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仕事用万年筆
久しぶりに仕事用に古い万年筆を買った。
もちろん描画用だ。
独立当初は線に味わいと変化を出すために、わざと錆びさせたGペンと開明墨汁を使っていた。しかし墨汁が乾くのが遅く、ちょっとした軽い仕事に使うのが面倒になっていた。
そんな折り、京都の廃業寸前の文房具店で60年代の古いパイロット万年筆を手に入れた。ペン先はSOFTで、適度なしなり加減と極細から太字までの線幅の変化が丁度よかった。
それからは古い万年筆を見つけてはフレックスするペン先の物を選んで仕事用にしている。
万年筆は大正から昭和の中期頃までの古いもの程よくしなる。
それこそフワフワである。
それは筆跡や筆記感の基準を毛筆や羽根ペンにしていたためであろう。
しかし60年代以降、複写書類とボールペンが普及して人々の筆圧が急激に上がってしまった。柔らかいペン先では破損してしまうのと、文字に対する美意識の変化のため、現在では万年筆のペン先はガチガチに硬くなっている。
ところで現在もパイロットには良くしなるフォルカンというペン先が用意されている。手っ取り早くそれを買えばいいのかもしれないが、特殊ペン先なので結構なお値段がするのと、「意外とフレックスしない」という意見もあったりして躊躇してそのままになっている。
古い万年筆を好んで使うのは、「探すのも修理するのも楽しいから。」というのが本音だが、フォルカンも機会があれば試してみたいと思っている。