左手の万華鏡、右手の消失点
今日出会ったとある情景について書きたい。
それを上手に表現できるかはよくわからないが、とにかく私はそれを今日やってみたいのだ。
ただ、その前にまずはそれに出会うまでの、今日のあれこれを書き記そうと思う。
今朝は適度な時間に起床。午前中は家のことを少しだけした。その後、お昼前に家を出て、自転車で秋葉原に向かった。
ヨドバシカメラの6階にあるガチャガチャコーナーは、おもちゃ売り場に隣接していたこともあり、親子連れで溢れかえっていた。そういえばもうすぐクリスマスだから、もしかしたらこの人混みの中にサンタクロースも紛れているかもしれない…と思いながら探してみたが、生憎サンタクロース並みの髭を蓄えているのは私だけだった。
それにしても、世の中にはこんなにもたくさんのガチャガチャがあるなんて思ってもみなかった。キャラクターものを筆頭に、生物、文房具、化粧品、食べ物、等々…そのジャンルは驚くほど多岐にわたっていた。ガチャガチャには、私の想像を遥かに超える需要があるということなのだろうか。
そのガチャガチャの山の中から結構な時間を要して見つけ出した、本日のお目当てがこちら。
キューライスの主要キャラクターのガチャガチャ。昔から好きな作家さんだったので、どうしても全部集めたかった（どれかひとつ、と言われたら…ハッチンパモス、かなぁ…やっぱり…）。
無事にミッションコンプリート。
ハッチンパモス
スキネズミ
スキウサギ
ネコノヒー
悲熊
次の目的地に向かう途中、大学の部活の先輩夫婦に15年以上ぶりにばったり会ったり、大学時代によく通っていたラーメン屋に立ち寄ったりしながら、北へ北へと自転車を走らせた。
「足立区生物園」に到着したのは3時ごろだった。小ぢんまりとした動物園のような場所だが、その守備範囲の広さゆえなのか、展示の妙なのか、満足度は非常に高い。ヤギさん、ヒツジさんとも触れ合える。
圧巻は温室。数多の蝶々が目の前を横切るその空間は、私に黄泉の国を思わせた。
これで入園料が300円ポッキリだから驚きだ。また近いうちに訪れたい。
ちなみに、親子連れがほとんどで、一部カップルもいたが、おとなひとりでの入園者はどうやら私だけのようだった。だから、ヤギさん及びヒツジさんへのエサやりは遠慮することにした。
1時間ほどの滞在ののち、近くのガストでスマートフォンと私自身を充電し、25kmの家路に就くことにした。夕方5時少し前だったが、もう日の入りは過ぎていたようだった。
ここからが今日の本題。
荒川にかかる千住新橋にたどり着いた時、その景色に息を呑んだ。
地平線の下に潜った太陽は低い空をオレンジ一色で染め上げ、その低い空がさらに荒川の水面を金色に輝かせていた。太陽は地平線の下から、夜の帳に最後の抵抗を試みていたようだ。
対岸の低い建物は遥か彼方の富士山と背比べをしていた。あるものは少し及ばず、またあるものはほんのちょっとだけ優越感に浸っていた。それらはオレンジの背景にデコボコの線を引いた。
東京は太陽と共に綺麗だった。
Googleマップが指し示す千住新橋を渡るルートを無視し、私は荒川の河川敷を、太陽が沈んでいったであろう方向目指して走ることにした。私が進むにつれて、左手側、荒川対岸の建物たちがクルクルと踊っているかのように動いて見えた。それは私に万華鏡を思わせた。私が車輪を一漕ぎすると、東京の街はまったく違う表情となった。ある時は笑い、ある時は泣いた。怒り、悲しみ、そしてまた笑った。
右手には宙に浮いた高速道路が走っていた。道路が伸びるその先は、太陽のオレンジ色の真っ只中だった。まるで遠近法における消失点のように、車やトラック、街灯、そして高速道路そのものが、遠くのオレンジに吸い込まれていった。
それは西新井橋に辿り着くまでの、たった5分間の情景だったが、私の心に深く刻み込まれた。左手の万華鏡と右手の消失点…西新井橋を渡り西日暮里の方面に向かいながら私は、「左手の万華鏡の中に今私はいるのだから、あるいは私も美しい存在になっているのではないか」と思ったほどだった。
あの情景をどうやって言葉にしようかと、家に帰りながら、新宿でサウナに入りながら、帰宅後に豚汁を作りながら、そして食べながら、考えに考え、考えに考えた末、今こうして筆を執っているわけだが、結局私はあの情景を記述することにことごとく失敗したようだ。もちろん、それが簡単なことではないことは予め予想できていたが、いざ書いてみると、私の筆が想像以上に無力であることを思い知らされた。
まぁ、いいさ。少なくとも、書きながら私だけは、あの情景をもう一度見ることができたのだから。
左手の万華鏡、右手の消失点…
晴れた日の夕方、日が沈んで少ししたくらいの時間、千住新橋と西新井橋の間、北側の河川敷、左手の万華鏡と右手の消失点に出会うことができる。文字にできないそれらの情景に、そう遠くない日にまた会いに行こうと思う。
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