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『夜のピクニック』恩田陸(新潮文庫)
朝八時から翌朝まで、丸一日ぶっ通しで全校生徒が歩き続けるイベント『歩行祭』。今年で最後の三年生、男女二人の視点で交互に語られる。主に、同性の友人たちと恋バナをしながら歩き続ける二人には誰にも言っていない秘密があり、このイベントを機に関係を変えたいと思っている。
2004年、第二回本屋大賞の受賞作。書店員が選ぶ賞ということで、書店員をしていた身としては注目していたし、ワクワクしていた。だけど文芸書担当ではなかったし、書店員といっても、どこか遠い人たちが選んでいるという意識もあった。あと、大衆受けする本を嫌う傾向もあった。ので、今の今、2024年まで未読だった。
これまで読んでいなかった本、売れている本を意識して読むようになったのはここ数年。売れるものには理由がある。自分の書くものに反映できるかはわからないが、せめて理解はしたいと思う。
恩田さんの書くものは不思議なもので、個人的に嵌るものと嵌らないものの差が大きいんだなー。『蜜蜂と遠雷』はかなり夢中になって読んで、作品世界に没頭した。それで他のもいくつか手を出してみたが、ううーん、と思うことが多く、全作読むまでには至っていない。
で、これはどうだったかというと、高校生たちの悩み、葛藤が、移り変わっていく景色とともに伝わり、見事でした。とにかく長い。疲れる。帰りたい・・・そんな歩行祭への各自の思いが合間合間に挟まるのだが、意外と厚めの本であり、ページが進むのと、中の彼彼女らの歩みとがリンクしているようで、まだ真ん中か、あとちょっとだ、と左手に残ったページを見て、思ったりした。臨場感のある描写。朝日が昇って来たときには、自分も歩き続けて、その場にいたような感覚に。
「始まる前はもっと劇的なことがあるんじゃないかって思ってるんだけど、ただ歩いているだけだから何もないし、大部分は疲れてうんざりしているのに、終わってみると楽しかったことしか覚えてない」
誰もが大きく頷く感覚だと思う。