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#258 成功体験は、裏表を理解して使い分ける

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

大小問わず、何か新しいことにチャレンジするとき、あるいは仕事などで自信を持って一人称で進めていくとき、「小さな成功体験」をできるだけ初期段階で作り出し、それを「成功」と認識して仲間で喜び合うことは、とても大切なことです。

何より、楽しくないと続かないし、ちょっとでも前に進んでいる、と感じることで、やっていることに自信を持ち始めて、「次はこうやってみようかな」と自発的に考え始めて、色々と工夫し始めるのが人間ですよね。

成功体験の良い面と、その向き合い方

マネジメントとしてのメンバー育成においても、まず一番に考えるのは、それぞれのメンバーに対して、オーバーエクステンションすることで達成可能なレベルの仕事をアサインして、「小さな成功体験」をいかに積んでもらうか。
本人が自発的に「成功体験」だと認識することもあれば、日常の当たり前として「成功体験」が流れていってしまうこともありますから、「成功体験」を「成功体験」だと定義して、節目を作り出してチームでめちゃくちゃ喜ぶことも大切。

「後進の育成には、小さな成功体験を積ませることが大切」というのは、皆さんも聞かれたことがある話だと思います。一方で、自分たちで小さくても何か達成した時に、しっかり自分たちで喜ぶ時間を作る、ということが、意外と軽視されているシーンが多い気がします。

プロジェクトを進める過程においては、そのプロジェクトを構成する小さなフェーズが完了する、というのは、小さくてもとても重要な一歩です。一方で、一つのフェーズが終わっても、すぐ次のフェーズがやってきたり、まだまだ課題山積み、みたいなことも多いですから、意識的に「小さな達成を仲間内で喜び合う」とか「あなたは一つの重要なプロセスを達成しました」と言葉で伝え、感謝することが大切です。

そしてこれは人材育成を担うマネージャーにとっては、不可欠な行動だと感じていますが、忙しさにかまけて、気付いたら何かを達成したタイミングから時間が経ってしまって機を逸してしまった、ということも多いのではないでしょうか。

マネジメント目線でメンバーを育成する時に考える「成功体験」は、本人が自発的に「これは成功体験だ」と感じられるような場と裁量を与えることと同じくらい、目の前の事象を「成功体験である!」という言語化して伝えることが大事なんじゃないかなと。

そしてそれをできるだけ頻繁にフィードバックする。これまで私を育ててくれた人で、今でも感謝している先輩たちというのは、とにかく自分のことを何かと気にかけてくれていて、見ていないようで自分のことをよく見て、理解してくれてました。
普段から気にかけて見ているからこそ、頻繁にフィードバックすることができるし、小さな成功体験を本人に伝えられますよね。

ここまでは、「成功体験」の良い面の話。

成功体験の悪い面と、その向き合い方

一方で、成功体験を積み上げていくと、重ねてきた成功体験が次のレベルへの成長を妨げることがあります。
次のステージに進むのに足を引っ張るもの、それはプライドです。

徐々に自分の弱点を否定するようになり、これまでと同じやり方で次も上手くいくはず、と思考停止状態になってしまうのが、成功体験を繰り返してきたところで生じる悪い面です。

例えば、新しい技術を活用することで実現可能な、より無理のない革新的な教育方針を無視して、自分で実証済の授業プランに固執して毎年同じことを繰り返すだけの教師。これまでの自分のやり方だけにこだわるベテラン経営者。年下の同僚の考えをはねつける外科医。

より便利な、無理のない、効果が高いやり方があるのに、これまで通りやれば上手くいく、と信じて止まず、新しいものを知ろうともしない人が一定出来上がってしまうのが、成功体験のダークサイドですね。

この呪縛はなかなか強いパワーがあるので、「成功体験を一旦リセットする」という強い意志を持ち続けることが大切です。
特に私は、昨年社内でそれまでとは全く別の部署に異動で着任してきましたが、「これまでの成功体験をリセットする」というのは来た時から特に意識していたことでした。

同じ社内でも別部署に来れば、そこで大事にされている価値観が異なり、仕事の進め方や使われている言葉が結構異なります。
だから、それまで自分なりに確立していた「こういう時はこうすれば上手くいく」が通用するとは限らず、意識的に一旦状況をよく観察することを意識してきました。

とはいえ、自分なりの強みや価値観を全て変える必要はないし、そもそも変えることはほぼ不可能ですよね。そこで、自分が心がけているのは、「アイデンティティを小さく持つ保つこと」
役割が変わっても、アイデンティティのコアの部分だけは小さく保ち、一つの信念だけで自分自身を定義しない、というマインドセットでいると、成功体験からの離脱もやりやすくなりました。

老子道徳経の第七十六章に「人の生まるるや柔弱、その死するや堅強なり」という一節があります。
さすが長く受け継がれてきたものは本質を突いていると関心したところで、有名なのでご存知の方も多いかもしれませんが、皆さんにもご紹介しておきます。

人之生也柔弱、其死也堅強。
萬物草木之生也柔脆、其死也枯槁。
故堅強者死之徒、柔弱者生之徒。
是以兵強則不勝、木強則折。
強大處下、柔弱處上。

<解釈>
人は柔らかく、しなやかに生まれ
死ねば、硬くこわばる
植物は柔らかく、しなやかに生え
枯れれば、乾いて脆くなる
それゆえ、硬くて融通の効かない者は死に近く
柔らかくて従順な者は生に近い

硬くこわばる者は、破れるであろう
柔らかくしなやかな者が、勝つであろう

老子道徳経 第七十六章

自分のアイデンティティのコアはできるだけ凝縮して小さく保ち、これまでと同じやり方を繰り返したり、新しいものを拒絶する自分を見つけたら、それは「硬くこわばっている」と認識しないとですね。

「成功体験」は、人に自信を与えて成長を促進する効果もあり、人を硬直させて成長を抑制する強烈な副作用もある。

この両面を理解して、上手く付き合っていかねば、ですね。

それでは、今週もお疲れさまでした!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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林 裕也@IT企業管理職 ×「グローバル・情報・探究」
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