【今日読んだ本】ザリガニの鳴くところ(ディーリア・オーエンズ著)
読書記録として。
ストーリー
ノースカロライナ州の湿地で青年の遺体が見つかる。村の人々は「湿地の少女」カイアに疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられ、人々に蔑まれながらたった一人湿地で生き抜いてきたカイアは果たして犯人なのか。
(Amazonのサイト内本の概要より)
感想
以前読んだ本なのですが。去年読んだ中で私の中で一番印象に残っていたのでご紹介。
その前に作家の経歴なのですが。
小説としての物語も大変面白いのですが、何より湿地の描写がリアルで、湿地ってこんな感じなんだと勉強になりまして(笑)
経歴を見て大変納得しました。
むしろ、動物学者さんというジャンルで活動されていたのに、こんなにもストーリーが面白いなんてとそちらに驚いたくらいです。
2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位受賞!
↑早川書房さんのサイトに飛びます。
結構前に本屋大賞(翻訳小説部門)を取っていたのですが、私は本はあまり買わず図書館で借りる派なので、人気の本は、ほとぼりが冷めた頃に読みます(笑)
ずっと待って、やっと図書館の予約の順番が回って来て、さっそく借りて読みました。
札幌市は10冊まで予約できますが、そのほとんどが、あと何百人待ちと出ています。
今見たら、一番予約数多かったのが、こちらでした↓
今日の辞典で485人待ち。本屋大賞に決まった時に予約したのですが、まだまだ時間がかかりそう。早く読みたいけど、もうちょい待とう。
自宅に戻り、夕食後にまた読み始めて、読み切ってしまいました。
休みの日に予約本が届いている図書館まで借りに行き、帰って来てからおもしろすぎて一気読みしました。
その日全ての用事をふっとばし、家事もそこそこに読みふけり、気付くと夜中になっておりました。
表現が美しかったので、速読はせず、一文字一文字きちんと読んだため時間はかかりましたが、大満足しました。
ネタバレはしないよう気を付けて感想を書きますが。
簡単なストーリーを話すと、1930年から、1960年代位までの設定の物語です。アメリカが舞台で、主人公の女の子は日本で言うと釧路湿原のようなイメージでしょうか。
そんな場所に住む、貧困層です。
開拓されていったアメリカにおいて、住むに適しない湿地帯は、訳ありの人や貧困層が勝手に住み始めた場所であり、近くに住む人たちから差別を受けていました。
そこで生まれた少女の家庭では、ろくでもない父親の暴力によって、ある程度の年齢になると、兄弟たちは1人、また1人と出て行き、母親も出て行き、最後は、ろくでもない父親と、6歳の少女がそこに取り残されるのです。
1人で生きていくために、めったに帰ってこない父親と鉢合わせしないように、父親が家にいるときは、いつも森に隠れてやり過ごし、父親が出ていてしまうと、その辺にあるもので、何とか食いつなぎます。
とうとう父親が帰ってこなくなると、わずかなお金を渡されていたものも尽きてしまいます。
灯油など、どうしてもお金が必要になった時に、かつていちど父親に連れて行ってもらったことのある、同じく差別をされていた黒人が経営している何でも屋のようなところに行きます。
そこで、沼で獲ったたくさんの貝を買ってくださいとお願いするのです。
事情を察した店主は、代わりに洋服をあげたり、お金をあげたりと夫婦で少女の面倒を見続けます。
街の人たちのひどい差別と、本当にわずかだけれども、こっそりと善意を示してくれる一握りの施しの中で、少女は完璧な孤独の中、何とか生きていくのです。
その孤独につけこんで街の有力者の息子がろくでもないことをしてきて、
と話は展開していきます。
悲しくて、読みながら何度も胸が張り裂けそうになるのに、その少女の清らかさと賢さと、生きる強さに引っ張られて、目を離すことができないなと思いました。
主人公は人との関わりはほとんどないけれど(話し相手は、貝を売りに行っている黒人の夫婦と、たまたま知り合った文字を教えてくれた漁師の息子の少年しかいない)
沼に来る水鳥や鴎、動物たち、幻想の中の幼い兄、そして沼。
それらが力をくれるから、完全な孤独じゃない。
鴎や自然が真の意味で友達なのです。
膨大な時間を文字を覚えて本を読み、一つ一つ世界を知っていく。
貧しさとか孤独とかは、人生の豊かさとは別なのだと気づかさせれる。
幸せってなんだろうって、強く思いました。
キャッチコピーに、「この少女の人生を生きてください」みたいなことが書いてあったのですが。
読み終わった後でしばらく、
あれは架空の物語なんだ。彼女の人生は、私の人生ではないし、作った話なんだ。と何度もそう自分に言い聞かせるのですが、どうしても頭から切り離すことができない位、彼女の人生がめちゃくちゃ刺さっていました。
なるほど、これは本屋大賞になるわと思いました。