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Chicago「Hot Streets」(1978)
本作はシカゴ低迷期の1枚。
これを採り上げるのはちょっと唐突感ありますが、私の中ではそうでもありません。それは本作の中心人物の一人、ドニー・デイカスがシカゴに加入した最初の1枚だから。
つい最近、クリス・ヒルマンの「Slippin' Away」を採り上げたばかりですが、そこでもドニーについて言及。スティーヴン・スティルスとの共演、バッドカンパニーへの加入等彼の経歴も気になるものでしたが、プレイそのものも光るものを感じた次第。
ということで、そのドニーが、シカゴの看板メンバーだったテリー・キャスの不慮の事故死により、その後釜という重責にどう対応していたのか、非常に気になり、本作をここ数日聴いております。
シカゴは前作「シカゴ11」を1977年9月に発表後、長年のパートナーだったジェームズ・ウィリアム・ガルシオと袂を分かち、新たなスタートを切ったのですが、1978年1月、シカゴの看板ギタリストだったテリー・キャスが自傷行為により亡くなってしまいます。一時解散も考えたシカゴですが、オーディションの結果、ドニーの加入が決定。
結果的に本作は、シカゴデビュー以来、初めての全米トップ10入りを逃してしまったアルバムとなってしまい、テリー・キャスの穴は埋められない、これはシカゴではない…といった不名誉な意見を多く頂くアルバムとなってしまいました。
でも実際聴いてみると、確かにあの荒々しいブラスロックのシカゴは影を潜め、かなり時代に即した音になっているのですが、私的には「これはなかなかいいアルバムじゃないか」と感じました。
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プロデュースはシカゴ自身とフィル・ラモーン。なるほどフィル・ラモーンか…。なんとなく彼の要素も加わっているような気がします。
本作からのファーストシングルは①「Alive Again」。
トロンボーン担当のジェームズ・パンコウ作。リードヴォーカルはピーター・セテラ。
イントロから「これがシカゴか?」といった感じ。ディスコミュージック全盛期における楽曲なので、そういった音楽からの影響は多少あったのかもしれません。
実際シカゴのホーン隊はこのレコ―ディング前にビージーズのレコ―ディングに参加し、そこでインスパイアされて、この曲のホーンアレンジを一部見直したようです。(ちなみに③「Little Miss Lovin'」にはビージーズがコーラスで参加してます)
アップした映像は当時のスタジオライヴの模様ですが、凄い疾走感ですよね。ダニー・セラフィーヌの迫力あるドラミングが印象的。そして何といってもドニーの容姿(笑)。まるでメタルキッズ。ギタープレイも激しい。
ロバート・ラムらしい安定感のあるメロディの④「Hot Streets」。
出だしこそ親しみやすいメロディのポップス風な楽曲…と思いきや、流石シカゴです。気付いたら間奏では緊張感あるプログレ風な展開に…。よく聴くと変拍子ですね。シカゴの音楽は本当に一筋縄ではいかないですね。
個人的には本作中一番のハイライト的な⑤「Take a Chance」。
トランペット担当のリー・ロックネイン作の軽快でAOR的な楽曲。最初の歌声で誰?って思いませんか。コレ、ドニーが歌ってます。そしてここでのギターソロ、かなりフュージョンタッチなんですよね。エンディングにかけてはかなり自由に弾きまくってますね。なかなか持ち味を発揮していると思いませんか。
でもドニーは約2年ほどで解雇(苦笑)。素行が悪かったようですね。歌も歌えて、曲も書き、ギターの腕前も相当なもの。ルックスも良かったのに残念ですね。
まるでジョージ・ハリスンの作品みたいな⑥「Gone Long Gone」。
こちらはサードシングルとして発表されたピーターの作品。めっちゃポップ。コーラスまでがポップス風。こんな楽曲もシカゴ(ピーター・セテラ)って作れるんですよね。聴けば聴くほどジョージの曲っぽい。そしてエンディングは安易な70年代ポップス風な終わり方(笑)。これは初期の攻撃的なシカゴ時代のファンからしたら、総スカンだったのではないでしょうか。
甘口な「Gone Long Gone」から一気にハードな⑦「Ain't It Time」へ。
ドニーとドラムのダニー・セラフィーヌ、Warner Schwebkeとの共作。Warner Schwebkeはドニーがスティーヴン・スティルスのバンドに居た時にも共作している方なので、ドニー繋がりの方みたいですね。ヴォーカルはドニーとピーター。
ドニー色の濃い仕上がり。ここでのドニーのギターは、⑤「Take a Chance」とはまた違ったスタイルです。畳み掛けるようなホーンもいいですね。
セカンドシングルとなった⑨「No Tell Lover」。
こういうアダルトなシカゴって大好きです。リーとダニー、ピーターの共作。ヴォーカルはピーターとダニー。
ちょっと洒落たメロディにホーンが優しく絡んでくる…、堪りませんね~。
前述したようにドニーは次作「Chicago 13」を最後に解雇されてしまいます。残念ですね…。
それにしても「Chicago 13」も「Chicago XIV」もジャケットすら思い浮かばない…。次にシカゴがブレイクするのは、デヴィッド・フォスターが梃入れに入った1982年の「Chicago 16」であり、まだまだシカゴ低迷期は続きます。