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今週の【情報通信をとりまく】気になるニュースまとめ

先週風邪をひいてしまったので2週間分、15本をまとめました。特に「本のタイトルが長くなっている」という記事からは、手軽なインプットを求める風潮が本の世界にまで広がっていることを痛感させられました。一方で、そんな流れをつくったのはスマホだとする主張も実証が難しく、批判に晒されがちだとの記事からは「研究」文脈のアプローチさえも限界があることが語られています。そんな潮目を変えるためにはどんなリーダーが必要か、という疑問に応える記事も数本ピックアップしました。

「創意工夫」でできることが少なくなった

特許出願数の減少が続いている。外的要因に加え、日本の発明力が低下している可能性もあると。大手企業の知財部門が、スタートアップの特許出願をサポートするのも有効です。

-1つは、企業の出願戦略が洗練されてきたこと。発明を特許として出願することには、リスクが伴う。特許出願は公開されるので、場合によってはライバルにヒントを与えることになる
-もう1つの理由として、各社の事業分野が成熟してしまっていることもある
-かつては、個人が通勤途中に電車の中でひらめいたアイデアが、重要な特許になることもあった。だが、そういった個人レベルの「創意工夫」でできることが最近は少なくなっている

ニュースにも応用可能?注目の新技術

アドビが「コンテンツの来歴を確認できるシステム」を開発した。これは応用できそう

-今回登場するAdobe Content Authenticityは、クリエイターが簡単に来歴の付与/確認を行えるソリューションとして開発を進めてきたものだという。画像、オーディオ、ビデオファイルといったデジタルコンテンツに自らの署名などを付与したり、編集などを行う前にその来歴を確認できる

日本のリーダーはとても器用

日本のリーダーは世界でも類まれな「器用さ」を持っていると。この視点は興味深いですね。

-私たちが出会った強い意志を持つ日本のリーダーたちは、欧米に比べてより長期的な計画に集中しつつも、短期の目標設定を組み合わせていることがわかった
-同時に彼らは、投資家だけでなく顧客たちを重視している。一方で米国企業は、投資家によって支配されている。日本のリーダーたちは、リスクを恐れず若手の育成に力を入れ、機敏に指示を出す。自社の人材を見直すことで、個々の社員が才能を発揮できる場に配置され、会社により大きな利益が出るようになる

ポピュリストとデジタルプラットフォーム

強権政治と戦い続けたノーベル賞ジャーナリストのマリアレッサさんの言葉は重い。

-ポピュリストはSNSを使って怒りをあおり、排他的な極右勢力などが台頭しやすくなっている。国民の印象が操作されているときは政府も統治できなくなる
-SNSに流れる情報は、必ずしも事実に根ざしたものではない。プラットフォーマーは人々がスマートフォンの画面をスクロールし続けてくれればいいので、事実を確認しないし説明責任も負わない

インドの素敵なリーダー像

インド三大財閥のひとつタタ・グループ会長の言葉が示唆に富みます。

-最大の強みは何かと問われたら、じっくり考えるところだと答えます。考えるのが得意
-「企業として、未来に備えようとしているところなのです」「どれほど痛みを伴ってもかまいません。移行は必要なのです」。たとえばタタ・スチールは、英ポート・タルボット製鉄所の溶鉱炉を閉鎖して人員を削減し、より環境に優しい製鋼業への移行を決断
-自宅はムンバイにあり、妻・息子と3人で暮らしている。本人いわく、自分の話をするのは大嫌い
-チャンドラセカランは、部下の働き方に合わせる上司として有名だ。たとえば、自分と違って朝型ではない同僚には、朝一で電話をしたりしない

ニュース砂漠と知的豊かさと

このリアルな未来予測に鳥肌。メディア産業を滅ぼしてはいけないと。

-情報時代の経済は油断ならないものだ。そこでは、安く消費できるが、利益の少ないコンテンツが生み出される
-2005年時点と比較して、米国ではすでに全体の約3分の1の新聞、3分の2以上の新聞関連職が失われ、新聞関連の被雇用者のおよそ7%がニューヨーク・タイムズという単一の企業に勤めている
-我々は「ニュースの砂漠」、すなわち報道が実質的に消滅する場所について語らなければならない
-未来に待っているのは無数の場所に接続されるネットワークなどではなく、映画『トゥルーマン・ショー』型の閉じた世界だ。個々人に向けて生み出されたコンテンツが、本物らしく聞こえる作り物の声で読み上げられ、ついでに広告商品が背景に配置されている
-この問題のために、他の何よりも、書き手や出版社が──実際にアイデアを生み出している者たちが──読者から遠ざけられているのだ。知的機関は衰退し、「5つの巨大ウェブサイトが、自分以外の4つのサイトのスクリーンショットで溢れた記事を作るような」出口のないループに陥ってしまう

陰謀論に取り込まれないため方策

陰謀論に振り回されないための免疫力とは?

