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児童書が教えてくれた、大事なパートナーの受け入れ方について

こんばんは、ゆのまると申します。


先日こちらの記事で紹介した、岡田淳さんの『まよなかの魔女の秘密』という本。児童書ということで1時間もしないうちに読み終わったのですが、小学生の時には気付かなかった意外な発見がありました。

ちょっと大げさですが、好きな人に受け入れがたい部分があったらどうするか、というようなお話です。

ネタバレというほどでもありませんが、結末に関する記述がありますので念のためご注意を。


『まよなかの魔女の秘密』のあらすじ

まずは本のあらすじから。

物語に登場するのは、「こそあどの森」に住むスキッパー、ふたごの女の子、ポットさんとトマトさん夫婦、トワイエさん、ギーコさんとスミレさん姉弟の5組。

ある夜、こそあどの森は激しい嵐に襲われます。嵐が過ぎ去った翌朝、スキッパーが森の奥を散歩していると珍しいフクロウを見つけ、家に連れて帰ることに。一方その頃、トマトさんの旦那さんで愛妻家のポットさんが行方不明になったとの知らせがあり……。

無題

(画像は絵本ナビからお借りしました)

住人たちは手分けしてポットさんを探すことに。スキッパーはふたごのミルクとシナモン(このふたごはしょっちゅう自分たちの呼び名を変えるのです)と行動を共にします。そのうちに、ポットさんが行方不明になったのは「トメイトウ」という魔女が原因であり、ポットさんを元に戻す方法を聞くため、スキッパー達はトメイトウと対峙することになります。


いきなり話の結末に触れますが、このトメイトウ、驚いたことにポットさんの愛する妻・トマトさんのもう一つの姿。なんと彼女は一年のうち数日の夜の間だけ、トメイトウという魔女になってしまうのでした。長く一緒に暮らしているポットさんはそのことを知っており、対処法もあったものの、今年はトメイトウになる日を間違えていたために今回の事件が起きたとのこと。

スキッパーとふたご達の活躍により、魔女とのスリリングな駆け引きの末に無事元の姿に戻ることができたポットさん。スキッパーと森を歩きながら、こんなことを語ります。


「でも、きみがびんの汁をふりかけようとしたとき、ほんとにぼくはおどろいたんだぜ」

そうそうあのときのこと、スキッパーは思い出しました。

「ポットさんは……」

「なんだい?」

「あのとき、やめてってタイプしたでしょ」

「うん」

「もしも月光の汁だったら、トメイトウは死んじゃうの?」

「いや、死なないと思うな。ただ、魔女じゃなくなるんだと思うよ」

「魔女じゃなくなるといいんじゃないの? どうしてやめろって言ったの?」

ポットさんはすこし考えてからいいました。

「魔女じゃなくなれば、トメイトウはトメイトウじゃなくなるだろ。そうなれば、トマトさんもトマトさんじゃなくなるような気がするんだ」

(pp189-191)


昔読んだ時は、間違いなく何も感じなかっただろうこのやりとりに、私はハッとしました。

「魔女じゃなくなれば、トメイトウはトメイトウじゃなくなるだろ。そうなれば、トマトさんもトマトさんじゃなくなるような気がするんだ」

今なら、言いたいことが少しわかるような気がします。なぜなら似たような経験を私もしたから、です。


趣味人な夫に抱いていた苦い思い

私の夫はカードゲーマーです。「ドロー!」「アタック!」とかそんな感じの。それも28歳にして20年以上のカードゲーマー歴があります。

夫と私は大学時代に知り合ったのですが、その頃はプライベートな話はあまりしなかったので、そんな趣味があったとは全く知りませんでした。その後、大学を卒業してから夫にもいろいろあったらしく、再会した頃にはその界隈でかなりの立場にいるようでした。

ところで、普通社会人になって「友達と遊ぶ」といえば、せいぜい2,3時間ランチか飲みに行くのが多いと思います(ひきこもり調べ)。

しかし、夫は休日となると「大会行ってくる」と言って丸一日雑居ビルにこもってシャカパチし、「たくさんあそんだー」と夜遅くに帰ってくる日々。平日も仕事終わりにカードショップに寄るのがルーティンで、一緒にごはんを食べることも少なかったです。

好きなことは多い方とはいえ家にいることが多い私は、どーーーしてもそれが理解できなくて、趣味のことで何度も何度も何度も何度も言い争いになりました。そして自己嫌悪に陥る、ということを何回繰り返したことか……。

カードゲームをしている時、もしくはその界隈の友達といる時の夫は、私から見ると全くの別人です。LINEの返事もそっけないし、目も合わない。いつもの優しい夫とは違う態度に戸惑うし、自分の知らないところで楽しく過ごしているのも面白くなかった。

(つらい社会で生きていくうえでの大事な息抜きの時間なんだ、私もその間好きなことしよう)

そう思うように心がけても、なかなか気持ちの切り替えができずにいました。


そんな私ですが、再会して3年経った今となっては、以前のように目くじらを立てることは少なくなりました。

コロナ禍で趣味に関してもだいぶ制限され、しょんぼりしていく夫を傍で見ていたのに加え、「この人はこういう人なんだ」という諦めがついたというのも大きいです。


夫は、たくさん苦しんでここまで来ました。

一番つらい時を支え、立ち上がらせてくれたのが趣味の仲間でありカードゲームだと、夫は事あるごとに言っています。いうなれば、「寝食をささげるほど大好きなもの」があったからこそ、夫は元気になったし、その結果として私達は再会し、結婚に至りました。

趣味も、仕事も、育った環境も。何ひとつ欠けては成り立たない、夫を構成するパーツです。だから私がどうこう言えるものではないし、きっと誰にもそんな権利はありません。

夫自身、趣味の時間と私と過ごす時間と、意識して態度を変えるようにしてくれたというのもあります。そのおかげで、どこでどれだけ遊んできても、きっと帰ってきたらいつもの夫だと、私は安心して待っていられます。

まあ、また私のことほっといて!とぺちぺちするくらいはしますけどね。


夫婦に関する有名なコピペで、「夫の趣味の鉄道模型を捨てたら別人のようになってしまった」というものがありますよね。私、あの類の話大っ嫌いなんですよね。人の物に勝手に触るな。

今回『まよなかの魔女の秘密』を読んで、もしもーーと考えてみました。


ーーこの薬を飲んだら、彼はカードゲーマーでなくなります。どうしますか?


そうしたら、もっとたくさんの時間を私と過ごしてくれるかもしれない。私の好きなことにも興味を持って、もっとお話してくれるかもしれない。

でも、それはもう私が出会った「彼」ではありません。

「好きな人」は、断じて自分の「好きな人」になるために生きてきたわけではありません。彼には彼の、彼女には彼女の過ごしてきた時間があって、そして今それがたまたま交わっているだけ。


ポットさんとトマトさんは、お互いに心の底から愛し合っている素敵な夫婦です。今回、子供の頃以来にこの本を読んだことで、パートナーを大事にすることがどういうことなのか、20年近くの時を経て教わった気がしました。

「こそあどの森」シリーズは全12巻。ゆっくりじっくり読んでいきたいと思います。


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箱崎ゆのまる
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