バスに乗って【短編集】
この辺りでは見たことがないバスだ。車体の色が水色と濃い青で上下2色に色分けされている。佐々木拓也はバス停に停まった車体に貼られた「ワンマン」の少し錆びた白いプレートを見ながらそう思った。もうすぐ5歳になる息子の健太が見たら喜ぶかもしれない。
いや、あの子は乗り物より好きなものがある。
「ダーー」
小さい頃の息子の声を思い出して拓也は頬を緩めた。健太が初めて話した言葉は「ダー」だった。聞いたときは父の「ダディー」である自分のことを指しているのかと思って嬉しくなったが、妻の真