですが、振り返ってみるとテレビの役者さんって本人の顔とかオーラとかあまり印象に残らない方が基本的に私はすごいと思うほう。そういう意味では井上真央さん、好みのタイプの役者さん。ただ、幻冬舎だっけ。それとも角川だったか覚えてないけど、たぶん幻冬舎だろうな。あそこの社長さんが好きそうなプロモートだった。
いまサクッとググったらそこに触れたインタ記事が出てきました。
スキンヘッドとかヌードとか。
タレントの、しかも若い女性をプロモートするにはもう古い手法だと私は思う。まあ個人の意見ですけどね。こういうふうに「根性」みたいなものを露骨にみせる売り方を、おじさんたちがやらせているふうな構造自体があんまり。いまどきのセルフパロディみたいな感じで、出版というよりはテレビがとりあげてみせるなら(不適切にも程がある、とかはもろに)面白い、かもしれない、程度。
だから、スキンヘッド写真のポスターと井上真央という名前だけは刷り込まれていたけど、ドラマで顔を見た記憶はない。朝ドラもね。なぜかお日さまは記憶から抜けている。見た覚えがない。忙しい時期だったのかもしれない。
そういう、かすかに微妙なイメージのある女優さん。でも、花燃ゆの50回自体は、面白く一気見しました。途中で、声や抑揚や台詞回しが演技として傷もなく迫力満点の完成度なのに、声そのものに芯がないような気がして、でもそういうのって、見ているこっちの体調だったり、タイミングが違えば刺さってきたりもしますから。
共演は、50回ずっと出ずっぱりだった(と思う)大沢たかお、途中で消えるけど回想シーンでしょっちゅう出てくる伊勢谷友介、途中から登場&途中から消えた東出昌大。
吉田家……じゃない、吉田松陰は杉家の次男でいったん養子に出たが萩の杉家に戻ってきて、長じてそこで松下村塾を始める。
しょうかそん-じゅく 【松下村塾】
江戸末期,長州萩にあった私塾。吉田松陰が叔父より引き継ぎ,久坂玄瑞・高杉晋作・伊藤博文など尊王攘夷(ジヨウイ)運動の志士を出した。
杉家の父役が長塚京三で、彼が出ていなければ途中で見るのを脱落していてもおかしくないかな、という程の見事な存在感。母役が檀ふみ、これはもう、画面のなかだとどう置いても浮くという芸風は相変わらず。阿川佐和子がエッセイで希代の大根……いや、そういう言葉は使っていなかったかもしれないけれど、仲良しという相手がキッパリと言い切っても本気では怒らない程度には、ご本人も自分が「浮いてしまう女優」であるという自覚はきっとあるのではないかと。おっとりとしている役柄をあてたら天下一品。
NHKオンデマンドで『花燃ゆ』を見始めたあたりで、いちおう軽く評判やクチコミのチェックをしたところ、このドラマ、しばらく配信停止となっていて、つい最近になって復活した、らしい。NHKでそういうのは、最近だと香川照之の出演作(大河)がのきなみ……ということがあってSNSでもいろんな意見が飛びかっていたっけ。
と思ったら目についた記事。あはは。これは日記もどきのカジュアルな書き付けです。今日という日にご縁があったということでリンクいれておきます。
つまり、ドラマが配信停止になる理由のおもなものとして、関係者のスキャンダルをきっかけとした自粛とか圧力とか。そういう「忖度」が大きいのではないかという話。ああ、なるほど。と共演者の名前を見ていろいろ思ったことです。ドラマに罪はない、しかも顔が出ている役者の責任をそういうかたち(配信停止)で取らせるのはちょっと違うんじゃないかな、と思ったこともあるので、配信が復活したというのはひとことで嬉しい。ただ、香川照之に関しては、お笑い系のいじめやセクハラ醜聞と同じかそれ以上のレベルで、業界(テレビ)内での影響とか、推していたファンほど傷ついたのではないかという印象もあったっけ。
柚木麻子さんのエッセイは本当に染みた。
ここにリンクを張ろうかと思ったけど、花燃ゆと直接の関係はないので、まだお読みになっていないかたのためにタイトルだけ。
>「彼」自身の言葉で、語るべきではないか――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子
つまり、花燃ゆも、俳優の醜聞。あったっけな。そういうのもググれば瞬間的にわかってしまうの、凄い時代と言うべきか。
