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#469 日本には、グローバル教育が足りていないのでは?という仮説
3月3日、元マレーシア在住で、文筆家・編集者・グローバル教育の専門家でもあるのもきょうさんこと野本響子さんと、Voicyライブアワーにてお話をさせていただく予定になっています。
これは、先日リリースされた「探究学習」に関する放送の後、「林さんが10年にわたる東南アジアでのビジネスで学んできたことは、グローバル教育そのものです。次は、グローバル教育について話しましょう」とありがたいご提案をいただき、実現するものです。
私は2010年代前半あたりから、約10年の東南アジアでの仕事に従事しており、ここでの経験がキャリア上最も長く、本当に濃い時間を送ってきました。
日本では到底考えられないことが連続で起こるリアルについて、noteやスタエフでも今後も発信していこうと思っていますが、「東南アジアのカオス」的なことに驚くこともあれば、逆に外から見た「日本のカオス」に驚くことも多々あります。
また、自分の3歳と1歳の子どもにも、「日本で身近に見えている世界だけが世界じゃない」ということを伝えるため、毎年2週間程度の「子連れ海外旅行」に行っています。
たった2週間程度であれ、帰国直後は海外と日本の違いに違和感を感じることも多いです。一番感じるのは、人々の寛容性の違いです。昨年のシドニー・メルボルン周遊においても、子連れの私たち家族に対して、どこに行っても嫌な顔をされることはなかったですからね。オーストラリア旅行から帰ってきて感じた日本の違和感は、以下の記事にまとめています。
そして、そのような寛容性の低さに対して「グローバル教育」の考え方がより浸透することが重要ではないのかなと。インバウンドや働き手不足により「ローカルこそグローバルを」が求められる昨今、ローカルも含めて「グローバル」の本当の意味を伝える役割になっていきたいと考えているため、今日は、「グローバル教育」をテーマにまとめてみようと思います。
グローバル教育とは何か?
今日は、UNESCO(国際教育科学文化機関)の"Global Citizenship Education"の定義に則り、考えていきます。
https://www.unesco.org/en/global-citizenship-peace-education
"Global citizenship = 地球市民" の定義
まず、"Global citizenship"の考え方は以下のように示されています。「単一の国ではなく、より広範な地球規模のコミュニティと繋がっている」という考え方ですね。
The global citizenship concept is based on the idea we are connected not just with one country but with a broader global community.
そして、この後に続く話がまず核心的です。
Global citizens don't have a special passport or official title, nor do they need to travel to other countries or speak different languages to become one. It's more about the mindset and actual actions that a person takes daily.
Global citizensであるには「他国への渡航や複数の言語を話せることが条件ではなく、考え方と日々の具体的な行動」である、と指摘しています。
私は、東南アジアで約10年の仕事経験があるからGlobal citizenであり、そうでない人はGlobal citizenではない、という考え方では決してないということです。もちろん、実際に現地を見たことがある方がイメージアップしやすい面はあるとは思いますが、別にそこは重要ではない。ましてや、言語が得意・不得意という次元の話では決してありません。
具体的に必要な要素としては、以下の項目を挙げています。
世界がどのように機能しているかを理解している
人々の違いを尊重し、価値を認める
単独の国では解決できない課題に対して、他者と協力して解決策を見出す
グローバル教育は、英語や渡航回数がどうこうではなく、これらの要素を養うための教育ということです。
"Global citizenship"教育に必要な要素
次の3つの具体的なポイントが示されています。
1. 知識を実践に活かすための社会的スキル
2. 価値観の醸成
3. 行動促進
1点目の「社会的スキル」では、何が公正なのかを問い、考える「批判的思考」や、主張の対立を創造的に解決する「建設的な問題解決」、異なる背景や文化、視点を持つ人々と対話し、協力する「協働作業」などが挙げられています。
2点目の「価値観の醸成」では、多様性の尊重、開かれた思考などが挙げられています。
3点目の「行動の促進」では、学習者が自身の価値観を行動に移し、社会に積極的に参加することを支援することが挙げられています。地域レベル・国家レベル・国際レベルでの課題解決や、個人主義ではなく共同体の利益追求の姿勢が含まれます。
これらを取り組んだ実際の学習の一つが、PBL(Project-Based-Learning)のような形であり、地域の気候変動問題を解決するプロジェクトの実施計画を立てるような学習スタイルが挙げられます。
実際に異なる国の人と取り組むのが大切
ここからは私の考えとなりますが、UNESCOが定義する"Global citizenship education"を効果的なものとするためには、「実際に異なる国の人と取り組むこと」が肝要だと考えます。
そもそも、教科学習で暗記に偏る学習の中では、「批判的思考」や「建設的な問題解決」に関する学習機会が少ないというのもありますが、これらを同質性が高い日本人同士で取り組んでいても、「なんちゃって感」がなかなか拭えないと思うんですよね。
UNESCOのサイトで取り上げられている「地球の気候変動」のテーマも、日本人だけでも成立するとは思うのですが、やはり異なる視点がなかなか入りずらいのかなと。
こちらは、私ならでは提供できる「グローバル × 探究」のテーマを考えた話ですが、PBLの過程で日本以外の人の意見を聞かないと課題が進めらない仕組みにするとか、このあたりの設計が非常に大切ではないかと思っています。
本当は、検討メンバーに日本以外の人を参画できるといいのでしょうが、全グループでそのようなチーム編成にすることは現実的には難しい面もあるでしょうから、せめて日本在住の海外の方に話を伺う機会を作る。そこでは、英語を話さざるを得ないでしょうから、「ついでに言語の重要性を学ぶ」みたいなのが良いだろうなと。
ここでいう「言語の重要性」は、言語は流暢に話したり、文法を正しく使うことよりも、まずは相手を知ろう、自分の意見を言おうと「前のめりになる」重要性ですね。本来、こういう実体験が先にあって、言語も勉強しようという気持ちになるはずなので。
他にもいくつかグローバル教育に関するレポートがあるので、別の文献も参考にしながら、引き続きこのテーマは取り上げていきます!
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