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Sly & the Family Stone 「Fresh」 (1973)
スライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバムというと、個人的には1971年発表の「There's A Riot Goin' On」でスライは燃え尽きた印象があって、次作にあたる本作は全くスルーしておりました。ところが今回、縁あり本作を購入。そのファンクな作風に、本作こそ彼らの名作!と思った次第。
本作ではベースがラリー・グラハムから当時若干19歳のラスティ・アレン、ドラムがグレッグ・エリコからアンディ・ニューマークに交替。リズム隊が一新されております。アンディは既にカーリー・サイモンのバックでドラムを叩いており、そこそこ知られた存在のドラマーでしたが、ラスティはどうだったのでしょうか。特にチョッパーベースの創始者として著名な前任のラリーの後釜ということで、それなりのプレッシャーがあったと思われますが、それにしては、ここでのベース、かなりオリジナリティ溢れるファンキーなベースを聞かせてくれてます。
本作のある意味ハイライトの1曲でもある①「In Time」。
アフリカンなパーカッションにアンディの控え目でありながらもリズミカルなドラムが見事に絡み、そこにファンキーなベースが乗っかってくるイントロ…、1発目から強烈なパンチを喰らったような感じですね。演奏は実に簡素でシンプルでありながらも、リズム隊が随分曲を牽引しています。特にラスティのベース、タメを利かせたファンクベースがカッコ良すぎますね。アンディのドラミングも、随所に差し込んでくるオープンハイハットが実に心地いい!
こちらもベースのタメが異様に凄すぎる②「If You Want Me to Stay」…、う~ん、このホーンどこかで聞いたことがある、と思ったら、山下達郎が鈴木雅之に書いた「Misty Mauve」でした。ホーン・アレンジは「Misty Mauve」そのもの(笑)。
典型的なニュー・ソウルの⑥「Skin I'm In」。
実にスリリングなイントロは、昔よく見たGメン75の香港空手シリーズで使われたそうなイメージ(笑)。あの頃、ニューソウルが流行っていたんですね。ちなみにここでのベースもよく聴くと相当オリジナリティが高い演奏をしてます。
イントロから過去のヒット曲の「Dance to the Music」を連呼する⑧「Keep on Dancin'」。アンサーソングというか、今のスライなら、あの曲をこう料理するといった感じでしょうか。もちろん見事なファンクに仕上がってます。ここでもアンディのドラムは、バスドラをドンドン鳴らすようなドラミングではなく、むしろハイハットを効果的に取り入れたリズムマシーンのような感じで叩いてますね。
⑨「Que Sera, Sera (Whatever Will Be, Will Be)」は、オリジナルは1956年にドリス・デイが歌ったもので、ヒッチコックの映画「知りすぎていた男」の主題歌でした。オリジナルは夢のあるような明るい楽曲、古き良きドリーミーな楽曲って感じでしたが、スライはそんな風に料理する訳もなく…(笑)。なるようになるさ、といった楽天的な楽曲の筈ですが、スライ・バージョン、この世の終わりさ…と歌っているように感じてしまいます。
エンディングはやっぱりニュー・ソウル風ファンクな⑪「Babies Makin' Babies」で締めてます。リズム隊はもちろん、ホーンやコーラスアレンジも含めてこの当時のスライの魅力が詰まった楽曲です。
スライの新たな魅力、ファンク・グルーヴ溢れるアルバムです。ただしアンディ・ニューマークは次作には参加しておりません。本作がスライの創造性のピークだったのかもしれません…。