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#408 スペシャリストか?ジェネラリストか?そんなことを考えても仕方がない

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

先日聞いていた話の中で、「本当にその通り!」と深く共感したテーマがあったので、ご紹介します。
安斎勇樹さんのチャンネルで解説されていた「スペシャリストか?ジェネラリストか?という問いの無意味さ」というテーマです。


スペシャリストかジェネラリストか理論

皆さんも、スペシャリストか?ジェネラリストか?という話を一度は聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。
よく言われるのは、「スペシャリスト=ある専門性に特化して、その専門性を深く追求することで価値を発揮する人」、「ジェネラリスト=幅広い分野を経験し、長けたマネジメント能力を発揮して価値を発揮する人」みたいな感じです。

私も2010年代前半に新卒で入社した時に、会社の人事部から全体向けに「スペシャリストかジェネラリストか」を考え、その両方を目指していきなさい、という趣旨の説明を受けたことを覚えています。

社内で開催されるグローバルセミナー(海外での仕事を希望している人が、海外駐在を既にしている人の話を聞くセミナー)でもよく指摘されていたのが、「あなたの専門性は何か?」ということを必ず問われるので、自分のスペシャリティを磨きなさい、という話でした。

それ自体は正しいと思います。現地語でコミュニケーションが出来た方がスムーズなのに、わざわざ他国の人とチームを組んで仕事をするのであれば、「言語」というハンデキャップを上回るだけの何らかの価値がないと、意味がないですからね。
日本の本社から海外現地に駐在したスタッフがそこで活躍するには、何らかの専門性を発揮して価値を提供していかないと、当然「何をしに来たの?」となります。

私自身も東南アジアで10年近く仕事をしていたのでよく分かりますが、グローバルでの仕事は外から見えるほど華々しいものではなくて、かなり泥臭くて、常に「あなたの価値は何だ?」が問われて厳しい世界です。
その分、何らか専門性を身に付ければ、世界各国からの別の専門性を持った人たちと一緒に仕事ができる機会にもなるので、ダイナミックでとてもワクワクするのもまた事実です。

一方で、何らかの専門性を磨いて勝負しようということは、スペシャリストを目指すということか?と問われるとそれは違います。

私の東南アジアでの経験から話すと、現地でお客さんや他のステークホルダーと話すと、当然ながら「○○会社の○○チームの林さん」ではなく、「○○という事業を営んでいる会社の林さん」として認識されることが多いので、「それは私の専門外です」なんて答えてしまえば、「こいつは役に立たない」とジャッジされてしまいます。

つまり、何かの領域を深めて専門性の旗を立てることは大事なんだけど、同時に自分の特化した専門性以外のところもそれなりに深く理解していないと太刀打ちできないということです。
これが言い方を変えれば「いわゆる"スペシャリスト"だけではダメで、"ジェネラリスト"である必要もある」ということで、いずれかの能力を特化して身につけよう!という発想自体があまり意味をなしていないことになります。

よくある誤解

スペシャリストかジェネラリストか?の議論でよく用いられる絵が、縦に専門性、横に業種(例えば、営業・開発とか、IT分野の話で言えば、設備系、ネットワーク系、アプリケーション系のような得意技となる領域など)が並んだものです。

で、「広く浅く」がジェネラリスト、「狭く深く」がスペシャリストというように解釈されることがあるのですが、これは全くもって誤解だと考えています。

ジェネラリストはGeneralist、つまりGeneralなので将軍とか大将っていう意味ですからね。「広く浅く」の人が大将にはなれないのは自明です。
キングダムに登場する秦国の六代将軍が「広く浅く」の人だったら、とてもじゃないけどあんなオーラ出ないですよね。そんなキングダムは嫌だ。
つまり、「ジェネラリスト」という単語がかなり軽く扱われていないか?ということです。

スペシャリストも同じです。
現在、何かの「スペシャリスト」として認識されている人が「スペシャリスト」足るのは、何か一つのことに詳しいからではありません。
もちろん、「この人はこの分野の専門家だ」と認知されていることは重要ですが、そのようなスペシャリストは「その分野のことをよく知っているからスペシャリスト」であるわけではなく、自分が極めたこと、人より多く知っていることについて、色んな場所に営業して認知してもらい、ライティングスキルなどを駆使して情報発信を行い、プレゼンテーションを通じて多くの人にその専門性が伝わったからこそ、スペシャリストなのです。

地道に営業もして、執筆もして、プレゼンもする。さらには、他人に広く認知してもらう成果を出すためには、当然チームワークが必要ですから、マネジメントスキルも必要でしょう。そんな「スペシャリスト」の方たちが、とても「狭く深く」なんかではないことは明らかです。

ジェネラリストもスペシャリストも「広くて深い」のです。だから、能力ベースでこの2つを分けても意味がないという指摘です。

ここに、スペシャリストか?ジェネラリストか?を考えても仕方ないという理由があります。

活躍できる環境がジェネラルかスペシャルか?

この議論から一歩踏み込んで、安斎さんの指摘で面白いと感じたのは、「能力ベースでスペシャリストとジェネラリストを分けることには意味がないが、「活躍できる環境がジェネラルかスペシャルか?」を考えることには意味があるという点です。

つまり、自分が活躍できる環境は、ジェネラル(=広い)か?それとも、スペシャル(=深い)か?という視点で、ジェネラリストかスペシャリストかを定義するということです。

そのように考えると、それぞれに応じてキャリア戦略が変わって来そうなところです。
活躍の場がめちゃくちゃ多い自分を目指して、社内の部署異動でも転職でも、自分という商品が価値を発揮できる場所をたくさん作ることが現代版ジェネラリスト。
一方の現代版スペシャリストは、自分の能力が発揮できる条件が複数が重なる特殊な環境で価値を発揮できる人です。

このいずれを目指すのか?という視点は、自分のキャリアにおけるポジショニング戦略に繋がります。

例えば、IT業界においても、古くから存在するレガシーシステムの後継者不足の深刻さはよく聞く話で、あえて新しい技術ではなくレガシーシステムの専門性を深く尖らせていくことで相対的な自分の価値を高めていく戦略もあります。
同じようにレガシーな技術の有識者不足は他にもありますから、このような特殊な環境で活躍するためのキャリア選択です。これは現代版スペシャリストの生き方。

逆に相手の業界がどこであれど通用する新しい技術への専門性を高めていく手段もあります。つまり抽象性の高いノウハウやスキルをかけ合わせて、いい意味で「自分にしかできない」ことを増やして、色んなことを経験していくキャリア選択です。これが現代版ジェネラリストの生き方です。

皆さんは、現代版スペシャリスト、現代版ジェネラリスト、いずれを重視してキャリア選択していくでしょうか?
少し立ち止まって考えてみるのもいいかもしれません。

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林 裕也@IT企業管理職 ×「グローバル・情報・探究」
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