アパートの1室で気の置けない友人とグタグタ語り合うような話とそれにすら選ばれないであろう話。
日中に起こった小さな出来事から考えたことを月に2回お届けします。
ユウト
日記。
自分のことや日常の出来事など
反抗期は人よりかなり長かったと思う。僕には教育委員会で働く父、生徒会役員の姉がおり、さらに名字もめずらしかったから、地方都市の小さな町の中では生真面目な父の息子として、優等生な姉の弟として「先生の息子さん?先生にはお世話になっていて…」「お姉さんはすごかったよ、ユウトくんの将来も楽しみだね」なんて言われるのが日常茶飯事だった。どこか気を遣ったような、それでいて無邪気さを兼ね備えた期待の眼差しは小さな僕にはずっしりと重く、思うように応えられないモヤモヤもあってか、家の人々に当た
しゃべってはいけないお店でブルーチーズと無花果のベイクドチーズケーキを食べたり、アルバイト先でボジョレーの男と呼ばれたり、「あなたのおかげで良い夜だった」を超える言葉はないかもと思ったり、「すぺしゃるれいぴっどとれいん」の響きにいいなと感じたりした4日間。悪くない日々だった。
引き出し・若さ・軽率さなどから日記っていいなと思ったり、いい夫婦の日にブーケから取り残された花に悲しくなったり、「幸せのこつこつ」のある食卓を囲んだり、学問と文学と厭世だけしていたい人生だったなどと宣ったりした金曜日。いい日だった。
今年初の白い吐息を観測したり、喫茶店での「ごゆ↗︎っくりどうぞ」「おやすみなさい」に惚れ惚れしたり、「まし」という言葉のうるさくなさを好きだなと思ったり、ボージョレ・ヌーボ解禁に舞い上がったりした日。
「ドバイでラオスのコーヒー屋さんのモデルをしたことがあります。」 あなたらしいエピソードを教えてください、と言われたときにはそう答えることにしている。最近出会った人たちには「ユウトっぽいね」とすんなりと受け入れてもらっているような気がするが、少なくとも5年前の僕はそんな突飛さを持ち合わせてはいなかった。 小学校の同級生に子役をしている子がいた。どのメーカーだったかは思い出せないけれど代表作は牛乳のCMであり、地元の放送局だけでなく全国で放送されているらしかった。我が家でテレ
「ルックバックを見る、POLA美術館に行く、などしたい」 久しぶりの1日休みを明日に控えた僕は、友人に雑なLINEを送りつける。 「ちょうど俺POLA先週行っちゃった。ルックバックどこで見る予定?俺も一緒に見よかな」 「新宿か静岡市。それか渋谷、みたいです」 「俺全然東京行けるよ」 熱海に住む彼は翌日が休みだったようで、映画を見るためにわざわざ新宿まで来てくれることになった。8月11日、ペルセウス座流星群が極大を迎える前日のことだ。
映画『まる』を見て自分が日記を書く理由に気づいたり、「今日の自分のビジュいいな」と自画自賛してみたり、コンビニの暖房で冬を感じたりした日々。 「高校生のころ私のこと好きだったの?」と聞かれて「そうだったのかも」と返したり、友人とコンランの展示を見たり、田中さん(仮)が書く文章に「きらい」の文字があることに安心したり、酸辣湯麺のおいしさを知ったりした3日間。 いろんな毎日の低音部になりたいと改めて決意をしたり、疲れているのか銭湯に行けた以外はダメダメだったりした2日間。
久々のバスに乗って、野見山暁治展へ。先日偶然手にした本『アトリエ日記』を書いた画家の追悼展である。実は練馬区立美術館は5年ぶり2度目。1度目は当時好きだった女性にすすめられて、1人エドワード・ゴーリーの絵を見に行ったとき。現実は甘くなかったけれど、それはそうと不思議なものですね。 受付で「野見山暁治展ですね」と言われ、うなづいて300円を渡す。絵を評する力は持ち合わせていないが、力強さを感じる作品がいくつかあって、それがとくに好きだった。「丘陵と空が拮抗する」という記述を見
実は大学院生なので、週1コマの講義を受けるために大学に行く。銀杏の強烈な匂いのなか、いちょうの(まだ葉は緑であるが)写真を撮る観光客がいて、秋なのですね、と思う。 講義終わりには、一緒に仕事をしている他大学の院生とごはんの約束。彼は入社1ヶ月のフレッシュマン。僕はまだ遠慮してしまう距離のようで、彼に提案されたクラフトビールのお店に入る。ビールは得意ではないけれど、人を知るにはその人の"好き"から入るのがいいと思うことにした。 結果、とてもよい会だった。 (めずらしく真面目
