虎に翼 最終回 最高です!
終わったー。べとべとせず淡々と、それでいてじんわりくる、いい終わり方だった。佳いものこそ、さらっとした終わりになるのがふさわしい。みごとな様式感。
今週はずっと、今までの女に因んだことわざに「?」をつける週タイトルではなく、そのものズバリの「最終週 虎に翼」となっていて、それを毎日見るたびに、ああ、ふと気づいた時にはもう、無我夢中になって追いかけてしまったこのドラマも終わりなんだなあって。
第130回では、最終週 最終回と終わりを強調する表示が出てきて、唐突に寅子が星家のダイニングで手をグルグルまわして屈伸し、その頭上に字幕がくっついて上下する。小橋の発芽玄米スタイルの頭にタイトル字幕が斜めに小さくくっついてピョコピョコしたのと同じ遊び。
だいぶ老けた様子の優未が出てきて、横から話しかけている寅子の声が聞こえていないふう。横浜家裁所長になった折りに新調したテイラードを着た寅子の写真が家族写真の手前に置かれている。平成11年、寅子が亡くなってから15年……とナレーションが伝える。つまり遺影写真。
なるほど、そういう最終回なのか。
今までも家族の写真を眺める場面では、そこ(写真)から亡くなった人が見守っている視線がある的な演出ではあった。それを最後にこう繁げてきた。カーネーションの夏木マリ編でも似た場面があった。父・直言なんて、亡くなったあとすぐ骨壺側から起床するはるさんを撮っていた。あれも思い返すとすごいな。
そして優未が自宅でおそらく独り暮らしで、お茶と着付けの教室を開いていること、寄生中と雀荘の雑誌編集をしていること、登戸の花江の世話を見ていること、曾孫ふたりがおやつのお菓子の大きさで喧嘩するのを「いまや猪爪家の重鎮」の花江が泣きまねで上手におさめてみせる場面、笹竹があんこの味を守り続けていることが、順番に伝えられる。
御茶ノ水の橋を歩いている優未が「仕事をクビになった」と携帯電話で話している女性の声を耳にする。それがなんと美雪。さすがに老けメイクをしても二十代程度にしか見えないので、よもやの三代目?と思わされたが、そこは見えない存在の寅子が「美雪さん!」と声を発して状況をクリアにする。佐田優未からの紹介と弁護士の連絡先(こっちも誰だか気になるけれどね)をメモして手渡すと「佐田さん……?」と美雪が反応。いずれにせよ、あのあと美雪はちゃんと更生した、ということだね。よかった。
自宅では老人ホームから会いに来た航一が待っていて、のどかと朋一もちらっと登場。「トラちゃんのあの、何かに夢中になっている顔」と優三さんが言ったのと、どうやら同じ顔を航一さんの中の寅子がしている。そして航一さんの回想は、あの日(129回)の笹竹での寅子と桂場のやりとりへと戻っていく。
「私は今でもご婦人が法律を学ぶことも職にすることも反対だ。法を知れば知るほど、ご婦人たちはこの社会が不平等でいびつでおかしいことに傷つき苦しむ。そんな社会に異を唱えて何か動いたとしても社会は動かないし変わらん」
「でも、今変わらなくても、その声はいつか何かを変えるかもしれない。未来の人たちのために自ら雨だれを選ぶことは苦ではありません」
「それは君が佐田寅子だからだ。君のように血が流れていようともその地獄に喜ぶ物好きはほんの僅かだ」
ここでよねさんが「いや、ほんの僅かだろうが、確かにここに居る」と名乗りの掩護射撃をする。仲間たち一人ずつの顔がアップになる。ここで桂場が(も?)いい笑顔になるんだよね。
「失敬、撤回する。君のようなご婦人が特別だった時代はもう終わったんだな」「はて? いつだって私のような女はごまんといますよ。ただ時代がそれを許さず特別にしただけです」
みんなと笑う寅子の顔は、確かに優三さんが言う「あの笑顔」なのだ。というか、伊藤沙莉さんの笑顔があまりに素晴らしくて見惚れる。かつて竹もとで、はるさんが桂場に「喧嘩を売った」ときと同じ配置で、寅子の後ろからイマジナリーはるさんが登場して声をかける。
「寅子。どう? 地獄の道は?」
そして登場した人たちそれぞれの走馬灯のエンドロール。
法服姿の寅子の、最終シーンは大法廷のセットだったのか。花びらが舞うのは裁判長との思い出オマージュ。
6ヶ月間、楽しかったです。ありがとう。