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読書記録*西洋菓子店プティ・フール
「生クリームはかたさではなく艶だと、じいちゃんは言う。」
という最初の一文が素敵で、すぐ引き込まれました。
千早茜さんの「西洋菓子店 プティ・フール」。
下町の商店街にある洋菓子店「プティ・フール」で、店主の祖父のもとで働くパティシエの亜樹。亜樹の元職場の後輩で亜樹を密かに慕っている澄孝。その澄孝を一途に想い続けるネイリストの美波。プティ・フールの常連客の主婦・美佐江。そして亜樹の婚約者で弁護士の祐介。
登場人物は全員、どこか一方通行な想いを抱えていて、その人間関係や心情が繊細に描かれています。
亜樹の視点で書かれた亜樹と、澄孝から見た亜樹、美波から見た亜樹、祐介から見た亜樹、当たり前だけどすべてが全く違っていて、だからこそ、それぞれの想いが複雑に絡み合う。
それが文字でリアルに表現されているのがこの小説のすごいところだと思いました。
あと、スイーツに並々ならぬ思いを持たれている千早さんが描く洋菓子がとてもおいしそうで…。特に「じいちゃん」が作る柔らかいシュークリームを食べてみたいです。