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“愉しい老後の処方箋”《マガジン“新書沼にようこそ” vol.10》

『老活の楽しみ』/帚木蓬生

世は終活ブームながら、老活こそ生命線。
60歳で白血病を経験した73歳の現役医師による、食事づくりから人とのつきあいまでの基本。
高齢者のおちいりがちな病気不安症、睡眠行動の点検、本当に正しい脳の鍛え方、筋肉や歯、脳の活動のための食.......。
むずかしいことは何もない。
さあ、今の今からはじめよう。

表紙そで解説より

現役医師の小説家が結構好きです。
久坂部羊、海堂尊、知念実希人、夏川草介、渡辺淳一(敬称略)。
枚挙にいとまがありません。
(その中でも久坂部羊氏の小説は大体読んでいるくらい好き、エグめだけど。)
そう言えば手塚治虫も医学部卒だっけ。

こちらの著者、帚木蓬生氏も精神科医。
『臓器農場』は少し時代設定が古いけれど、現代にも通じる怖さがあり、『閉鎖病棟』は読んだのがかなり前なので内容は曖昧なのですが、内容のわりに読後感がよかったのを覚えています。
小説家としても多作な方なので、なかなか読めてない作品が多いですが、哀しさと愛しさが絶妙に混じり合う作風といった印象でした。

さて、こちらの『老活の愉しみ』はそんな著者が述べる「老活の手引書」。

七十歳現役社会、八十歳定年社会の登場です。そこでは高齢者も有効資源であり、英知と知識を有する人材として、大いに活躍が期待されます。

p5

本記事のタイトルの「老後」という言葉はそぐわないような印象。
むしろ「生涯現役」とした方がよかったか?

著者自身が大病をしていること、それを克服したことを思うと闘病記としても読めるかと。

そして実際に臨床もされているわけなので、こういうお医者さんもいるんだなという気持ちで読むといいです。
心のセカンドオピニオン。

全体に、身体機能が落ちるのは当然、病気をするのも当たり前、その上でどう対策するかということが述べられています。
耳が痛いところもありますが、大体、やってやれないことはなさそうな対策。
出来るところからチャレンジしてみて損はなさそう。

「いいね」したくなった箇所をいくつか紹介。

足腰を鍛えるのには、よく散歩が第一だと言われます。しかし私自身はこのスクワットこそが最も有効だと感じています。

p37

だからツレアイにはとにかくスクワットをすすめています。

僧帽筋は、肩を思い切りすくめると緩みます。椅子に坐った姿勢で、両手を大腿に置いて、肩すくめの姿勢を十秒間続けると、僧帽筋がひと息つけます。あるいは背を真直ぐ伸ばして、両手を高々と上げても、僧帽筋が喜びます。

p50

昔、父親に肩凝りがひどいと相談したら「万歳すればいい」と言い放たれ、適当なこと言われた…と内心舌打ちしたものです。ここで同意見に出会うと思いませんでした。
父ちゃん正しかったんや…。

高齢になるに従って眠りが浅く短くなるのは、正常な現象です。人の眠る時間は十五歳前後で八時間、二十五歳で七時間、四十五歳で六時間半、六十五歳で六時間という具合に、短縮するようになっています。二十歳過ぎると、二十年毎に睡眠時間は三十分ずつ減っていくので、八十五歳では五時間半眠ればもう充分だという計算になります。

p64

さらにこの後に続く、著者が不眠の訴えを診療する時のエピソードにエッジが効いてます。

現代の高齢者は暇ですから、一日の半分は床につきやすいのです。まるで眠るために生きているような毎日になっています。
「それならもう永遠の眠りにつくような薬を出しましょうか」
たまりかねて私は言います。
「永遠の眠りはまだ早いです。七、八時間ぐっすり眠れる薬を下さい」また押問答が始まります。私の頭の中には、「どうせ死んでしまえばずっと眠ってれるのだから、現世では多少不眠でもよかろうに」と、意地悪な考えが湧いてきます。

p66

本当に悩んでいる時にそんなこと言われたら傷ついちゃう…と思いつつ、笑ってしまいます。

確かに、百四十億個あると言われる私たちの脳細胞は、毎日十万個は死滅しています。
こう聞くとぞっとするむきもあるでしょう。しかし冷静に計算してみると、一年で三千六百五十万個、十年で三億六千五百万個、百年でも三十六億五千万個しか減らず、まだ百億個も残っているのです。脳ははじめから余力を充分に残しているので、たとえ四十億個が失われても大勢には影響がありません。大切なのは、その残された百億個の脳細胞を、いかに活用するかなのです。

p82

意外と残るんだ!と目から鱗でした。

(註:健康のためにはアルコールはゼロの方がいいけれど)
そこまで厳しくするのは酷でしょうから、飲酒は機会飲酒、つまり何かイベントのときだけにするといいでしょう。祝賀会や誕生パーティ、同窓会や歓送迎会、月一回の勉強会のあとなどに、アルコールを口にすれば、何の問題もありません。私自身がそうですから。
酒飲みの患者さんからは、「先生は酒は飲まないのですか」とよく聞かれます。そんなときは、「私はただ酒、人からおごってもらう酒しか飲みません。それは年に数回ですよ」と、冗談まじりで答えます。

p123

いいですね、健康にいい、ただ酒、笑。

と、読み物としても楽しい1冊。
自分には近いうちに座右の書になるかもしれませんが…。
若い方には、高齢の方と接する時の手引書にもなるかと思います。


最後までご覧下さり、ありがとうございました。 どうぞ素敵な読書生活を👋📚

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最後までご覧下さり、ありがとうございました。 どうぞ素敵な読書生活を👋📚

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樹田 和(いつきた なごむ)
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