包丁をもって追いかけられた
虐待サバイバーのゆうかです。
私は大学生になっても虐待から逃れられずにいました。
私が、大学3年のある冬の日、何かのきっかけで父が逆上しました。
包丁を取り出したのです。
母も姉妹も私も、全員が外に逃げました。外は雪が積もっていました。私達は裸足で夢中になって逃げました。
おそらく、私達が騒ぎながら逃げていたのでしょう、近所の2階の窓がガラッと開きました。
「大丈夫ですか〜警察呼びますか?」と言われました。
普通に考えたら、「警察呼んでください!」というところですよね。でも、私達は全員そろって、急に普通を装って(雪の上で裸足のくせに)、「大丈夫です、すみません」と言ったのです。
助けてもらえそうだっのに、そのチャンスをみすみす全員で手放したのです。
私達のこのときの感情は、恥ずかしさだったと思います。こんな家庭状況を恥じていたのです。
それに、警察は何度来てくれても、父が追い返してしまうので、警察に期待してなかったのです。
その場をやり過ごした私達は、さらに逃げました。私は交番に向かう方向に逃げていたように思います。
この間にも、父は包丁をもって追いかけてくるのです。
私はこのままでは、直に追いつかれて、私達は刺されるんだろう、この雪に血がポタポタと落ち、周りの雪が真っ赤に染まっていく様子を、想像していました。
で、ふと思ったんです。
このままでは何も解決しない、私達は無惨に、全員このまま殺されるだけだと思いました。
私は、走っている母と姉妹を止めました。
「みんな止まって〜逃げてる限りずっと追いかけてくるから!止まって!私が刺されればすむことだから!」と。
みんなびっくりして止まってくれました。
そこで私はひとりで、父に立ち向いました。
刺される覚悟はありました。
ただ、私を刺したら、父は我に帰るかもしれないと思ったのです。そうしたら、被害は最少で済むと思ったんです。
私達が止まったら父も止まりました。
私はゆっくり父に向き合いました。
実はそこで何を話したか、覚えてないんです。ふたりで何かを話しました。父も落ち着いてくれて、みんなで家に帰ることになりました。
今思うと、私が父に刺される覚悟で、父と対峙してる時に、母はどうしてたんだろうと。我が子が刺されるかもしれない状況で、私なら間違いなく我が子の前に立ちはだかります。
もちろん母もDVを長年受けていたので、母を責めることは私にはできませんが、これを書いていて涙が出るのは、きっと、母に守って欲しかった気持ちを諦めきれてないのだと思います。