父の背中との距離
この箇所を読んでいて、ふと思い出したことがある。
あれは確か保育園の卒業直前のことだったはず。卒業式に出席するにあたり、白いシャツだかなんだかが必要になり、近所のお店まで買いに行くことになった。
普段は車で行っていたそのお店に、その日はどういうわけか自転車で行くことになった。その上、この手の買い物は母と一緒のことが多かったが、その日に限って父が私を連れていくことになった。
私は父が漕ぐ自転車後部のチャイルドシートに乗った。
もう日も落ちた冬の日だったと記憶しているが、卒業式への高揚感からか、寒さは感じなかったように思う。私は父の背中を見ながら、きっとどこか浮かれていたはずだ。
私の下で回転し続けるホイールを覗き込んでみた。スポークが不思議なリズムを刻みながら、気持ちよさそうに回っていた。
そのリズムの独特さゆえだろうか、速いのか遅いのかがどうにもうまく把握できなかった。私はこのとき、困惑と魅惑を同時に感じていた。ホイールは私の下でただ回転しているだけなのに、なぜか私はどんどん前へと運ばれていく。それがひどく不思議に思われたのだ。
そのときふと、ある考えが浮かんだ。もし回転するホイールに、足を入れてみたらどうなるのだろうか、と。
結果は容易に想像できた。きっとホイールは回転をやめるだろう。でも、本当にそうだろうか…?もしかしたら、そこには想像とは異なる結末が待ち受けているのではないだろうか…?
私は恐る恐る、足をホイールに近づけてみた。
賢明な読者の皆様なら、もうお分かりだろう。もちろんホイールは回転をやめ、それに伴い自転車は止まり、さらに左足首の捻挫がおまけについてきた。幸いなことに骨折には至らなかった。“恐る恐る”がよかったのだろう。
その後のことはよく覚えていない。きっと私は大声で泣いたし、父は慌てて私を病院に連れて行ったことだろう。
ただ不思議と、この出来事はあたたかい雰囲気と共に思い出される。それは私にも「父の背中との距離」が近かった時期があることの証左であるからなのだろう。今ではもう父の背中を感じることはない程に、私たちの関係は冷え切ってしまった。そしてきっと、私が今後の人生で父の背中を取り戻すことは残念ながらもう二度とない。
ただあの日、私の目の前には父の背中があった。
確かにあったのだ。
そう考えると、あのときスポークの間に足を忍び込ませた私の判断は、正しかったのではだろうか。あれがなければ、きっと私は「父の背中との距離」が近い時期の記憶を、完全に葬り去っていたことだろうから。
もう目にすることのないであろう父の背中を思い出そうとするが、どうにもうまくいかない。そのかわりに、左足首がかすかに疼くような、そんな気がする。
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