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宇野昌磨選手を見て「楽しむ」ことの大切さを改めて感じる

北京オリンピックが閉幕した。
冬季五輪過去最多のメダルを獲得した今回、いつもは見ない競技も観ることができた。
理由としては、テレビ放送の時間だったと思います。時差が1時間という北京。競技時間の多くはアメリカのテレビ放送に合わされていましたが、日本の「深夜」になることはなかった。
こうしてあまり知らない競技の“ニュースで切り取られた”演技や日本人選手のみ、ではなく、海外の選手も含めて競技が観れたことで、知らないなりに楽しめ、競技への関心が高まったように感じている。

そんな中でも注目していたのは、フィギュアスケート。今回は、団体戦と個人戦で2つの銅メダルを獲得した宇野昌磨選手のことを書きたい。

銀から銅へ。それでも納得

前回大会銀メダルを獲得し、今回団体戦と個人戦で銅メダルを獲得。日本フィギュア史上最も多くのオリンピックメダル(3つ)を持つ選手になった。普段フィギュアスケートを観ない人からすると、「銀から銅って下がってるじゃないか」と思う人もいるだろう。
ショートプログラム3位で迎えたフリープログラム。前日の練習などで決まっていたジャンプ3つにミスが出た。本人曰く「(普段は緊張しない)試合で久々に緊張しているのが分かった」らしい。理由はわからない、と言うが、あえて想像してみると、気持ちの高揚であったのではないかと思う。
団体戦では、気持ちが上がりすぎることなく臨めたのが良かった。あと一押しはコーチ(ステファン)がいる方がある。ただ、いいところを見せようとしてしまうかもしれない、とインタビューに答えている。
完成に向かっていたフリープログラムの調子が上がりつつあり「練習通りに」が=「ノーミス」と同義になり、その分気持ちが高揚しすぎたのではないかと。
それでも、宇野昌磨選手は「前回のオリンピックから色々あった中で、またオリンピックに出させていただいたこと、トップを争える状態にまでなったこと」を喜び、銅メダルに納得している、と言う。

4年間のジェットコースター

北京オリンピック前や、オリンピック中にあった、宇野昌磨選手の4年間に関する特集には少し事実と異なる印象を持った。まるで4年間ずっと成績が振るわなかったような印象を受けるものが多かったので、事実のみ書きたい。
平昌オリンピック(2018年2月)後
2018年 
3月 世界選手権2位
9月 ロンバルディア杯 優勝
10月 グランプリシリーズ カナダ大会 優勝
11月 グランプリシリーズ NHK杯 優勝
12月 グランプリファイナル 2位
12月 全日本選手権 優勝

2019年
2月 四大陸選手権 優勝
3月 世界選手権 4位
世界のトップを目指すには環境を変えた方がいい、というコーチのアドバイスでクラブを卒業。コーチなしの状態に。
4月 国別対抗戦 2位
10月 フィンランディア杯 優勝
11月 グランプリシリーズ フランス大会 8位
11月 グランプリシリーズ ロシア大会 4位
12月 全日本選手権 優勝(4連覇) 

2020年
2月 チャレンジカップ 優勝
3月 世界選手権 中止
エントリーしていたグランプリシリーズは2大会とも中止
12月 全日本選手権 2位

2021年
3月 世界選手権 4位
4月 世界国別対抗戦 3位
10月 グランプリシリーズ アメリカ大会 2位
11月 グランプリシリーズ NHK杯 優勝
12月 グランプリファイナル 中止
12月 全日本選手権 2位

フィギュアスケートの成績は、シーズンごとに表記されることが多いが、なじみのない方にもわかりやすく、年度ではなく、年で表記してみた。
実際には複数のスケーターが5月以降のショーで新シーズンのプログラムを滑り始め、6月から新シーズンととらえる。シーズンごとにプログラムや、周りの選手とそのプログラムが変わる。

成績として残った事実だけを書くと、タイトルのジェットコースターは「盛りすぎ」と思えるほど2019年以外が順調に見えるのではないだろうか。
ただ、成績はしっかり残している裏で、本人から語られる「演技への納得のいかなさ」がシニア転向以来初めて、表彰台を逃す、と表現される2019年3月の世界選手権4位として現れてきたと記憶している。

宇野選手は、非常に言葉選びのうまい選手で、いつでも言い訳せず、他責にせず、それでありながら大げさな卑下もしない、素直に心情を表現する。毎度インタビューを感心して見ている。
さらに、とっさの時でも、けして人を貶めたり傷つけることのない言葉を選び、変な含ませ方もしないので、思慮深さというより、それが宇野昌磨選手の真実なんだろうと感じている。(もちろん思慮深いことを否定するつもりありません)

