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【バレンタインショート】俺は顔がこわい。#2



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🔶🔶🔶


さあ、本番だ。


薫は俺より3つ下の社会人。
髪は明るめのブラウンのふわふわのボブで、
色白で目が大きい。
まさに、女の子、という感じだ。
料理教室での会話を総結集しても
まだ誰にあげるかはわからない。

教室終わりで、テーブルのグループごとに
片付けていた。


🍫🍫🍫


くまのさん、チョコの湯煎うまくいきました?


周囲がどれだけ俺の顔のこわさに
恐れおののいても、薫はまったく気にしていないようだ。
絶妙な距離感でスキンヘッドの俺に話しかけてくる。間近で見るとおでこにまでチョコが
ついていた。か、かわいい。


教室が終わると、俺は自分のフォンダンショコラの完璧な出来栄えに惚れ惚れした。
バレンタインをすっかり忘れていたけど、
これは家に帰ってひとりで楽しむのも
悪くない。とろけそうだ。



くまのさーん、教室って続けます?
わたし不器用だからなあ、でもお菓子食べたいしなあ…


作りたいのではなく食べたいのか。

ちなみに彼女のフォンダンショコラは明らかに膨らんでいなかった。固いチョコの塊みたいだったが、彼女は意に介さず大事そうに箱にしまった。


「だ、だれかにあげる、んですか…?」


どきまぎしながら聞くと、うまくなったらあげます!と、バレンタイン前日の教室で、とびきりの笑顔で言われた。


くまのさんは、何でお菓子教室通ってるんですか?


「あ、あの俺、こんな怖い顔だけど、
お菓子作り大好きで、かわいいもの好きで…ひきますよね?…」


何を言ってるんだ、俺は。
彼女は引くどころか、同じく何言ってるんだこの人は、という顔をして首を傾けた。


好きなことは好きって言うんですよ!
誰がなんていおうと。

人は人のことそんなに気にしてないです!



何て、美しい目で言うんだ。
俺は耳まで真っ赤になり、気持ちを落ち着けようとうつむいてニット帽をかぶった。
かわいい!と無邪気に褒めてくれる彼女に、
手作りで、とつぶやくと、わあと両眉をあげて、感嘆の声をはずませた。


「あの、俺のフォンダンショコラ、よかったら…。」


いや、欲しかったのは薫のチョコなのに、
何を言ってるんだ。
しかし、俺はどうしても自信作を食べてほしくなった。

彼女は俺の出来上がりをグループの席で
見ているから、箱を受け取ると目を輝かせた。


いいんですか!?嬉しい…あ、あれ、逆チョコか。お返しに、チョコ、チョコ…私のはカチカチだしなあ…


「い、いいですよ!お返しなんて…」


それだけ言うのが精一杯だった。顔が熱い。

彼女はあ、と声をあげると、私これからライブなんです、とポケットからゴソゴソとチケットを取り出した。


「バンド…!?」


はい!デスメタルバンドの
ボーカルやってます!



彼女は腕のじゃらっとしたくさりを
見せた。



俺は今、そのギャップにしびれている。

彼女はただ甘いだけの女じゃなかったようだ。




ハッピーバレンタイン。
今日もお付き合いいただきありがとうございました。

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