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そうか、あれから4年経ったのか

2020年9月25日、パリの小さなブティックでçanomaのポップアップを開催した。それは私がはじめて、自分で作ったものを自らの手で売った経験だった。

まだコロナ禍真っ最中で、パリでも皆マスクをつけて歩いている時期だった。そんな中ブランドを“立ち上げてしまった”ことに、不安や焦りがなかったわけでは当然ない。

ただ、あまりにも先が見えなすぎて、何も考えられなかったような気がする。ブランドをローンチしたその日のことも、決して明るい記憶としては残ってはいない。曇り空の中、何人かの友人から祝福を受けながらも、私は、得体の知れない漠然としたものを前に、どこか上の空だったはずなのだ。


そうか、あれから4年経ったのか。

あの日私の目の前にあった、“得体の知れない漠然としたもの”は、今はもう消えてしまったのだろうか。そんなことを考えてみたが、どうやらヤツはまだ目の前に鎮座しているようだ。

今となっては遠い昔のことのように思い出されるが、4年というのが長いのか短いのか、私にはよくわからない。長いようで短いような気もするし、短いようで長いような気もする。もしかしたら4年というのはひどく中途半端な長さなのかもしれない。


とはいいつつ、この4年間で、私は、そしてçanomaは、どうやら大きく変わったようだ。私に関しては、日本に居住を移したり、物件を借りてオフィス兼自宅にしたり、太ったり、ひどく太ったり、母が亡くなったり、太ったり、そして、髭が伸びたり。çanomaに関しては、最初は香水4つだけだったのが、お香、シャンプー・トリートメント、ハンドクリームと商品を増やし、10月には香水の新作3つとヘアオイルが出る。取扱店舗数も順調に増えている。そんな感覚は一切ないが、どうやら大きくなっているようだ。

もちろん、変わらないこともいくつかある。相変わらず私は独身だし、引き続きただ誠実にいい香りを作りたいだけでブランドをやっている。çanomaはçanomaで、まだ小さなブランドのままだ。çanomaが生まれた4年前の今日と今の姿は、私の目にはそう大きく変わらないように写る。


これから、どうなっていくのだろう。大きくなるのだろうか、私も、çanomaも。


ブランドを立ち上げた頃は、無理にでもあれこれ変えようとしていたが、今となっては、むしろこのままでゆっくり長く歩く方が、私の性に合っているように感じている。

今の気持ちとしては、有名になりたいとも、大きくしたい、とも思わない。私ができる範囲のことを、着々と、のんびりと、やっていくだけにとどめたい。背伸びするのは、どうやら向いていないようなのだ。


そんな中、挑戦したいことはいくつかある。ひとつは、写真。ブランドのInstagramに、商品の写真をちょこちょこ投稿していきたいと考えているが、その写真を自ら撮りたいのだ。今のところ、çanomaのInstagramはインフォメーション程度にとどまっているが、そろそろその方針を変えてもいい頃だろう。

ラジオにも再度挑戦したい。以前インターン生を入れてPodcastをやっていたが、あれをもう少ししっかりした形でやりたいのだ。香水に関係ないことも話したいし、逆に香水の突っ込んだ話もしたい。

あとは、他ブランドの香りの制作も増やしていけるといいなと思う。目下いくつか取り組んではいるが、思いの外面白い仕事だと感じている。これが増えていけば、私のクリエーションの幅も広がっていくような気もしている。

いずれにしても、私自身が知的に楽しいと思えることをコツコツと増やしていきたい。それが私自身のみならず、ブランドにとってもいいことだと思っている。


そんなわけで、çanomaは5年目に突入する。派手さはないし、あまり変わり映えのしないブランドかもしれないが、それは私の理想とするところであり、周りから何をいわれようと、しばらくは変えるつもりはない。


そんなçanomaのことを、これからも何卒よろしくお願いいます。大変なことも多いけど、いい香りを作ることだけを大切にしつつ、引き続きゆっくり進んでいこうと思います。


çanoma、4歳、おめでとう。私、4歳、おめでとう。


【çanoma公式web】

【çanoma Instagram】
@canoma_parfum
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