何もない街、徳島市。
ひとまず、こちらの動画を見ていただきたい。
そう、何もないのである。
背景の街並みを見て「あれ?もしかして、、、」とピンときた人はいるだろうか
ここは徳島県徳島市の中心地、主に駅前や商店街を舞台にした作品である。
僕は10年ほど大阪に住み、実家である徳島に最近戻ってきました。
徳島は子供の頃から田舎であることは認識していたものの
帰省するたびに年々、目に見えて分かるほど、街の人口が減り閑散としています。
改めて長期で徳島市に戻った際に感じたのは
野良猫たちが大阪の野良猫よりもイキイキとしていたところです。
大阪でも野良猫はたくさんいます。
都会のマンションなどをするりとくぐり抜け、野良猫たちを保護しているような
人たちもいますが、野良猫を煙たく思う住民もいるので
阻害されながらも逞しく生きています。
ところが、徳島の野良猫はというと
の〜んびりしています。こちらのねこは
人間への警戒心ゼロです。
ひょいひょいと近寄ってきては足の周りをくるくると回ってアピールしてきます。
人が少ないせいなのか、餌を与えている人がいるのか
野良猫たちはなんだか”人間よりも”自由気ままに生きているようです。
この経験から上記の動画の主人公は猫です。
猫が自由に街を歩けるほど、人間がいない街なのです。
人がいないのにはいくつか理由があります。
少子高齢化が進み非婚化晩婚化、若者の県外流出による人口減少
日本が直面している問題のトップランナーといったところでしょうか
それはしょうがないといってしまえばそこまでですが
何よりも感じたのは「超車社会」だからでもあります。
四国4県のうち、路面電車が走ってないのは徳島だけです。
バスも何度か乗りましたが、正直停留所が多すぎて目的地まで辿り着くのに
思っていた以上に時間がかかって驚きました。
気動車(ディーゼルエンジンの電車みたいなの)は運賃も高く路線も少ないので
自持ちの車で移動した方がマシ
といった理由でしょうか。
なので夕方の帰宅ラッシュ時には国道で毎日渋滞が起きているほど
車の交通量が圧倒的に多いのです。
ではなぜ県の中心地である駅前や商店街が閑散とするのか
それは「駐車場の値段が高いから」です。
駐車場はむしろ経営難で取り壊されたビルの跡地にたくさんあります。
駐車場だらけで虚しくなるほど。
しかし停めている人はほとんどいません。
ひどい現状です。
では徳島県民は休日どこにいくのか?
それはイオンやゆめタウンなどのショッピングセンターです。
分かりきったことですが、駐車場が広く車社会にうってつけの商店です。
この理由からかつての休日のエンタメは駅前や商店街ではなく
ショッピングモールへの流入に負けてしまい、
駅前がシャッター街となってしまいました。
問題なのは大型ショッピングモールが全て「県外資本」であるのと
「一拠点集中型」であることです。
簡単にいうと、ショッピングモールができても、その地域にはお金が落ちにくい
だからイオンができると周りの商店街が潰れてしまう。
よくある構図ですが、これを徳島県の行政も市民もなんの危機感がないのが
非常に危ういと思います。
これ以上の話は社会学的になってしまうのでこの辺にしておきますが
この現状を見て、果たして
アーティストとして、この問題を解決できないのでしょうか?
地方創生や地域町おこしに活躍するアーティストはたくさんいます。
イベントを開く、伝統工芸品や農業とのコラボレーション、アーティストレジデンスや空き家を改築してギャラリーにする、企業の誘致などなど
魅力を伝え、人を呼び込み、交流する
といった流れが過疎化の進んだ地域を復興させる一つのセオリーです。
舞台は徳島県の中心地、比較的都会なようで企業もあります。
そんな場所に地域創生案なんて必要なの?と自問自答します。
しかし県の中心地でありながら人の気配がない、お店が軒並みしまっていて閑散としている現状は、経済が回っていかず、雇用も促進されない。
その姿はまるで、
超高齢化社会となった日本の未来を見ているようにも見えませんか?
ではどうすれば人を呼び込めるのか?
弱気ですがはっきりいって非常に難しい問題です。
これができたら苦労はしません。
むしろ徳島は阿波踊りという殿下の宝刀があります。
、、、いや、ここです。ここに問題があります。
徳島は「阿波踊り」という大いなる武器を持っているせいで
その他の宣伝材料がないのです。
阿波踊りはお盆期間の4日間だけです。
その期間中の徳島市は渋谷よりも人口密度が増すほどごった返します。
その様子をテレビなどが放送するので、それを見た県外の人がよく
「こんなにお店も人もいない街だとは知らなかった」と口を揃えて言います。
話を少し逸らしますが
2024年都道府県魅力度ランキングなるものがありますが
最下位は「佐賀県」です。
では徳島県はというと42位でした。
微妙な位置ですね。
下には鳥取や茨城などがありますが、この結果を聞いてむしろ
最下位の佐賀にいってみたい気もします。
ですがなんとなく、この順位は妥当だなと思います。
なぜならば、以前大阪に住んでいた時期に、
”観光として”徳島に来たことがあります。
大塚国際美術館や鳴門の渦潮、人形浄瑠璃の資料館や板野の特産品市場など
自然豊かで落ち着いたのどかな雰囲気の徳島を訪れ
なんて素敵なところなんだ!と再発見させてくれました。
なかなかお盆の期間に阿波踊りは見に行けなかったものの
僕としては十分観光できるじゃないか!と驚きました。
これは県民市民としても魅力を知らなかったことは恥ですし
このことは他県民にはあまり知られていません。
なぜならば、阿波踊りしか知られていないからです。
つまり、阿波踊り以外の魅力や街の様子を
阿波踊り以外の方法でたくさんの人に知ってもらうことが大事なのです。
これをまず徳島の県民市民に認知してもらうことが第一歩となります。
では市民の皆さんはどうするべきか。
それは「車から降りること」です。
僕は散歩が好きなので、あえて歩くことが多いです。
すると「あれ?こんなところにこんなお店が」といった発見があります。
車では気付けないし、ふらっとお店に立ち寄って何かを買っていくというのが
歩くことで可能です。
不便ではありますが、新たな発見がある上に健康的にもよく、車に乗らないことで環境問題にも配慮できます。
歩く人が増えれば人との交流も増え、孤独ではなくなりやがては
街がイキイキとしてくるはずです。
上記の動画は、僕が街を歩いた時に見た光景です。
場所場所を切り取ると、レトロなお店や雰囲気のある裏路地
ゆっくりできる公園、自然、川、海、港、、、
観光地ではなくとも見て楽しい場所がたくさんありました。
本当に人がいない、いやむしろ、人がいないのが面白い
それは歩いてみなければわからないでしょう。
地域活性化というのは、すぐには効果は出ません。
何年もかけて少しずつなっていくものです。
しかし行動しなければ、知ってもらわなければ何も始まりません。
僕なりに、アーティストなりにどうすればいいか
それを踏まえて導き出した答えが
この作品であるということです。
おわり