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刑を量る

 私は最初のnoteで「性加害者を裁こうとしない社会」と書いた。近く、性犯罪の量刑について書く機会があるだろう。その前提として「頂き女子りりちゃん」事件について触れておきたい。

 頂き女子りりちゃん(本名、渡辺真衣被告)は、男性三人から金銭を騙し取り、罪に問われた女性である。その判決が令和6年4月22日に出た。懲役9年、罰金800万円。そのニュースを聞いたとき、直感的に「重いな」と感じた(控訴審中であるため刑は確定していない)。私は法律の専門家ではないが、心理学は司法と関わることもあるので、学ぶ機会はあった。試験にも出るし。

 ニュースを検索してみると、やはり量刑について話題になっていた。私が「なるほど」と思ったのは、被害額が1億5500万円と大きいことと、罪状が詐欺罪と脱税であることだった。

 詐欺罪は、ときに殺人よりも重い罪に問われることがある。財産的、精神的被害を、法律はかなり重視するらしい。『みんなを稼がせるマニュアル』を書いて販売したのも心象悪かったんだろうな。実際にそのマニュアルで新たな事件が発生した訳だし。

 詐欺罪は10年以下の懲役。渡辺真衣被告は脱税等が加味されて最高刑が懲役15年で争われ、検察側は懲役13年で求刑した。その結果が懲役9年というのは、司法にとって妥当らしい。

 大村陽一裁判長は渡辺真衣被告に対して「男性心理を手玉に取り、好意につけ込む狡猾な犯行」、「意中のホストらの売り上げに貢献するために犯行に及び、刑事責任は相当重い」と非難した。

 ドイツには、こんなことわざがある。「法律とソーセージを愛する者は、作る過程を見ない方が良い」。ソーセージって美味しいけど、製法を考えるとかなりとんでもない食べ物で、法律が作られるときも、見なければよかったと思うようなことが起きている、なんて意味だそう。

 なので私は、渡辺真衣被告の一連の記事を読んで、ソーセージのことを思い浮かべていた。これから記す性加害者たちが、どのように司法で裁かれてきたか、それがいかに歪んでいるか。この事件の判決を通して見えてくる部分があるだろう。

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