#378 新規事業開発に必要なのは、企画力でも発想力でもなく、熱意とビジネス基礎力
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
今日は、過去に新規事業開発をメインの業務として担当していた時に感じていたことをまとめてみたいと思います。
何か新企画を立ち上げるときや、新しいサービスを作ろうとするときに、「何か面白いアイデアはないか?」とか「柔軟な思考を持つ若い人に考えてもらおう!」みたいな話になるシーンを見られたことがある人は少なくないのではないでしょうか。
私も新規事業開発を自分のミッションとして数年間担当する前は、新しい発想を持っている人や、柔軟な考え方を持っている若い人たちを入れて考えること、というように、企画のアイデアそのものの良さを追求することが大事だという考えが頭にありました。
最初は新規事業開発ってどのように進めていけば良いのか分からない状態だったので、新規事業開発プロセスを伴走型で進めてくれるチームを入れて進めてましたが、徐々に自分でも勘所が掴めてきて、実際に受注実績を作るに至る過程において、「新規事業開発に最も必要なのは斬新なアイデアとかではなくて、熱意とビジネス基礎力だな」ということを実感しました。
ましてや、経営幹部やオッサン管理職が「若い人に考えてもらえば、何かいいアイデアが生まれるかもしれない」と下に丸投げしているうちは絶対にできません。
若さというのは単なる属性に過ぎず、もちろん思考が柔らかくて行動力のある優秀な若い人もいれば、若くても何も考えてなくて言い訳ばかりしている人もいます。
50代、60代であっても自ら手を動かし色んなアイデアを次から次へと生み出して仕掛けていくようなバイタリティ溢れた方も多いので、「年齢」なんてあまりあてにならないと思っています。
では、なぜ新規事業開発で重要なのは「熱意」と「ビジネス基礎力」なのか?
私が実践を通じて至った結論について、ご紹介していきます。
「新規事業開発」の成否は、できるまで続けるかどうか
新規事業の成功確率は「千三つ=1000のアイデアのうち、実現するのは3つ」と言われているように、ほとんどが実現せずに終わるわけですが、単純に成功するまで続けるには「諦めないこと」が必要です。
「熱意が必要」という主張は、精神論ではありません。997件のアイデアはボツになるわけですから、自分が立てた仮説が検証により誤っていると分かり補正しながらとにかく試し続けたり、会社の上司にダメ出しをもらい続ける中でも「やり方を変えて別のアプローチで試し続けること」が当然必要になるわけで、これを地道に続けていくためにはとにかく「続ける根気」が何よりも必要です。
頭では、997件のボツになる企画があると分かっていても、周りを見ていて思うのは、大抵10件もやらないうちに継続できずに終わってしまうケースがとても多い。
最初は、「人口減少」や「生成AIの普及」といったメガトレンドの掛け算を考えてみよう!みたいな感じで始まるので、いろんなアイデアが出てきて面白いです。
しかし、「こういう案が面白いのでは?」を企画書にまとめて、フィールドワークに行くまでにかなり時間を要してしまい間延び感が出てしまったり、フィールドワークで事前に設定した仮説と異なることが分かり、そこで「この案難しいな、、」で思考停止し行動も止まってしまったり、社内で「それはうちでやる意味あるの?」の回答作りと打ち返しをしている間に顧客のほうを全く見なくなってしまったり、、と地に足ついた取り組みに落とし込むところに時間をかけているうちに、いつの間にかはじめに持っていたワクワク感を失ってしまいます。
そういうプロセスはどこでもあると考えると、共通して問われてくるのはとにかく熱意。根気と言ってもいいかもしれません。
どうしてもこういう人の役に立ちたい!とか、こういう選択肢を世の中に作りたい!とか、○○億規模のビジネスを作って早く出世したい!とか何でもいいのですが、「これを絶対に自分は成し遂げる」という意志と覚悟がないと、絶対どこかで諦めてしまいます。
大企業での新規ビジネス創発が難しい理由は色々と語られますが、私は「イノベーションのジレンマ」的な話というよりも、究極的には「熱意」の違いだと思ってます。
そのビジネスの立ち上げに一点集中しているスタートアップの人と、成果が出なくても定額の給料が与えられる大企業の人の間でどうしても環境に差があります。
もちろん、大企業の中でも本気で取り組んで成果を出している人もいます。最後は個人差になりますが、覚悟を持ち、自分で熱意を持ち続けられるかどうかというのが、成功するまで続けられるかどうかに大きく関わっています。
素晴らしいアイデアよりもベースの仕事力が大事
もう一つ感じたのは、誰も考えつかないようなアイデアを思いつくよりも、基本的な仕事力が高いことのほうが遥かに重要ということ。
1000に3つの成功率ということは、とにかく量が必要ということです。1000回は試してみないとダメということですが、1000回に辿りつくまで3年間で達成できる人と、30年かかる人で結果が違うのは明らかです。
そして大抵、後者の場合は上述したように熱意が持ちませんから、1000回まで辿り着けずに終わってしまいます。
具体的な3年とか30年という回数の話が言いたいのではなく、ある程度スピード感持って仮説を立ててドキュメントの形に落とせるとか、それを論理的に他人にプレゼンして協力を仰げるとか、メールやチャットの返信が早いとか、知らないことでも好奇心持って学習し続けられるとか、相手と心地よいコミュニケーションができるとか、ある程度の量を重ねながら企画を尖らせていくためには、ベースの仕事力がとにかく大事なんです。
チームで取り組んでいる場合、テンポよく仮説と検証を繰り返していきたいのに、「1週間前に議論してた件はどうなった?」と聞いて、「まだやってません」が続くと、うーん、これは厳しいな、、と。
それぞれの役割でやるべきことを自分で見つけてリーダーシップを発揮する自律型組織でないとスピードも上がりませんから、「言われてないからやってません」とか「次は何をすればよろしいでしょうか」みたいな指示待ちスタンスも正直難しいです。
だから、本当に新規事業を作りたいなら、「若い人ならではの柔軟な発想を持っていそうだから」とか「○○業界で20年以上のキャリアがあるから」とかザックリラベリングで集めた人ではなく、各現場で、既にリーダーシップを発揮して前線で動いている人を集めてこないとキツイんじゃないか?というのが私の考えです。
トップやマネージャーも、新規領域でないところで活躍していた人の成功体験はむしろ邪魔になることさえありますから、ちゃんと新規領域で実績がある人を配置する。新規領域やったことない人が講評者をやってる社内のビジネスコンテストも、新規ビジネスを本当に作りたいならばほぼ意味ないと思ってます。
以上、「新規事業」=「若い人ならではの柔軟な発想が必要」とか「誰も思いつかないような突飛なアイデアを!」ではなく、「どうしてもこれをやりたい」という熱意と、スピードや思考力といった基本的な能力のほうが重要では?という話でした!