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001.観劇から得た知見『お伽草子』

Afterコロナにおける小劇場演劇存続の道vol.1

舞台実験プロジェクト★ステージ・ラボ「AON」
6つの短編作品によるロングラン公演『お伽草子』
場所は大阪市住之江区の住宅地にひっそり佇む「藝術工場◉カナリヤ条約」

1回の公演で3本の短編作品を上演。
2回の観劇で、合計4本の作品に触れることができました。
今回は、これらの4作品、
そして「藝術工場◉カナリヤ条約」から得られた知見をまとめ、
Afterコロナにおける小劇場演劇存続の道について考察していきます。

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小劇場演劇の価値を再考する
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演劇のどこに価値があるのかといえば、
やっぱり「ナマモノ」だってところ。
それに加えて、小劇場の価値は「近さ」かなと思います。

ナマモノと近さ。
まずナマモノについて。
ナマモノとして価値があるものを考えたとき、
一番に思いついたのが天然鮭でした。
#空腹のせい

例えば、天然の鮭と養殖の鮭がスーパーに売ってたとして、
仮にどちらも同じ値段だったら、どっち買います?
僕は間違いなく天然鮭です。
昔、実家でいつにも増して美味しい焼き鮭が出てきたことがあって、
「いつもと違う!」って言ったら
「今日のは天然やねん」って言われました。
それから僕は天然鮭の美味しさを知り、同じ値段なら天然を選ぶようになりました。天然の何がよかったかというと、魚らしい新鮮さがあったんです。
ここから言えることは2つ。
・同じ値段なら、天然を選ぶ。(素材(人間?)らしさ、新鮮さ)
・天然の味を知っているから、天然を選ぶ。

きっと演劇にも同じことがいえる気がします。
映画と同じ値段で、選択者が演劇の良さを知っていたら、
演劇を選んでもらえるんじゃないかな。

じゃあ演劇の良さ、すなわちナマモノであることのメリットって何?
ってところですよね。
簡単に言うと、オンラインでは発揮できない演劇の良さです。
「オフラインでのナマモノ」ならではの良さです。
今回の作品を観た中でも、いくつか見つけました。

①かなりの音量で響かせてくる音響システム。
これ、好み分かれると思うけど僕的には良かったですよ。
オンラインでは視聴者に届くまでに様々な手が加えられます。
それがオフラインでは身体に響く音量で音を流せて、そしてそれが役者の演技と調和して届く。ナマモノならではの感覚だと思いました。

②客席ごと全てを包み込む照明システム。
これは満場一致でいいと思ってます。
今回のでいうと、海の中での感じとかめちゃくちゃよかったです。
もちろん、役者の演技と音響も相まってですが、客席まで青く包み込む光。
自分も海の中にいて、そこで海中の彼らを観ている感覚になれました。
どうしてもオンラインで観ると、観客は現実からの俯瞰になります。
あの感覚は客席にまで光を届けることができるナマモノならではでしたね。

③香りの共有
これは正直、賛否両論あるかと思います。
今回の舞台における香りの演出に関して、僕は否定的に見てしまいました。
タバコをあの狭い空間で吹かすのは、正直どうかと思います。
最後列に居た僕には、食べ物の匂いは届きませんでしたが、
あれも匂っていたならあまり賛成しにくいなあと個人的には思っています。
僕の中での香りにおける賛否の指標は、観客が現実に引き戻されるか、作品により没頭できるかというところです。
このものさしで測ると、タバコはほとんどの確率で前者、すなわち現実に戻されるでしょう。副流煙気にせずあの匂いを一緒に吸うことで母親に感情移入できるかといわれれば否。仮に没頭促進が可能だという主張があったとしても、母親が吸ってるのは主流煙、僕らが吸わされているのは副流煙です。吸っている者以外の登場人物たちとの感情共有はできるかもしれませんが、ちょっと無理があるとは思います。不快の共有をしても誰も得しないかと。
食べ物は、時と場合によるかなと思います。今回は時間があまりよろしくなかったかな…18時前に入って、20時前に出ていく予定のお客さん。あの本物の食べ物が登場する時間帯はお腹空いてくるでしょう…。あのタイミングで僕が匂いを感じてたら、現実に引き戻されていたと思います。
#空腹に弱いマン

とはいえ、香りも使い方次第かなと思います。
例えば、森の中とか、海の近くとか。不安感とか不快感を与えない系の。
そういうのの香りを上手く観客に届けることができたら、
ナマモノとしての良さは更に際立ちます。

④不確実性を伴うドキドキ感の演出
今回の作品でいうと、『不安のランチ』の紐がまさにこれです。
ただ、個人的にあれはやりすぎかなと思いました。
紐の存在感が大きすぎて、ストーリーが入ってきづらくなっていました。
あくまでサブとしての要素ならよかったけど、
今回、個人的には主張しすぎてたかな。
ドキドキ感はめちゃくちゃ感じたんですが、
それが不安を誘うドキドキ感になってしまっていました。
大丈夫かな…という不安ではなく、
どうなるのかな…というワクワクからくるドキドキ感を演出できたら、
ナマモノとしての価値は一気に高まります。

