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聞くことばっかりやってきたけど、「聞かれてみて」やりたいことが見えてきた

普段、誰かに話を聞いてもらう機会ってありますか?

「人と話すことは多い」と答える人も、「聞く」だけに意識を向けてみると、意外と「ただただ、話を聞いてもらう」経験って、少ないかもしれません。

ぼくは、これまでライターや編集の仕事をしてきたため、取材で人の話を聞くことが多かったです。話すよりも聞くことに多くの時間を費やしてきました。

もちろん仕事でなくても、日々のコミュニケーションの中で聞く機会はたくさんありますよね。

そんなぼくがここ最近、「聞いてもらう」経験を通して、改めて聞くことの価値を実感したので、その体験について話したいと思います。


聞いてもらうことで自己理解が深まった


最近、ぼくの中で大きなトピックだったのが、1対1で話を聞いてもらう「パーソナル編集者」と「コーチング」を受け始めたこと。どちらも1対1で、自分の話を60分、とことん聞いてもらうことができます。

必然的に自分の話を聞いてもらう機会が増えました。

そこでまず実感したのが、モヤモヤっとしていたものが言語化されていくことだったんです。

詳細は省きますが、自分が目指したいゴール、現状とのギャップ、そしてそのギャップを埋めるために何をすべきか、モヤモヤっとしてたことが明確になりました。

これはぼくにとって大きな変化でした。

聞かれる」ことで自己理解が進み、やりたいことが明確になったんです。

よくよく考えると自己理解の最初のステップは、頭の中にぼんやりとあるものをとにかく雑に吐き出し、解像度を上げていくことですよね。

その点、聞いてもらうことで言葉が生まれ、自己理解が深まったのだと思います。


「聞く」があると、立場の違う人とも会話できる


もともと人見知りのぼくが、多くの人と出会い、取材できるのも「聞く」が軸にあるからです。

とくに取材では、まったく初対面の人のバックグラウンドや想いを聞く必要があります。

しかも、基本的には1時間という限られた時間で。

さらに取材では経営者など、自分とは異なる立場の人に話を聞く機会もあるのですが、そうした方々と対等に会話できるのは「聞く」があるからだと感じています。

このように、「聞く」には境界を超える力があり、自分とは次元の異なる人ともつながれるものだと思っています。

何かを話そうとするのではなく、聞けばいいんだと割り切るようになってから、1対1の会話も怖くなくなりました。


聞くことの原点は親との会話


「聞く」の原点を振り返ると、それは親との会話でした。

小さい頃から、母親が運転する車の助手席に座り、飲み会後の父親を迎えに行ったり、買い物に行ったりすることが多かったのですが、車中で母親の話をとにかくうなずきながら聞いていました。

まだまだ幼かったので、「質問をする」という意識はありませんでしたが、それでも「うんうん」と頷いているだけで、母親はたくさんの話をしてくれました。

聞くことで、年の離れた親とごく自然に会話ができていたわけですね。

そうした聞く素質がぼくにあったかはわかりませんが、仕事として取材をする機会が増えると、クライアントから嬉しい言葉をもらえることがたびたび出てきました。

例えばこんな言葉で、もらったときにはとても嬉しかったのを思い出します。

引き出し方が素晴らしいので、ついつい話しすぎてしまって(編集大変だっただろうなと)

質問力、引き出し力が素晴らしくて…ついついたくさんお話してしまいましたが、記事はしっかりまとめてくださって、その編集力に脱帽です

質問の間がちょうどよく、問いかけをしてもらうことでどんどんと話が深まっていく感覚があった


生成AI時代、ライターに残されたのは「聞く」なのでは?


ぼくも、普段のライティング業務などで「生成AI」をフル活用するようになり、文字起こしから初稿作成までの工程は、かなり削減されるようになりました

取材後、原稿を作成するまでの工程の大部分で、生成AIが担ってくれるようになったと感じます。

その中で、ライターが介在する価値を考えてみると、人と人とのやり取りである取材ではないかと思います。

取材でいかに話を聞いて素材を集められるか、素材の集め方で最終的な原稿の質も変わってきます。

つまり、ライターには今後、より「聞く」ことが求められると感じます。


ぼくも、そんな「聞くをもっと磨きたい」とコーチングスクールに通ったり、改めて書籍で聞くことを理解しようとしたりしています。

その中で、オンライン1on1研修などを提供するエール株式会社の代表・櫻井 将さんが書かれた「まず、ちゃんと聴く。」という本に出会いました。


本の内容は「まず」「ちゃんと」「聴く」を分解し、それぞれについて解説するものだったのですが、ぼくが何より気になったのが、その会社のビジョン。

それが、「聴いてもらえる時間が誰にとっても当たり前のようにある社会へ」でした。

このビジョンを見て思ったのが「聞いてもらえることって意外と当たり前じゃないないよな」ということ。


臨床心理士の東畑 開人さんが書かれた「聞く技術 聞いてもらう技術」という本では、「聞くの不全」という言葉で語られており、「話を聞けるようになるためには、まずあなたが話を聞いてもらう必要がある」と述べています。

あなたが話を聞けないのは、あなたの話を聞いてもらっていないからです。心が追い詰められ、脅かされているときには、僕らは人の話を聞けません。 ですから、聞いてもらう必要がある。

聞く技術 聞いてもらう技術


聞くことは、コミュニケーションにおいて重要視されます。

しかし、その前にまずは、自分が聞いてもらえる経験をすると、聞くことの大事さがわかり、きちんと人の話を聞けるようになるのかもしれません。

ぼくも、これまで聞くことばっかりやってきましたが、聞いてもらうことで改めて「聞く」の価値を実感でき、これまで以上にちゃんと聞こうと思うようになりました。

人の話を聞こうと思ったら、まずは自分の話を聞いてもらう経験をすること。

逆に言うと、相手に話を聞いてもらいたいと思ったら、まずは相手の話を聞くことが必要なんだなと思います。


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