#337 課長職として、メンバーのキャリア形成に向き合うこと。「What」を問うか、「How」を問うか
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
ここ数日、キャリア形成に関する記事をいくつかの観点で書いてきました。
まず、「自分の専門性を磨くことは前提だが、磨くだけではダメで相手の課題と自分の専門性にブリッジをかけるような提案(=ソリューション化)」が、その場で提案できることが大切という話をしました。言い方を変えると、自分の専門性を開く、ということです。自分の専門性がどのように相手に貢献できるのか?普段から即座に言えるためには、仲間とのディスカッションを通じて、会話しながら思考を深めることも有効だし、noteに書いたりスタエフで話したりして、考えを言葉にまとめておくことで、いざと言うときにスッと話せるようになるので、その場数を踏んでおくことが大切です。
次は、自分の専門性、専門性を発揮して相手に提供できる価値をより相手に伝わり、少しでも対価をいただいて提供する形にするには、エビデンスと再現性などを語れるようにしておくことが大切という話をしています。
実際に私がキャリアコーチングの方に話した内容と、それに対する辛辣なフィードバックをご紹介しているので、どこまで話せるようになっている必要があるのか、ご興味ある方はぜひこちらもご覧ください!↓
そして昨日は、今いる環境に不満を感じたりモヤモヤを感じる人も少なくないと思いますが、そのためにはまず自分が何にコアなエンゲージメント(=自分が充実感を感じるポイント)を感じるのか?を理解することが出発点、という話をしました。
その上で、自分の今の環境や、その組織で将来得られる知識・経験が、どのくらいエンゲージメントに合致するかを検証することで、自分のキャリアを選択していくことの重要性を話しています。
今日は、これまでのキャリアの話に、自身のタグの一つである「マネジメント」をクロスさせて、管理職として他人のキャリア形成にどのように携わっていくか?という話をします。
メンバーのキャリア形成にどの程度関わるべきか
まず、現場の管理職がどの程度メンバーのキャリア形成に携わるのが良いか?という点についての考えを話します。
私は元々、「主体的に自分のキャリアを考えて、日々の行動を決めていくのは結局自分自身なのだから、他人があまり干渉すべき話ではない」と捉えていました。
結局は、他人に言われたところで、自分が必要性を感じない限りは動かないし、他人に言われて動いたところで、結局それはキャリア自律が出来ている状態ではないので、本人のためにならないだろうと。
また、一般的にマネージャーがメンバーのキャリアをテーマに本人と話すことって、ある種のリスクも伴っているという考えがあるようにも感じます。
つまり、チームをマネジメントする立場の人にとっては、自分のチームメンバーはできるだけ余計なことを考えずに今の仕事に集中してもらった方が短期的には楽な面もあるわけです。「私のコアなエンゲージメントと、今の仕事にギャップがあると思うんです!」と言われないようにするには、そもそもキャリアのことをあまり真面目に考えてもらわないほうが良い、と口には言わないまでも、そのように感じている人も少なくないのかなと。
一方で、優秀な人ほど、自分のキャリアを主体的に考えて、「今の環境が自分のコアなエンゲージメントに合っていない」と感じると、自分で外の環境に飛び込んでいきます。本当に合わずに外に出るとか、一定の経験は積めたので、新たなチャレンジとして外に出るケースは良いと思いますが、単なるコミュニケーション不足により、組織への愛着が湧かずに外に出るケースも最近は増えていると考えます。特に、人手不足が深刻化し、テレワークなどの働き方も一般的になった現代、離職を防ぐという面でもメンバーとのコミュニケーションがより重要視されるようになっているのでしょう。
だから、様々な企業で「管理職によるメンバーのキャリア支援の重要性」が説かれ、会社から「部下とキャリア面談するように」というお達しが現場管理職に降ってくる。しかし、日々の業務内容のサポートではなく、中長期におけるメンバーのキャリア支援を意識的に経験したことがない人も多く、「キャリア面談でどうメンバーと接したら分からない」という管理職も少なくないです。
メンバーの壁打ち相手になるだけで十分
「キャリア面談における管理職側の振る舞いが分からない」という気持ちは分からなくはないですが、「会社がもっと支援すべきだ」という主張には私はあまり賛成しません。もちろん、会社によるマネジメント育成のための投資強化は必要だと考えますが、「会社がもっと支援すべきだ」とだけ言ってる人は基本的に受け身なので、会社が支援したところで、次はまた別の理屈を付けてやらないと考えています。
今の時代に求められている管理職の能力の一つなんだから、まずはそれを自分で習得すべく動くのが先では?と思います。
そして、実際に私もメンバーとキャリア1on1を組んだり、色々な書籍を読んでみたりと試してみましたが、「キャリア面談におけるマネージャーの役割は、求められないアドバイスをすることではなく、ひたすら相手が自分のコアなエンゲージメントを言語化するためのディスカッション相手になることだ」と言う結論に至りました。できれば、年に1回、半年に1回のキャリア面談のような場だけではなく、普段から頻繁に話し相手になることで、メンバーのコアなエンゲージメントを双方理解した状態を作ること、これが結局一番大事なのかなと。
Whatを問うか、Howを問うか
メンバーのコアなエンゲージメントを引き出すときにマネージャー側に求められることは、「良質な問いの立て方」です。
相手の状態をよく見定める必要がありますが、私の感覚だと、まだ経験が浅いメンバーに対しては「What」で問うよりも「How」で問うほうが上手く言語化のお手伝いができた実感があります。
前回も触れた通り、仕事経験が浅いときに、解像度の高い自己分析が出来る人なんて稀です。そんな人に「仕事を通じて何がしたいのか?」を問うたところで、漠然とした答えしか返ってこないか、答えに詰まってしまうだけです。
一方、「どんなことをしているときに充実感を感じるか」みたいな問いであれば、割と具体的な答えが返ってくることが多いです。「自分で立てた計画通りに仕事を進められているとき」や「プレゼンが相手に伝わったとき」、「綺麗に資料が作れたとき」、「トラブル対応で燃える」みたいな人もいます。ここは本当に人によって異なるところで、言葉にするまで意識できていなかった喜びポイントに気付くきっかけになるだけで十分だと考えます。
より経験を積んだ中堅の方であれば、ある程度「How」のエンゲージメントは理解できていることが多いので、「充実感を感じるHowをより大きく感じられるWhatは何か?」という問いになります。
本当は、あれこれ自分でやってみて、実践の中から「これは自分に合った。これは合わなかった」を見つけるのがいいんですけどね。最近はネットやSNSの発達などもあり、事前に色々調べることに時間を費やしすぎて、初動までの時間をかけ過ぎる人も少なくありません。コスパを求めすぎる傾向があり「とにかくこれを食ってみろ」が通じないケースも多いと感じています。
私も現場のシステム開発チームの課長として、日々試行錯誤しながら取り組んでいるところです。唯一の正解はないからこそ、しぶとく取り組んでいきます。