Michael McDonald「Soul Speak」(2008)
ドゥービー・ブラザーズの来日公演の余韻冷めやらぬ中、やはりマイケル・マクドナルドの声がどうしてもじっくり聴きたく、まず真っ先にチェックしたのが彼のファーストソロアルバムの「If That's What It Takes」。
話が逸れますが、ここではジェフ・ポーカロが3曲叩いてます。マイケル・マクドナルドがスティーリー・ダンに加入するキッカケを作ったのがジェフ・ポーカロだった話は有名で、以降2人は連絡を取り合う仲となります。2人がブレイクする直前、マイケルは「Takin' To The Street」、ジェフは「Lowdown」のラフミックスをそれぞれ聴き合っていたという。そしてマイケルはドゥービー・ブラザーズ、ジェフはTOTOで一気にブレイクし、名実共にトップ・ミュージシャンの仲間入りを果たします。そうした盟友2人が共演したアルバムが前述の「If That's What It Takes」で、素晴らしい内容のアルバムです。ただ、こちらは既にご紹介済ですので、今回は別のマイケルのアルバムをご紹介致します。
本作は2008年発表のソウルクラシックスのカバー集です。実はマイケルは2003年に「Motown」、2004年に「Motown Two」と相次いでモータウンのカバー集を発表しており、これがなかなかの好盤でした。ただ、通して聴くと「暑苦しいなあ」と感じていたことも事実(苦笑)。以降スルーしておりましたので、これを機に、次の「Soul Speak」をチェックした次第です。
プロデュースはモータウン・カバーからの付き合いのサイモン・クライミー(あのクライミー・フィッシャーの片割れ)。サイモンは、1998年のエリック・クラプトンのアルバム「ピルグリム」のプロデュースを引き受けて以来、クラプトンの片腕的な存在となっていきましたね。そして本作のトップに収録されているアレサ・フランクリン&ジョージ・マイケルのカバー①「I Knew You Were Waiting (For Me)」はなんとサイモンが作った曲だったんですね~。1987年のヒット曲です。原曲はアレサのソウルフルなヴォーカルが強烈過ぎたので、まさかサイモンが作った曲だったとは気付きませんでした。
マイケルはこの曲をかなりヘビーに、実にカッコよく仕上げてます。「おッ!いいねえ~」って思いませんか。このヘビーなリズム隊はネイザン・イースト&エイブ・ラボリエル・Jr。印象的なギターはドイル・ブラムホール二世。ネイザンもドイルもエリック・クラプトン・バンドでお馴染みですね。
そしてスティーヴィー・ワンダーの名作②「Living for the City」。
1973年のスティーヴィーの名作「インナーヴィジョンズ」からの1曲。原曲も相当パワフルな力強い曲ですが、これをマイケルも吠えるように歌っております。熱いソウルフルですね。
マイケルはかなりスティーヴィー・ワンダーが好きだったらしく、本作にはもう1曲、スティーヴィーのカバーが収録されてます。それが⑥「For Once in My Life」。
但しこちらはロン・ミラーがオーランド・マーデンと書いた曲で、1968年にスティーヴィー・ワンダーが採り上げヒットした作品。マイケルも60年代モータウン風な軽快なソウルに仕立ててます。随所にファルセットを効かせるマイケルの声にしびれます。間奏のハーモニカはもちろんスティーヴィー自身のプレイ。一発でスティーヴィーと分かりますね。
またまた軽快なソウルの⑩「(Your Love Keeps Lifting Me) Higher and Higher」は1967年のジャッキー・ウィルソンのヒット曲。リタ・クーリッジのカバーでも有名。リズムはモータウンですが、シカゴ・ソウルとしても有名な曲ですね。
この曲を熱唱しているマイケルの映像があったので、そちらをアップしておきます。ドラマーが女性で、エイブっぽい叩き方をしているのが笑えます。マイケルはこうした曲でも渋く歌ってます…。若かりし頃は彼もこういう曲を歌いまくっていたんでしょうね。
エンディングはジャージーなアレンジの⑭「You Don't Know Me」。
カントリー系のシンガーソングライターのシンディ・ウォーカーの1956年のヒット曲。これは原曲もソウルじゃないですね。しっとりとムーディーなアレンジで、マイケルは艶っぽく歌い上げます。これがまた絶品、素晴らしいのです。ソウルミュージックじゃないですが、アルバムタイトル「魂に語らせる」を表わしたものとして、敢えてエンディングに持ってきたんでしょうね。素晴らしい!
この後マイケルは、2017年に久しぶりにオリジナルアルバム「Wild Open」を発表してます。こちらも結構いい。マイケルのソロはファーストだけ…のイメージがあったのですが、モータウンカバーと本作を経て、かなり余裕を取り戻したのか、「Wild Open」は充実した内容です。これらを聴いて、しばし先日のドゥービーの来日公演のマイケルの姿に思いを馳せたいと思います。