-まず、批判の矛先を見極めることだ。批判というのは、自己も含めて批判の対象にすべきである。自己批判を含まない他者批判だけの情報は危険だ
-情報ソースを見極めることも重要。陰謀論が無責任に広まるケースでは一次情報ではないケースが多いと自覚し、それを拡散している人がどれくらい一次情報に基づいているのかを注意深く見ることで、危険は回避されるはず

AI開発におけるメディア企業の優位性

こうした記事を読んでも、生成AIの開発工程にメディア企業がしっかりと入り込む必要があると改めて感じます。むしろAI開発トレンドを引っ張っていくべき存在

-広告が苦戦する中で、メディア企業にとってAI企業とのビジネスは大きな可能性があります。特に、過去からのアーカイブが意味を持つのは、老舗のメディア企業にとっては大きい
-先行する各社のAIモデルは既に基礎的な学習を終えていると見られますが、OpenAIが開発しているとされるSearchGPTのような検索を内包したモデルなどでは、リアルタイムの最新情報が求められていきます。そうした場面ではメディア企業の最新ニュースが役立つ

「余白あるコミュニティ」が時代をつくる

こういった余白のあるコミュニティ運営に取り組もうとする地方自治体は珍しいのではないでしょうか。枠にはめ込むことで「ぱっと見成果が上がっている」ように見せるのは時代遅れなのかもしれません。

-長野県小布施町は全国から参加者を募り、2050年の町や日本社会の将来像を議論する「ミライ構想カレッジ」を始める
-町づくりや地域づくりに役立つ自由な発想を引き出すため、成果をまとめる形式をあえて定めない
-専門家のほか共同で主催する東京大学とNTT東日本から知見を得た上で、参加者が主体的に議論をして新たなアイデアを出してもらう
-運営事務局の北埜航太氏は「活動内容を事前に固めるのではなく、参加者の意欲に応じて柔軟に変えられる『余白』を残している」と説明する。事務局はアイデアの基礎となる学びの提供や議論の大枠設定などにとどめる

「賢く縮むまち」に学ぶ

賢く縮む。今後数十年にわたる社会のキーワードです

-右肩上がりの発想を捨て、広げた風呂敷をいかに畳むか。住民の生活は守りながら、必要なものは充実させる
-ハコモノ推奨から決別し、人口減少を正面から受け止めて町をつくりかえる

スマホの害悪について因果関係実証は困難

米ニューヨーク大学の社会心理学者ジョナサン・ハイト氏によるソーシャルメディアの課題についての指摘は示唆に富みますが、一方で調査研究アプローチの限界も感じてしまいます。

-ソーシャルメディアでは相手を罵倒するなど、攻撃性もいとわず影響力を得ようとする者がいるため、穏健派の発言力が低下していると述べています。妥協を見いだす政治のあり方が失われたという
-身体を使った経験や対面での交流時間をスマートフォンに奪われ、精神面に不調をきたすことが多いという論を展開
-この論の因果関係を示す有力な実証研究はありません。それはスマホを長時間使う群と短時間しか使わない群を長期間観察することが難しいためで、問題を単純化し、スマホとソーシャルメディアを悪者扱いしているという批判も

「ニュース見ない」はなぜダメか

ニュースを見ないことの、何がよくないのか?なかなか難しい問いですが、答えの一つが「自分でやるべきことを人に委ねること」だと。凶悪犯罪が増えているor経済が悪化していると感じる人が、現実の推移とは全く異なる傾向(SNSの影響でネガティブな状況と誤認する人が多い)というのは興味深いです。

-英国では、この10年間のニュース離れが特に著しい。ニュースを避ける人は17年の24%から46%に増えている
-人々が時々ニュースから離れて心の健康を守りたいと思うのは非常に理解できる。新型コロナウイルスが大流行し始めたばかりの頃にオランダで実施された調査では、ニュースを断つことが心理的な健康状態の向上と連動していた
-出馬している候補者や彼らが掲げる政策について何も知らないのに、どうやって効果的な国家運営を促すというのか。そもそも、適切な指導者を選ぶことはできるのか
-アルゴリズムによって支配された、注目度や関心が大きな価値を持つ「アテンション・エコノミー」では、何が現実で何が真実かについて意見を一致させるのが既に難しくなっている。批判の的になっている「主要メディア」は確かに、客観性の面で改善の余地がある。しかしそこから離れることにより、世界共通の真実を見いだすことがますます困難となるうえ、現実に対する認識のゆがみがはびこることになる

本の世界もアテンションエコノミー?

本のタイトルが長くなっている?ネットより落ち着いた言論空間だった書籍も、情報に速さと手軽さを求める志向と無縁ではないと。

-直近5年の上位30冊は平均10.3字で、1960年代に比べ2倍近くに達した
-SNSによって、情報を得るための時間と労力をかけなくなってきた。タイトルが長い方が、人は情報がたくさん入っていると錯覚する

ジャーナリストから総理大臣になった人

戦後に総理大臣になった元ジャーナリスト。戦前の言論統制の中で、政府を堂々批判する記事を書いていた、というのはとても興味深いです。

-文章の行間から見えてくる「逆悪」とはーー。国政の中で急速に権力を強めた軍部。互いの足の引っ張り合いでリーダーシップを失った政党。言論統制の圧力に屈し、軍部の言いなりになった大手新聞社などのメディア。そして、好戦的ナショナリズムを支えた国民感情だったのだろう。
-湛山は大正13年、40歳で東洋経済新報社の主幹、翌年には代表取締役に就き、苦しい経営のかじ取りをしながら、日本が戦争への道を進まぬよう、論陣を張り続けた
-にもかかわらず、我が国は太平洋戦争へと突入してしまった。湛山のペンの闘いは無駄だったのか。そんなことはない。彼は身を挺(てい)して、社会が戦争に傾く前にその芽を摘むことの大切さを、後世の私たちに示してくれた

エリートvsポピュリズムの分断は危険

ポピュリズムは反エリート感情の受け皿。対話には余白がなければいけないと。

-エリートは地球の終わりを語るが、人々は今月の終わりを気にしている
-理想や正義だけを追求すると社会はかえって分裂してしまう。現実問題から起こる様々な要求をいかにインクルード(包摂)していくかに知恵を絞るべき

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