次は近さについて。
舞台と客席との距離がめちゃくちゃ近いのが小劇場の特徴。
今回のカナリヤ条約ではっきりしたことは、
近い=舞台の端から端まで視界に収まりきらない
でした。
これは何を意味するかというと、
「頭を動かさないと全部を観切れない」ってことです。
めっちゃよくないですか?これ。
オンラインだと基本、俯瞰になりがちなんです。
おそらくそれを打破しようと動き出しているのがVRだと思いますが、
Afterコロナで舞台での上演をのびのびできるようになれば、
オフラインが勝ると思います。きっと大丈夫。直感だけど。

他に近いことの良さは、
やっぱ繊細な演技ですね。小さい表情とか。
今回で言うと、顔を隠している演者が非常に多かった。
でも彼らの感情を読み取ることができました。
近さと、それをちゃんと理解して演技の細かさを追求した演技力の賜物だと思います。
こういうの、ドラマだとそのシーンのその位置をアップにしなきゃいけないんで、変に強調されちゃうんですよね。
それを自然にやれて、観客も受け取りたい人が自然に受け取れるんです。
個人的にめっちゃ好きなところですこれ。

ところで、小劇場の価値は、近さの他にもう一つあると気づきました。
それは客席の少なさです。
動員数が映画より少ない→チケット売りにくい
みたいなイメージを持たれるかもしれませんが、これめちゃくちゃ武器になると思いました。
ざっと数えた感じだと、カナリヤ条約の今回の客席数は40前後。
どの舞台でも小さめのだとだいたい30~40席がいいとこかなあという印象です。この数字、何かピンときませんか?特に教育関係者。
そう。これ、1クラスの人数とだいたい合うんです。
これは学級担任や教科担任をしていれば授業でのスキルを応用できます。
詳しいことはまた別記事でゆっくり書きますね。
とりあえず、学級サイズの人数で、できることがあるだろって話です。

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アフタートークのコンテンツ化
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今回、偶然聞いて帰ることができたアフタートーク。
演出家さんと脚本家さんの裏話をちょこっと聞くことができました。
このアフタートーク、まさに今言った授業力をもってして構成を練ると、
確実にコンテンツ化できます。めちゃくちゃ可能性広がるマジで。
例えば、最後のほうに聞いていた
「何か聞いてみたいことないですか?」
最初からアフタートークがあることを告知されており、
最初から質問することを考えてきていたら、聞けたかもしれません。
あるいは劇中にあからさまにわかりやすい謎があったり、
聞いてほしそうなニュアンスの描写が劇中にあったりしたら、
もっと聞きやすかったかもしれません。
もっというと、手上げやすい発問の仕方とかあるんすよ。
そういうテクニック使えば、これもはや別枠でマネタイズできます。
突然ぶっこみますけど、
チケットでのマネタイズを放棄して、そのうえで小劇場演劇で食っていくのが僕の夢です。これを現実化させる一手を見つけられた気がします。
可能性マジで無限大だよこれ。
あとからでも、公演後すぐ公開でも、YouTubeの有料コンテンツとかで流せばいい。裏方の苦労とか、そういうメイキング的なの。それから演者の感想会とか反省会とか。M1終わってからやってるやつみたいなの。観に来た人への限定公開とかで配信したらおもしろそう。

と、いうことで。いろいろ書きました。
すっかり忘れてましたし、順番前後して文章構成下手くそ極めてますが、
なんでこれがアフターコロナでウケると思ったか、ってところを最後書いて終わります。

今、突如爆発的に流行しているclubhouseという音声アプリ。
巷では音声版Twitterなんて言い方もされています。
招待制なので、誰かに呼んでもらわないと始められないスタイル。
雑談ができたり雑談を聴けたりするんですって。
ちなみにアーカイブは残せません。

これ、録音してるとかじゃないんでまさにナマモノですよね。
「今しか聴けない」限定感と「簡単には参加できない」特別感。

もともと演劇には今しか観れない儚さという名の限定感を持ち合わせてて、
人気すぎるとすぐ客席が埋まっちゃう特別感も頑張れば作り出せる。
そしてナマモノである。

clubhouseが流行る理由はちょっとまた別にあるんですが、
これが流行するなら構造をパクれたら演劇もいける気がしてます。
これに加えて、コロナ明けたらみんなナマモノに飢えまくってると思うんで。たぶん、音楽ライブとか海外旅行とかすごいことになりますよ。
その波に乗りながら攻めていきたいなあ。

と、最後願望なってしまいました。半分直感なので、
考えが甘いぞ!って思ったら鼻で笑ってやってください。

一緒に考えたい!って思ってくれたあなた、
一緒に考えましょう。
三人寄れば文殊の知恵とか言いますし、
一緒に考えてくれる仲間探してます。

よかったら緩くおしゃべりからしていただけませんか…?

最後まで読んでいただき、
そして購入していただき、
ほんとにありがとうございます。

2021.1.31.佑

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小沢佑太|劇団CLOUD9
最後まで読んでくださってありがとうございます♪ 現在は日々の気づきを毎日綴っています。 2022年に劇団を立ち上げ、その運営を行う中での気づきや成長日記にすることを目指しています。 もしよろしければ、今後の活動をサポートしていただければ幸いです☺️

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