大学生と酒 —バカ飲みの善悪—
僕は酒のバカ飲みをする大学生が嫌いです。いや、別にがぶ飲みをするのは個人の自由だから好きにやってくれれば良いのですが、吐いたり、飲み残しをたくさん作ってグラスを開けなかったりして、お店に迷惑をかける飲み方が嫌いなのです。
ですが最近、本当にそれは悪い側面だけなのかどうかと思うようになりました。現在、日本の酒の消費量は減少傾向です。少子高齢化によってそもそも飲む人も減っているし、一人当たりの消費量も減っているようです。国税庁の資料を貼っておきます。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2022/pdf/001.pdf
私はお酒が好きで、ウィスキーと焼酎をよく飲みます。最近やっとビールと日本酒の美味しさを理解してきました。バイト終わりのビール、魚介と合わせる日本酒がうまいんだ。これが。
この、お酒の消費量の低下は何を意味するのでしょうか。それは、日本の酒産業全体の衰退です。今までのような莫大な需要に比べたら、これからの需要は減っていく一方です。現在酒の消費量の多い30~60代も、これから高齢者になったとき、確実に今より飲めなくなるでしょう。
これによって、美味しいお米などの穀物によって作られる美味しいお酒たちは、種類を減らしてしまったり、中小のお酒の企業は廃業に追い込まれてしまうかもしれません。
それはとても悲しい。やっとお酒を飲める年になったというのに、出会えずになくなってしまったお酒が増えていくなんて。そんなことを考えていたとき、例のバカ飲みを観測しました。生理的に体が受け付けなくなるまで飲み続ける。飲めもしないのに新しい酒を飲む。それは確かに勿体無いし、迷惑行為でもあります。ですが、将来的なお酒産業の衰退というものを考えたとき、彼らの行動は、自己犠牲を払ってでも自分の好きなお酒に対して金銭を払い続けている、と言えそうです。そう考えたとき、お酒に申し訳ないと思うと同時に、こういう奴らが未来のお酒産業を支えてくれるんだろうなという、謎の安心感も感じました。大学生のバカ飲み行為は、大人になってからではやろうとしてもできない、自己犠牲に満ちた酒への感謝であり、行き過ぎた好意であるのかもしれません。
みんな、お酒を作ってくれる酒造さんに感謝しよう。作る側からしたら、もしかしたらこの酒は吐かれるかもしれない、急性アルコール中毒で誰かを殺すかもしれない、と思いながらも、僕らを喜ばせるためにお酒を生産してくれてる。そうしたら、もう少しお酒が美味しく感じると思います。