美しく、かつ、わかりやすい表現
「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追ってきた」
有名な川端康成の『伊豆の踊子』の書き出し。
こんなの見せられたら、自分の表現力のなさよ!となってしまう。
シンプルで、だけど美しくて。
私が目指すのは、気をてらわない、美しく、かつ、わかりやすい表現。
だけど唯一無二で、読んだ人がかゆいところに手が届いた気持ちになれるもの。
あの雨の日の一気に周りを白く覆っていく霧を、わかりやすい言葉で、こんなに躍動感を持って、だけどどこか情緒的に表現して、素晴らしい(いや、相手はノーベル賞作家だぞ)
私があの霧について表現するとしたら、と考えてみる。
下からどんどん上がってくる霧が自分を追い越して,あっという間に真っ白い世界に包んでしまった情景を思い浮かべた途端、その霧の奥で、金色に光るものが見えてきた。
私は杉林の中を進み始める。ポキポキと落ちた枝が鳴る音がして、どこかでカサカサって音がする。
こわいけど、信号みたいに点滅するその金色の正体が知りたいのだ。
自分の周りしか視界が開けていないので、すぐそばに行くまで正体がわからなかった。それは、地面にあった。
思わずしゃがみ込んで、どういうこと?となる。
それは、金色に点滅する、黄色いキノコだった。
ええええ。
いや、違う。謎の物語を描いてしまいそうになる。
美しい表現には程遠いな😅