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『ダブルマザー』辻堂ゆめ(幻冬舎)

オーディブルで。
電車に飛び込んで死んだ娘の葬儀後、バッグの中から別の人の財布と携帯が見つかる。持ち主に連絡を取ったところ、二週間前に家出した娘のものだという母親がやって来る。そしてその母親は、飾られた遺影を見て愕然とする。なぜならそこに映っていたのは、自分の娘だったから。

一人の自殺者に、二人の母親。二人の語る二十歳過ぎの娘は、二年ほど前に整形し、人が変わったようになったという点で一致している。死んだのは自分の娘であると主張する過程で、二人の母親のおかしさが露呈していく。一人は、ポリアモリーを主張し、中年の男女数人でシェアハウスに住んでいる。もう一人は、立派な家に住み、娘をピアニストにするべく惜しみなく金をかけていたが、その金がどうやら、別居する夫が会社に不正を働いて得た金らしい。そのため、はじめ、二人は互いを蔑み、対立する。が、思い出を語るうち、至らなかった自分に気づき、徐々に、娘を亡くした悲しみを共有し、連帯していく。

間に、娘の高校時代のシーンも挟まれる。二人の娘は、親に不満を持っていたことで意気投合した、無二の親友であった。

死んだのは、どちらか一方の娘で、もう一方は生きている、という希望から、一方はそれより先に自殺していて、残った方が贖罪のため生まれ変わって家族をやっていた、という結論にいたる。そして、残った方がどっちだったのか、二人の母親は、納得の結論に辿り着く。

が、さらにひっくり返しがあった。

いやまさか、とは思うし、現実的ではない。救われない、と思う。が、ピアノ教師、ポリアモリー、ともに回収された、よくできた話だった。


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