11月に入ってからの4日間が充実しすぎていて、ここ2日間がとてもつらい。今日は終日自宅にいたので、夕方にはしっかり気分が下がってしまった。そういえばこの町に住んだのは一駅先に小さな映画館があったからだと思い出し、2時間後、20時半からの映画を予約する。 自宅から歩いて30分、20数席の小さなシアターで見た『若き見知らぬ者たち』は、「あ〜疲れた、気晴らしに映画見よ」という軽いノリの人にはあまりに重かった。感情がぐるぐる。どんな気持ちになったらいいのかわからない。 帰ることす
ついにやってきた平日。仕事終わりには友人とご飯に行く約束があったが、どうしても仕事が終わらず別日にしようと連絡が来て暇になった。そんなときは仕事をするに限る。ひと段落した22時、このままでは今日を終えられない、バーにでも行こうと家を出た。 ひとり夜道を歩くと今日の約束がなくなったことが思い返されて少し悲しくなる。あの人がやりたいことを進められたこと、僕に事情を話してもいいと思ってくれたことは嬉しい。「でも…」と続けたくなる今日の僕は面倒くさい。 こんな状態でバーに行くものじ
文化の日振替休日。美術館に行こうと思っていたのに二度寝をしたら正午を過ぎていた。5キロ先の美術館に行くのに1時間かかると知って行く気を失う。15時、このままではいけないと思いカーテンを開けると、青空ときれいな雲があって気分が上がったので、パソコンを開いて少し仕事をした。 18時、少しでも文化的なことをしようと友人に借りた本を手にカフェに向かう。『自分の感受性くらい』を書いた詩人・茨木のり子さんの『詩のこころを読む」。友人が数年前の僕を「感性が弱っていた」と評し、2年後に「感
人生初の蚤の市。お気に入りの服が乾いておらず、朝一でコインランドリーに駆け込む。午前9時のコインランドリーはほとんど満杯で、世の人も大切な休日にお気に入りを着たいなんて、我々はなんとかわいらしいのだろうかと思った日。天然記念物にして保護してほしい。 肝心の蚤の市は8割が食だった。お目当ては古道具だったが、一緒に行こうと誘った子が食への飽くなき探究心と無尽蔵の食欲を持ち合わせていたから仕方ない。おやつにはドーナツとコーヒーを選んだが、相方はコーヒーを探す途中でドーナツを食べ終
イベントのお手伝いに行ったら実労働は1時間もなく、ほとんどぼけーっとしていたのに、バイト代といって5,000円ももらってしまって、ありがた申し訳なありがた…という気持ちになった話。 髪を切るために表参道に行き、おしゃれそうな場所に月1で通っていると外見をそれなりに保たなくては…と思わされるから良いだとか、虹色の髪や缶バッジでいっぱいの鞄も歩いていて、好きに生きようと思い直せるのも良いだとか思った話。 秋田に来ているという友人から、「駅前にある本屋さんが、あまりにもユウトだ
最近、友人から「冬が近いからあったまりなね」とココアをいただいてすっかりあたたかくなったり、大学の先輩が大きなくしゃみのあとに"Bless me!"と言っていてそのくらいご自愛したいなと思ったりした話。 日記を書くからと文豪気取りで喫茶店に来たはいいものの、緊張で振り子時計より脈拍がはやく、本をめくる音を出すことすら憚られる静かな空間に自分の心臓の音が響き渡っている気がしていたたまれなかった話。 とはいえ、文豪モードのおかげで、入口にあった季節外れの蚊取り線香のにおい、店
9月30日(月) 「食欲の秋だから」と言い訳してたくさん食べた日。 10月1日(火) 「行きますか?釣り!」と連絡をもらって21:30から出かける。今日は家から車で30分くらい、少し遠くの釣り場へ。遠ければ遠いだけ「今回こそは釣れるのではないか」と期待が高まるけれど、実際は遠いときのほうが釣れない気がするよね、と話しながら。 「いい風だね。」そう話す彼女をよそに、ぼくはテトラポッドの大きさと、三方が海のロケーションに夢中。「こんなに大きなテトラポッド見たことない。」「海が海
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