被害者意識に関するサーベイ『多視点的な加害者の被害者意識』#2 個人心理学的視点
II. 個人心理学的視点
Q: 被害者意識と認知的バイアス(認知の歪み)はどう関連するのか?
責任回避、自己正当化、敵意帰属バイアスなど
被害者意識を強く抱く人は、しばしば以下のような認知的バイアス(認知の歪み)を示すとされています。
責任回避(責任の外在化)
本来であれば自分自身にも一部原因があるトラブルや失敗に対して、「周囲や社会が悪い」という外部要因だけを強調してしまう傾向。自分に向けられる批判や反省の負荷を軽減するための防衛機制と解釈されます。自己正当化
自分の行為を正当化し、他者からの指摘や非難を受け入れにくくする思考パターン。例えば「自分は被害を受けてきたから、攻撃し返すのは当然だ」というように、自分の不当行為を“当然の権利”とみなす認知の歪みが生じやすい。敵意帰属バイアス(hostile attribution bias)
他者からの行為を悪意的・敵意的に捉えやすい認知傾向。ほんの些細な言葉や行為でも、「自分を傷つけようとしている」と判断してしまう場合があります。これは「自分はいつも不当に扱われている」という被害者意識と密接に関連しています。
これらの認知的バイアスは、“自分は被害者である”というアイデンティティを維持するのに役立ちますが、その反面、自らが成長したり問題を解決したりする機会を奪ってしまう要因ともなりえます。
公正世界仮説(Just World Hypothesis)との関係
公正世界仮説(Just World Hypothesis)とは、「この世界は基本的に公正であり、人は皆自分の行いに応じた報いを受ける」と信じたい人間の心理的傾向を指します。被害者意識との関連としては、以下の2点が注目されています。
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