中学校数学での目標の一考察 ~学習指導要領の目標の変遷に注目して~
1 はじめに
今回、このような記事を書こうと思ったきっかけは、現在教職に就いていて、教科の目標は指導要領に書いてあるから、もちろん知っている。
でも、もっと深く理解したい、数学教育の不易な部分は何か、それが数学教育が大切にしてきたことではないか、と思ったからである。
深く理解する方法として、過去の学習指導要領を調べてみたという次第だ。
いつも書いている記事と違って、文字ばかりの記事になっていますが、ご容赦願います。
2 学習指導要領の目標の変遷
国立教育施策研究所に、これまでの学習指導要領のデータがあったため、それを参考にした。
2年ずつ学習指導要領の目標を比べてみる。前回の学習指導要領から変更された箇所は赤文字、加筆された文章は赤文字+下線で示す。
・昭和33年と昭和47年を比べる
注目するのは、昭和47年施行の学習指導要領では、能力だけではなく、態度も目標であるとしているところではないだろうか。
現在では、見える学力(テストの点数など)と見えない学力(非認知能力)はよく知られている。
しかし、この時点から、学習指導要領では、学びに向かう力も必要だと言っている
・昭和47年と昭和56年を比べる
昭和56年は昭和47年に比べると、かなり簡略化された。おそらく簡略化された文章中に、昭和47年で項目1~4で示した内容を内包した形にしたのだと思われる。
よって、目標だけ見ても、違いは見られなかった。
・昭和56年と平成4年を比べる
ここでは、かなり加筆された。
数学的な表現や処理の仕方の習得の目的は、「事象を数理的に考察する」ためということを強調している。
また現在の学習指導要領にもつながる、とても大切な概念「数学的な見方や考え方」が登場した。また、その「よさ」を感じさせることで、態度を身に付けさせるということが書かれた。
・平成4年と平成14年を比べる
「数学的活動の楽しさ」ということばが加えられた。このことばも、現在の学習指導要領に入っている。
・平成14年と平成20年を比べる
1点注意を伝えたい。平成14年と平成20年では、6年しか間がない。しかし、「施行」と「告示」という違いがあるため、6年しか空いていないという理由だ。
さて、平成20年の指導要領では、「数学的活動」という言葉が先頭に来ている。つまり理解したり、技能を習得したりするときは、数学的活動なしではありえないということだ。
また、「数学的な見方や考え方」ということばは消えた。
・平成20年と平成29年を比べる
平成29年の改訂では、かなりの加筆が加わった。この理由は、この改訂の経緯にある。
私が特に注目したのは、「数学的な見方・考え方を働かせ」の部分だ。
この言葉が先頭に来ているということは、数学の授業の中では、これを意識的に示したり、子どもたちに考えさせたりしなければならないことを言いたかったのではないかと思う。
3 身に付けさせたいのは「態度」
数学の知識や技能というのは、昭和33年の指導要領から言われ続けている。
問題なのは、数学を活用しようとしたり、問題解決の過程を振り返って改善したりする「態度」が身に付けられていないということではないかと感じる。
「態度」を身に付けさせるために、改訂を経るたびに、「こうやってみましょう」「こんな方法があるよ」と、指導要領に書かれているように感じた。
態度を身に付けさせるには、数学的活動が楽しかったり、数学のよさを実感したりして、「見方・考え方」を身に付けさせる必要があるのではないかと思う。
4 おわりに
このように、過去の指導要領を見たのは初めてだった。変遷を見ていくと、時代の流れ技術の発展によって、その時代の教育者たちが10年後の未来を想定して、子どもたちにこんな力を身に付けさせよう、と色々考えた足跡が見られて、とても楽しかった。
これからの授業では、数学を活用したりする「態度」を身に付けさせるために、楽しい活動やよさを実感させていきたい。
・ 引用文献
中学校学習指導要領及び解説