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デッドエンドにいる私やあなたへ『デッドエンドの思い出』(よしもとばなな)
なにかでこの本の一部を目にして、「あ、これ読みたい」と思って手に取ってみました。
今回はそんな「デッドエンドの思い出」(よしもとばなな)の感想回です。
「おかあさーん!」について
人も本も、最適なタイミングで出会う。
ピンときた文章がどれだったかは思い出せないけれど、そう感じただけあって今の自分に沁みる物語でした。
休職して罪悪感を感じている人
周りみんなが敵に思える人
消えてなくなってしまいたいけどこの世にまだ大切なものがある人
ピンこないほうが良いのだけれど、もし、そんな状況の人がいたら読んでみてほしいです。
「デッドエンドの思い出」について
きっと、人生に必要だったこと
休職・転職ってまるで失恋みたいだな、と思いました。
あんなに好きだったのに、いいと思っていたのに。
もうここにはいられない、関係を続けていけない。
少し休んで、新しい場所(人)に行きたい。
別れと出会い、という点がそう感じさせるのかもしれません。
きっと、この世界はなるべくしてなっていて、最終的には一番良い形におさまるのだと信じています(じゃないと救いがないじゃない)。
心の底では気付いていること
作者が「デッドエンドの思い出という小説が、これまで書いた自分の作品の中で、いちばん好きです。」とあとがきに書き残したように、私にとっても好きな作品となりました。
「ほんとは心のどこかでわかってた。でも見ないふりをしていた。知りたくなかったし、このままの状態でいたらきっといままで通り楽しくやっていけるよね?でも何かが胸に引っかかるな・・・」
自分の心の底で思っていること、本心を無視し続けていたら、最悪な形でそれと嫌でも無理やり向き合わされること、ありませんか?
私の経験上、「もうきっとお互い好きじゃないんだろうな。でも惰性でお付き合いをしているんだろうな」という恋愛や「もうここで働くのは精神的にも体力的にもしんどい・・・でもまだやめられないよ(金銭的に)・・・」という状況に陥ったとき、相手からお別れの連絡がきたり休職という最終手段で終わりを迎えました。
今振り返ると、相手や会社のことばかりを考えるあまり、いちばん大切にしなきゃいけなかったはずの自分をないがしろにして扱ってしまっていたんだなと思います。
相手に合わせること、空気を読むことが必要な時もあるけれど、自分の気持ちを押し殺すことなんてしなくていいのに。
心の声を無視することに慣れてしまったら、もう一人の自分が「もっと私の声を聞いて!!無視しないで!!」と悲痛な叫びをあげながら、外的要因でムリヤリ気付かせてくれるように世界は成り立っているなぁと感じています。そうなる前に路線変更できるようになりたいね。
時間の経過とともに
2003年7月30日発行
この本の中には、今よりかなり直接的な表現がでてきます(18禁が生々しい)。
デビューから数年の作品
“現実にあるよね、こういうこと。自分だけが辛い思いをしているように感じてしまうけれど、実はどんな人にだって大変なことは起きていて、その時期が過ぎ去ったら起きるべくして起きたんだなと思えるようになるよね、もっと人に優しくなれるよね。”
そんなことをダイレクトに表現していたんだなぁと、著者の作品をエッセイも含めてほとんど読んだことのある今はそう感じます。
ここ数年の作品
“おとぎ話のようで、この広い世界のどこかにあるような話。読んだあとには心がフワッと軽くなっている”ような書き方になってきた印象があります。
文章をなぞっていると、著者の伝えたいことがふんわり、テレパシーのように入ってくる感覚です。(ちょっとスピリチュアルっぽいので、苦手な方が読んでくださっていたらごめんなさい)。
これまでにたっくさんの作品を残してくれているので、そのときどきの心境にあった本を選ぶことができる大好きな作家さんです。
楽しい気分や推理小説のようなワクワク感はないけれど、人生や毎日に疲れてしまったときに読むと癒される作品が多くあります。
本の力、文章の力を感じられるよしもとばななさん。すこしでも近付いていけるといいなぁ。
デッドエンド中にオススメの作品(よしもとばなな著)
キッチン(デビュー作)
王国シリーズ(アナザーワールドが特に好き)
イヤシノウタ(そのまんま・・・)