Sly & the Family Stone 「Dance to the Music」 (1968)
最近、よくスライ&ザ・ファミリー・ストーンを聴きます。特に今回ご紹介するセカンドがヘビーローテーション化しているのですが。
スライ&ザ・ファミリー・ストーンの名盤っていうと、「STAND!」や「There's A Riot Goin' On」を推す声が多いと思います。実際私もそう思っていましたが、実はこのセカンドも、実に味わい深いアルバムだと最近感じてます。
ジャケット写真、いかにも60年代ソウルって感じ。スライはアフロヘアの印象が強いですが、ここでは珍しく短髪のスライが…。違和感ありますね。
スライ・ストーンのデビューは1967年。ファーストアルバムは、かなり玄人受けするアルバムで、一部で評判を呼んだのですが、商業的には失敗に終わります。レコード会社からは「もっと万人受けするものを作れ!」と指示され、スライは反発をするものの、指示を受け入れ、本作制作に至ります。
そして完成させたのが本作。スライ渾身の1曲がアルバムトップの①「Dance to the Music」。イントロから強烈なビートとパワフルなホーン。一瞬バック演奏が止まったかと思ったら、バリトンヴォイスのコーラスで曲を繋ぎ、一気にサビになだれ込みます。ヴォーカルはメンバー持ち回り…。
アルバム演奏でも熱気がスゴイですよね。そして下にアップしたのは、当時エド・サリバン・ショーに出演したときの映像。最初にヒットした「Everyday People」のサビが演奏されますが、すぐに「Dance to the Music」に。当時は口パクが当たり前だったと思いますが、コレ、恐らく本当に演奏してますね。随所にアドリブも入れたりして、バンドとしての演奏がもの凄く力強い!間奏ではスライが、(高年齢層のハイソな)白人ばかりの観客の中に行き、熱唱します。そしてこの映像のハイライトシーン、バック演奏がパタッと止み、スライが踊りだします。確かこの曲、邦題は「スライと踊ろう」でしたね(笑)。感動モノだし、スライの底力がよく理解出来ます。こんな楽しそうな映像を見ながら、ひょっとしたら、ここがスライの頂点だったのでは?とも思ってしまいました。
オルガンの使い方とか、曲の盛り上げ方とか、随所にスライ・ストーンらしさが出ている③「I Ain't Got Nobody (For Real)」。曲はホーンを絡ませた60年代の典型的なソウル・クラシックな歌ですが、前述の「らしさ」が散りばめられ、決して聞き手を飽きさせません。
スライ・ストーンには強力なベーシストがいました。彼の名はラリー・グラハム。いまでこそチョッパー奏法はファンクには当たり前のベース奏法となってますが、このチョッパー、ラリーが最初の奏者とされてます。⑤「Ride the Rhythm」はそんなラリーのベースが、まるでリード楽器のように縦横無尽に暴れまくってます。それでいてしっかりリズムキーパーの役目も果たしてますし。
後のスライ・ストーンに①や④のような明るさはあまりありません。⑥「Color Me True」はそんな後期の楽曲のような感覚。グレッグのタイトなドラムが印象的です。ちなみにグレッグ、スライ・ストーン脱退後、あのウェザー・リポートにも在籍していたこともあるスゴ腕のドラマーです。
単純にスピーディーなロックの⑧「Don't Burn Baby」も大好き。アップしたのは当時の貴重なステージ音源。意外にもスタジオ音源よりも、スローに演奏してます。バンド演奏はやっぱりカッチリしてますね。
こうしてじっくり聴いてみると、ポップな中にも捻りの効いた良質なアルバムであることがよく分かると思います。何と言っても「Dance to the Music」、この1曲がすべてを表していると思います。音楽って、やっぱり聴いていてワクワクするものが一番。「Dance to the Music」のスライはホントに楽しそうだし、エド・サリバン・ショーでのスライは実に生き生きと輝いてました…。その後のスライは黒人であるが故に思想や改革といったものを背負わされ、その重さに耐えきれなくなっていったような…そんな気がしてなりません。