なので、メンタルの変遷がファンにも理解しやすいようにも思う。2019年の4月の国別の時には調子が悪いという雰囲気はなかった。
だがすでに「(コーチがいないことで)いい時も悪い時も感情を共有する人がいないので、練習をしていて楽しくない」という言葉が出ていた。その積み重ねが、グランプリシリーズフランス大会での得意ジャンプですら転倒してしまうという結果につながる。
私は、試合を息ができない状態で見ていた。コーチがいないので、誰も寄り添う人がいない転倒が続いた宇野昌磨選手に、フランスの観客から(映像を見ると人種問わず)大きな「ショーマ」コールが沸き起こった。ミスをしたのにもかかわらず温かい声援に、宇野選手は涙。
そのわずか2週間後の宇野選手は、ロシアでミスもいくつかしつつ、笑顔で滑っていた。
正式ではないものの、宇野選手はフランス大会の後、スイスのステファンランビエールコーチのもとに行き、スケートへ前向きな姿勢を見せていたのだ。
この時の心境としては「やめるとしても、スケートを楽しみながらやめたい」と感じていたと宇野選手は表現している。12月の全日本ではミスを少なくまとめ、優勝。フランス大会からわずか1ヶ月半の出来事だ。
もともと技術もそれまでの努力も伴っていたため、“メンタルが整っただけで”状態を取り戻した宇野選手。いかにパフォーマンスにメンタル面が大切かを改めて感じた試合だ。
そしてやる気になった途端のコロナの影響で試合が中止になる事3回。海外には出るつもりで調整をしていて、その上で中止になり、空しさを感じると表明した選手がいました。この選手だけでなく全ての選手が近い心境だったと推察している。
ファンから見れば十分に、そしてきっと本人の中身はもっとジェットコースターだっただろう。

楽しむ、を思い出す

今期の宇野昌磨選手は非常にスケートを楽しんでいる。着実に自身についていく能力と体力の裏に、コーチと、一緒のリンクで練習を始めた鍵山優真選手の存在が大きいのは、ファンが見ていても明らか。
どんどん成長する鍵山優真選手とジャンプ大会をしたり、それぞれの練習を見ていることで、「もっとできる」「もっとやりたい」「できるようになるのを分かち合える」のを折に触れて口に出している。
2020年にはコロナ禍で出国できず、「早くスイスに行きたい」「ステファンに会いたい」と話した宇野選手。この年、長期でスイスに滞在しのびのびした発言も多くなっている。
それが2021年、鍵山君と日本で滑れるようになると、「スケートが楽しい」という発言に。
さらに、靴の調整でしっくりくる組み合わせ「柔らかい靴×山一ハガネのブレード」を見つけたことで、靴の調整に時間をかける必要がなくなり、靴の破損がなく練習できるのが安定につながっているとも。
環境と用具(逆に用具が整ってない状態で4回転跳びまくり、なぜあんなに安定した成績を残せていたのかが疑問なぐらい)が整った宇野選手。
煩わしいことから逃れ、やるべきことだけに集中できるのが、「楽しさ」につながっているのだろう。
練習に集中できることで、自分の成長が感じられるようになり、また「楽しくなる」の好循環。

宇野昌磨選手はオリンピックシーズンになってからのインタビューで「もしも過去に戻れるとしてもフランスでの失敗はもう一度したいと思う」というぐらい必要なことだったと語っている。
おそらくあの出来事がなければ、2019年にすんなりコーチが変わっていても自分の意識はそれまでと変わらないままだったのではないかと分析していると言うことかと思う。
意識とは、「成績を残さねばならない」「成績を残しているからファンは応援してくれている」「ミスはしたくない」そんなことだと様々なインタビューを拾っていくと言葉にしている。
意識が変わっていなければ、用具や、もしかしたらステファンコーチや鍵山選手という環境に出会えていたとしても、ループコースターのように「2位から4位を行ったり来たりして満足するような」それまでと同じような状態であった可能性があると考えているのだ。
「練習通りにできればいい」「ミスをしたら、次につなげて成長すればいい」そんな風に発言する宇野選手は、「トップを狙う選手でいられるように」成長したい、とも言う。
心から「楽しむ」から、成長する。一度でも緩やかになった成長曲線がまた、角度をつけていくように見える。

ビジネスも楽しむのが大事

周りを見ていると、仕事がうまくいっているように見える人は、みんな「楽しそう」に仕事をしている。仕事でなにか「しなければならない」時も、過度な義務感に縛られることなく、こなしている。
自分を振り返ってもやはり続くことは「楽しい」と感じること。
お金を頂戴する、人を雇う、どちらも簡単ではない。大きな責任を背負っているとかんがえている。こまごまとした雑務も多い。ただ、けして得意ではないことも、やっていて楽しいのだ。

美容のサロンは、その時“キレイにする”だけではなく「ご機嫌でいられる日々」を贈る場所だと自負している。
サロンという場所で、お客様にも「主役力」を上げるお手伝いができると信じて施術をしているのだ。そして、自分ができない施術をスタッフに任せていると言う風に考えている。
さらに、任せることでスタッフが自信とやりがいを持って働いている姿を見れたら、こっそり、ワクワクしています。
時に予測不可能なことが起きたり、大変だと思うこともある。いつもはできることができない日がある。それでお客様に迷惑をかけてしまったりすると、落ち込む。

ただ、小さな感情の変化を感じれることも事業が続いているからできること。そして自分自身が成長したり、新たな発見ができるのが楽しい。
この事実を忘れそうになるのを、今期の宇野昌磨選手の姿で改めて思い出すことができていたなぁと考えている。

宇野選手は3月、世界選手権に出場する、
今期プログラム最後の演技。パーフェクトな演技を期待して1ヶ月を過ごしたい。

りくりゅうペアや女子の坂本花織選手、優勝したシェルバコワのことなど書きたいことは山ほどある。
北京オリンピックに合わせてユーリオンアイスの新作画をツイートしてくれるミズノさんのことなどなど。

これを読んだ方は、北京オリンピックで何に注目していただろうか?

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