Cochlea 2024.07.19
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あなたの家族は。今どうしてる。
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家族は嫌いと言ったわね。お父さんのこともあったし。それで、あなたには何か変化があった?それとも何もなかったかしら。
私が何か言うわね。それであなたが答える。
そうよ。
なぜ。
こういうふうにすると物事が整理されたり、気持ちが落ち着いたりするから。
ちくわ
言葉にしてみると気付かなかったものに気づくこともあるわ。
ち く わ
それはなに?好きな食べ物?それとも今食べたいもの?
私が言うのよ。あなたが答える。私は言うわ。私は轟音。何かが互いにぶつかっている。何かが起きている。私は音だわ。人が何を考えているのか。奇妙。だって分からなくても良いのよ。違うわね。何だと考えているのか、ね。人生経験やロジックよりもまえ、言葉や顔よりもまえに。考えてることがあるでしょう。でも、いいわ。気にしたって仕方ないもの。あなたは言うわね。そして私は言う。
そうよ。言葉にできることは良いことだわ。えらいわ。ほら、窓の外を見てちょうだい。良い天気ね。
窓。窓があるわ。駄目ね。外には何もないわ。期待したものは何も。私が本を読むときもこんな気分だわ。どれも最低でつまらない。苛々するのよ。文字を見ていると。本を読む奴も書く奴も嫌いよ。気持ちが悪いのよ。何にも。何にも。本を読むなんて我慢ならないわ。苛々して無理。なんの話も聞きたくないわ。人の声が聞きたくない!人の顔が見たくない!これは何?
言葉!
なにも話さないで。話し始めないで。もう無理よ。何もかも腹が立つ。我慢ならないわ。無理よ。絶対に無理。
from flask import Flask, render_template, request, redirect, url_for
app = Flask(__name__)
posts = []
@app.route('/')
def index():
return render_template('index.html', posts=posts)
@app.route('/new_post', methods=['GET', 'POST'])
def new_post():
if request.method == 'POST':
title = request.form['title']
content = request.form['content']
posts.append({'title': title, 'content': content})
return redirect(url_for('index'))
return render_template('new_post.html')
if __name__ == '__main__':
app.run(debug=True)
ここでは小声で話さなくちゃいけないんだよ。
どうして?
そりゃ、機関に見つからないためだよ。どこで聞き耳を立てているか分からないぜ。
なにをするの?
大きなことさ!世界がひっくり返るようなことをするんだよ!
みんなおどろく?
驚くに決まってる。何もかもが変わるんだ。街も人もまるっきり新しくなるんだよ。大勢の人が死ぬだろうなあ。それと同じくらい大勢の人が産まれてくる。それも人間からじゃないぜ。もう人間が子供を産むことはなくなるんだ。それも変わってしまうんだ!
ぼくも死んじゃうの?
お前は死なないさ。このカプセルが俺たちを守ってくれるから。ご覧!窓の外を!もう世界は生まれ変わろうとしているぞ!透明な翼が膜を破りそうだ!
ひとつ提案してもいいかしら。外で話すことは無理?わたしこの部屋にいると窒息しそう。この建物は最悪よ。わたし来るときに階段を登ってきたんだけれど、まるで使い古された倉庫みたいだったわ。息苦しいわ。息が吸いたい。喉も乾いたわ。いえ、まずは空気よ。とにかく空気が吸いたい。外へ行って!
分かった。あなたは先に行っていいわよ。私は鍵を事務室に届けてから行くわ。大丈夫だから落ち着いて。気を付けて行くのよ。さあ、行って。
何か書かなければ!私は書かなければならぬ!書くことがある。ここに。いや、ここらに。これまで。いままで。何かが。私の書くべき何かが。私とは何か!私が生まれたのは... 書くべきものがある!一瞬で書いてやる!書けるはずだ!これだ!この、これ!何だ!この。いや!書いてやる!私は書いてやるぞ!これを!ええい!
気分はどう。暑くない?
期待したほどじゃなかったわ。さっきの部屋よりはマシね。いつも期待したほどじゃないのよ。いっつも。食べ物も、音楽も、映画も、本も。全部裏切られてばかり。酒なんて最悪よ。煙草もダメだったわ。吐き気で。もう最悪。
あなた未成年じゃない。良くないわよ。
気分が良くなると思ったのよ。また前みたいにできるようになるって。もう遅いけれど。私が高校生だった時のこと知ってる?言ったっけ。今じゃ信じられないくらい忙しかったわ。朝、まだ薄暗い時間に起きて急いで支度するの。それで一時間以上も電車に乗るのよ。どうしてあんなことできたのかしら。信じられないわ。あの頃は、どれだけでも頑張れた気がする。今は力がでないわ。座っているだけでも疲労困憊。目も開けられないし、顎を閉じることさえできないのよ。笑っちゃうでしょ。何にもできないわ。今日もここへ来るまで何をしていたのかしら。覚えていないわ。純粋持続って呼んでるの。ふふっ。純粋持続は狂気だ、というのが私の考えよ。かっこいいテーゼでしょう。でもいいの。何でもいいの。言えた気分になれば何だって。ちちんぷいぷいでも、アブラカタブラでも。かっこよく言うなら「生まれた時代を間違えた」ということね。ふふっ。本当は間違いなんかじゃないのよ。もし本当の時代に生まれていたら、私は私じゃなかったでしょうね。私は轟音だから。間違った時代も本当の私もないと思うわ。あなたは。ちゃんと合ってる時代に生まれてきたの?
じゃあ私も同じく間違った時代に生まれてきたことにしてくれる?
だめよ。同じじゃないもの。あなたの時代と私の時代。同じ言葉が同じものを指すわけじゃないのよ。これは私の言葉。私のラングよ。そしてあなたのラング。私、ひとりは怖くないの。寂しいときは我慢するわ。人が好きじゃないからね。私は他人を愛して信じたりはしない。でも怖くないの。勇気が湧いてくるのよ。素晴らしいものがあるっていう勇気がね。
それは希望かしら?
希望なんていらないのよ。未来がいらないの。私に必要なのは素晴らしいものだけ。それ以外のことは考えないわ。私についても、他の何かについても。私のからだはバラバラになるの。元々そうだったようにね。現にそうであるようにね。力がないから勇気に縋るのよ。勇気を持って勇気に縋るわ!私の脳は薬にやられちゃっているからね。注意深くしていれば誰だって分かるわ。でもこれは夢じゃないわ。いえ、夢と言ってもいいかもしれないわね。だって夢って現実感があるでしょ?反対に現実の方が現実感が乏しいときがあるわ。夢よりも理路整然としているのに。いや、だからこそかもしれないわ。夢の支離滅裂なところに現実感があるのかもしれないわ。現実かどうかは問題じゃないのよ。寄生虫に脳をやられてもね。狂犬病になってもね。誰も否定できないわ。誰にも否定させない。もうすぐ夏でしょう。脳みたいに生ぬるい空気が街を満たすわよ。
©︎ 2024 Yuuki Miwa