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「返信不要」に救われた日。#1
2025.2.4念願の注目記事に選んでいただきました。
まさか創作で選んでいただけるとは思わず…ありがとうございます!
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ああ、返信がたまっている。
既読スルーはおろか未読スルーも罪に感じる。
早く返さなきゃ。
いや、一体わたしは、誰の目を気にしているんだろう。何度も反芻しながら、結局後ろめたさにかられ、返信のメッセージを考え出す。
真由はため息をついた。
もうわたしはそれどころじゃないのに。
布団にくるまり、何度目かわからないため息を
哀れなつぶれた枕に吸い込ませて、
動かない体を心底恨めしく思った。
動けないんじゃなく、動かないだけだろ。
気の持ちようだよ、相変わらず自分に
甘いな。
そうわたしを冷たくあしらった彼とは
結婚まで考えていたのにお別れした。
絶望感にくるまれ、声がしばらく出ないくらい
その言葉につきまとわれた。
甘えてるだけだろ。何度もよみがえった。
環境にとことん適応できないわたしは、
甘えているだけなんだろうか。
気にしい、考えすぎ、そんな言葉をかけてくれる人もいた。優しすぎるんだよ、って親友は言った。でも、一度適応できないと、
とことん自信を掬い取られてしまうのが社会というものだ。
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ブラック企業を引き寄せるのか、
入社してすぐの会社では深夜残業が当たり前すぎてすぐにつぶれた。
適応障害で3か月のドクターストップ。
復帰は人気業界で難しかった。マスコミは
どうしても即対応を求められ、
わたしはスピードにももうついていける自信が
なかった。
退職を決めたのは、復帰後すぐだった。
ベッドから起き上がれない月曜日が
毎日やってきたから。
⛄️⛄️⛄️
2社目で出会ったのは、年下の上司。
しかもまだうら若い男の子だ。
佐久間くんは快活な青年だった。
身長も高く、黒縁のメガネがよく似合う。
リーダーとして不器用ながら指示してくれる彼を頼りにさせてもらっている。
ただ、2歳年上のわたしに
年上の女性に言いにくいこともあるだろうと
こちらも気をつかったのだけど。
彼はあまり気にしてないようだ。
そそっかしく、愛され上手な彼は、
わたしへのメールにもとても丁寧だった。
飲み会のやり取りで一度LINEのやりとりを
したが、
スタンプも多く可愛らしかった。
最後は返信いりませんよ、
明日もよろしくお願いします!でしめられていた。
もしかして、わたしがLINEのやりとりすら
未だに終わらせ方がわからないのを知っているんだろうか。
彼は気を遣わせないのがとても上手なのだ。
仕事では、
返信不要です。返信には及びません。お気遣い不要です。
文末はそう締めくくられていることがある。
それらは返信しなきゃ、すぐ返さなきゃという気持ちを軽くしてくれる。
わたしはビジネスのやりとりでも、
自分で終わらせたらこのひとはどう思うかっていつも気にしている。
だから1日が終わるとぐったりしているのだ。
後輩たちのほうが要領よく仕事をすすめてい
る。
こんな性格がいやになる。
真由さんは真面目ですから、
でもそんなに何もかもにすぐに反応しなくてもいいんですよ。
すぐ反応しないのも、ひとつのコツですよ。
得意げな彼の顔は弟に似ていて、
つい親近感を抱いてしまう。
普通ならムカついちゃうとこなんだろうか。
年下の上司にそんなふうに言われて。
いや、ここは職場なんだから年齢じゃないぞといいきかす。上司の言葉はありがたく受けとめよう。
お昼に行く彼をそっと目で追いながら、
自分のお弁当箱を開いた。
焼き鮭の香ばしさがふわりと広がる。
3話完結予定で書き始めた上司との物語。
さてどうなるか書いてるわたしもまったく想像がつきません。構成しろよ!笑
でも連載小説憧れていたんだよなあ。未完の作品が完成するかもしれないパラドックス。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。さてさて、どうなる?
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