虎に翼 バトンタッチ後のささやかな雑感
虎に翼が終わってしまって、ロス……というのとも違う。最初の週末は、これから私は何をがっつりとした「拠り所」として走っていけばいいんだというような。台風がきて低気圧とか季節の変わり目とかで、心身の調子が谷底のように落ちていたせいもあるかもしれない。
ただ、蓋を開けてみれば意外とね。好きになれるかどうかは置いても、ドラマや報道についての日録を書くというテーマさえ手放さなければ、ここ数か月に味わった「自分が書いたテキストは未来の自分にあてた手紙と同じくらいの自己啓発も兼ねたパワー・エンタメである」という真理をお守り代わりに持ってるのと同じなんだよな。
こうしてnoteを読んでくださっているあなたにも心底より感謝。独りで穴に籠もった状態で「自分への手紙」を書くというのも、それはそれで意味があるかもしれないけど、やはり毎日こうして読んでもらえるというのは本当に嬉しい。
ということで、新しい朝ドラがスタートしました。良くも悪くも、安定の「予想どおり」の第1回。よっぽど仕事が立て込んでとかでないかぎり、録画して観るというペースは続けていくことになりそう。ただ、この『おむすび』の制作陣の姿勢は、せっかくの『虎に翼』という稀有のヒット作を「踏み越えていくべき踏み台」としか見ていない気配があってですね。7月の時点で吉田恵里香さんの脚本が遅れていて、そのせいで撮影もキツキツ……という情報がどこからともなくリークされ、だから次作のヒロインへ今作ヒロインがバトンを渡す恒例セレモニーもいつもより遅れているとか。いろいろ。その手の記事が何本か。虎に翼を下げることで次回作をあげようという。昔ながらのゲスい芸能記事手法。読んで悲しくなるというか、読んでもスルーするしかないよなと思ったよ。反応したら炎上商法に乗せられてもっと口惜しくなるだけ。
夢中になって毎日のオンエアを観ているこっちは、ブギウギとかでそうなったように、アシストの脚本家が追加投入(という言い方も嫌いだけど)されるのではないか、いやそうすべきだとか、そういうリーク情報に踊らされて脚本家や制作チームに余計なプレッシャーをかけてくれるなよ、と。ハラハラもしましたがね。←すでに踊らされているw
そんな動きに威圧されることもなく、脚本家ひとり体制のまま、揺るぎない姿勢で素晴らしいクオリティを維持して最後までやりきった。虎に翼はそういう意味でも凄かったなあ。
で、おむすび初回オンエア前からすでに「観てもいないのにおむすびを下げる記事が連発」みたいなことをドラマに強いライターさんまでもが皮肉っぽく書いていらして、まあそういうのもコミでの番宣なんだろうけどさ。
けなすのも下げるのもイヤだけど、かといって「終わったから」といって前作をただの踏み台にされるのもイヤだよなあ。とモヤっておりましたら、大好きなコミック『花四段といっしょ』の作者さんがスレッドにこんなことを書き綴っていらした。ひゃっほー。
>虎に翼はなかなか面白かったし、次の朝ドラもちょっと見てみるか! と、第一話を見てみて、あまりの出来事にあぜんとして、15分でドラマが終わった後も放心状態で椅子から立てなかった この、土壌で、虎に翼が急に発生してきたの!? 「なかなか」とか言ってないで、もっともっと褒めてあげなければいけなかった……
よくできてるとは聞いてたが、ここまでの差があったなんて……
そうなんです。ホントに、ホントにそうなんです。
カメラワークも美術も小道具も消えものも素晴らしく、何回観ても新しい発見がある。脚本や物語構成も凄いけど、それを伊藤沙莉さんと彼女の熱量に触れた「中の人たち」全員がグッと当たり前のように、畳みかけてくる抑揚とリズム感で、まるで一発勝負の一筆書きのように本人の声として聞かせてくる。
そして、番組が終盤になるまでずっと、よけいな番宣にリソースを割くことはせず、すべてをドラマの質を上げていくために注ぎ込んだ。制作陣が中の人や脚本や監修リサーチャーなどをとことん大事にして、視聴率や炎上商法のネタにして消費することをいっさいせず、それこそ「激流の中の巌」となってくれたのではないか。
そんなふうに感じています。
あっぱれ。
以下はおまけ。
桂場等一郎の中の人でいらした松山ケンイチさんが、なんと!
まさかのご褒美タイムです。 これから虎に翼を最初から順番に見始めるという人がいたら、そしてリアタイで感想を見させてもらえるとしたら、いやいやそんなの今更だよな、と思っていたら。
なんと松山ケンイチさんが中の人だったから(ゆえに?)見ていなかったとアタマから鑑賞スタート……
3日目の時点で第24話まで視聴が進んでいらっしゃるようです。
いやー、1話につき1ツイートのコメントをポスト。さすがの中の人というか、演じる人ならではの視点も美味しすぎて、思わず、リアタイしていたときの記憶が鮮やかによみがえります。ありがたく。