そういう感慨までコミで、こうして配信で見られるようになって、おかげで記憶に残る濃ゆい3日間を過ごすことができました。
脚本家が4人も投入されたせいで、中身がとっちらかった残念作、と意見をネットで見かけて、それは確かにあった。けど、それゆえに、かえって「脚本家それぞれが得意とするジャンル」を少しずつ主張してる感じがあちこちにニョキッと顔を出し、楽しく思えた。私はね。
いずれにせよ第1話。人物紹介をぎゅっと凝縮した感じ。とてもよかった。主人公(文)と大沢たかお(小田村伊之助)の出会いのシーンも鮮烈で、杉家の人たちの日常も見応えのある演出とカメラ。
前半、松下村塾での吉田松蔭の言葉や受けとめられ方が、学びという意味で印象に残る。松蔭の亡き後も、触れあった人たちのなかに残る「それぞれの学びと教え」がずっと共振し続ける感じがね。切ない。
維新まわりの描き方が薄い、というのはわからぬでもない。けど、あれくらいの描き方が私にはちょうどよかったな。薩長がとか会津がとか、伊藤博文がとか。かつて仕事で四国や九州に足を伸ばすと、とりわけ私はフランス好きの関係者に打ち上げに呼んでいただくことが多かったので、戦前の日本がフランスではなくドイツ寄りになってしまったのはあそこらへんの人たちの暗躍の掛け違いが大きくて、フランスびいきの誰それが維新から昭和にかけてもっと実権をにぎっていれば、という話は宴会のときの定番話だったんだよね。
花燃ゆ。長州藩の毛利の殿様を北大路欣也が演じていて、その正室が松坂慶子。世継ぎがなかなか生まれない姫様役が田中麗奈というのもなかなか。
大沢たかおは『JIN』のイメージが強いと思いながら見ていたら、最後の方は歳を重ねて恰幅がよくなり、キングダムの王騎将軍に近くなった。
夫を失って「なぜ、と」知りたい、藩主にお目通りできる身分になって直接ききたい、とヒロインが奥女中に転身。これは確かに「とっちらかり」と言われても仕方ないかもしれないが、韓流ドラマに比べればぜんぜんありではないかと。陰謀の黒幕も含めて、徹底的な悪者がほぼいないという点はいまどきの大河ドラマらしくて佳いなというのは私感。
その後、舞台が群馬に移ってからのことは目新しい話が多くて、それもまたよし。富岡製糸工場についての描き方も、社会学・フェミニズム系の研究者が最近だした女工哀史について調べた本をさっと(熟読するには中身が濃い&分厚くて)読んだ記憶がまだ残っているので、最初期の国営だった頃はあんなふうに明るい職場のイメージだったのかと。興味深かった。
逆に、このドラマではあまり描かれなかった横浜港まわりのことに興味が湧いた。活字がきっしりの本を読むまえに、大和和紀『ヨコハマ物語』を再読したい。と書いて気づく。いまやってる『光の君へ』もそうだけど、『花燃ゆ』は大和和紀や木原敏江のコミックスに似た空気を感じさせるのだ。
50話を通して見終わって、さすがにみっちりと感想を書く体力は残っていない。けど、見ているあいだ「きっかけはおむすびだったかも」と、朝ドラつながりもね。花燃ゆは、塾生たちのまかないを作る場面が多く、何かあるとヒロインがおむすびをにぎっているという話もあったようだから。思うが、それって悪口じゃない。パターンを貶しているつもりだろうけど、虎に翼の梅子さんのおにぎりだって、パターンとしてはつながっている。数珠つなぎ。「だってそこが楽しいんじゃん」
見終わってから、1日おいたところでリアタイでは第1話で脱落した『うちの弁護士は手がかかる』を3話までみた。2023年秋の月9ドラマ。一年前は抹茶フラペチーノを注文する場面でなんかこう、トゥーマッチな感じに負けて見るのをやめた。けど「不適切にも程がある」と「虎に翼」と「花燃ゆ」と、他にもこの1年でたくさんドラマや映画の洗礼を浴びたいま、なぜだか、めっちゃおもしろく感じてしまったのである。
そしてアニメ『チ。』をNetflixで見始める。これもね。「花燃ゆ」での寺子屋や私塾での場面を見た後だと、冒頭が刺さるんだ。原作コミックスも大好き、だけど内容の濃さに(惣領冬実『チェーザレ』もそう)読むペースが限りなくスロウダウンしていることを今更ながら思い出す。そうだよ。あれもこれも、またアタマから読み返して、続きを読もう。
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