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ニーチェ 「道徳や社会と無縁の行動」

自己啓発書やスピリチュアル本は、非常に道徳的であり、高い社会性や行動力を要求します。そのため、社会の中で心身をすり減らして苦しんでいる人にとっては、有害になり得ます。

一方で、ニーチェの『ツァラトゥストラ』は孤独を讃美する書であり、社会の中で心身を疲弊させている人にとって、癒しとなるでしょう。

ツァラトゥストラは、燃え尽きて灰のようになった心身を10年間の山籠りで癒しました。彼は山の中の洞窟でじっとしていたわけではなく、山を登ったり、森を歩いたりしていました。それによって魂にエネルギーが充電されていったのです。

ツァラトゥストラが言う「行動」とは、道徳的で社会性のあるものではなく、独りで山を登ったり、森を歩いたり、自然の中で思索したり、また、よく笑い、よく眠ることを指します。

このように、道徳や社会と無縁の「行動」も存在します。その自然の中での「行動」が魂を癒し、充実させるのです。

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わたしの『ツァラトゥストラ』全篇は、孤独に捧げられた熱烈な讃歌だ。
ニーチェ『この人を見よ』「なぜわたしはこんなに賢明なのか8」手塚富雄訳、中公クラシックス、Kindle版。

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ツァラトゥストラは、三十歳になったとき、自分の故郷と故郷の湖を捨てて、山にはいった。そこでかれはおのが精神の世界に遊び、孤独をたのしんで、十年間倦むことがなかった
ニーチェ『ツァラトゥストラ』「ツァラトゥストラの序説」手塚富雄訳、中公クラシックス、Kindle版。

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あのとき君は君の灰を山上に運んだ。きょうは君は君の火を谷々へ運ぼうとするのか。君は放火者の受ける罰を恐れないのか。
ニーチェ『ツァラトゥストラ』「ツァラトゥストラの序説」手塚富雄訳、中公クラシックス、Kindle版。

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だが、君は君自身を君自身の炎で焼こうと思わざるをえないだろう。いったん灰になることがなくて、どうして新しく甦ることが望めよう
ニーチェ『ツァラトゥストラ』「創造者の道」手塚富雄訳、中公クラシックス、Kindle版。

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わたしは自分自身の思想のためにあまりにも熱をおびてきて、身を焼かれるのだ。そのためわたしは、しばしば呼吸さえ奪われそうになる。そのときわたしは埃まみれの部屋を捨てて、大気のなかへ出なければならない

しかし学者たちは冷ややかな日陰に冷ややかにすわっている。かれらは何事につけ、ただ観照者であろうとする。そして太陽が灼くように照りつける階段に降り立つことを避ける。
ニーチェ『ツァラトゥストラ』「学者」手塚富雄訳、中公クラシックス、Kindle版。

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わたしの場合、創作力がもっとも豊かに湧き出るときに、筋肉の軽快さがいつも最高になった。肉体が霊感をうけるのだ。「魂」などは放っておこう──いくどか、わたしの踊っている姿も見られたはずだ。

そのころわたしはまるで疲労知らずで、七、八時間、山の中を歩きまわったものだ。よく眠り、よく笑った──、わたしは、完全な頑健さと忍耐をそなえていた。
ニーチェ『この人を見よ』「ツァラトゥストラ4」手塚富雄訳、岩波文庫、Kindle版。

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さてツァラトゥストラは山を一歩一歩登りながら、若いときからのさまざまの孤独なさすらいを追想し、自分が今までにどんなに多くの山々、尾根、頂上に登ったかについて考えた
ニーチェ『ツァラトゥストラ』「さすらいびと」手塚富雄訳、中公クラシックス、Kindle版。

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