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『檜垣澤家の炎上』永嶋恵美(新潮文庫)
新年一冊目読書。場所は横浜。明治時代の始まりとともに絹織物系で財を成した檜垣澤家。創業者の妾の子が、母を事故で亡くし、7歳で檜垣澤家に引き取られることとなったところから物語は始まる。当時家にいたのは創業者である父、その妻、その娘と娘婿、孫娘三人(一人は婿付き)。血でいえば、娘の妹に当たるが、孫娘より年若く、はじめは使用人と同じ扱いを受ける。そこからの、主人公かな子の成り上がり物語。
父が死に、娘婿が死ぬ。女が強いといわれる檜垣澤家で、二人の死には疑問が残る。母から、人をよく見ろと教育されたかな子は、大奥様なんか、父のおかげでいい暮らしができているだけの人だと思っていて、娘である自分にも同等かそれ以上の権利があると主張。顔色をうかがい、腹を探り、使用人を味方につけ、家での地位を確保してゆく。
女学校でできた友人とのやりとりだったり、実は父にはもう一人隠された息子がいて、それが思想犯?だったり、明治から大正の上流階級を描いた作品。まさか関東大震災で、かな子の願いが叶うとは。この先の世も、強かに生き抜いたことでしょう。
#読書感想文