大は小を兼ねない
考えることの多い8月が終わろうとしている。
8月に考えていたことのほとんどについて、まだはっきりとした結論は出ていないものの、その中で少しだけ明確になったこともある。いずれにしても、考えることによっていくつかのことで私は自身が変わったように思うし、それをそう呼ぶのであれば、一応「成長した」ということになろう。
アシスタントの退職から2ヶ月近くが経とうとしている。ひとりできちんとブランドを運営できるか不安でしょうがなかったが、まわりに迷惑をぼちぼちかけながら、なんとかなっている。
気持ち的にはむしろ以前よりも楽になっているかもしれない。会社の状況はきちんと把握できているし、確かに作業量は増えたが、それでもひとりで過ごす時間が増えたことで気楽に感じている自分がどこかにいる。そんな“軽やかさ”が、8月の私に考える時間をたくさん与えてくれたようだ。
8月に考えたことのひとつは、今後ブランドをどうしようか、というざっくりとしているが非常に大きなテーマについてだった。
人が辞めたことでの一番の懸念は、ブランドの成長にブレーキがかかるのでは、ということだった。結果的にそれは杞憂に終わりそうだが、この出来事がひとつの引き金となり、「ブランドを大きくする必要は本当にあるのか」という新たな問いが生まれた。
さて、私はçanomaを大きくするべきなのだろうか。
改めて、私自身が望んでいること、そしてçanomaを通してやりたいことについて考えてみた。
有名なブランドにしたい、私自身が有名になりたい、売上を伸ばしたい、大きな利益を出したい、社会貢献がしたい、お金持ちになりたい、などなど…
ここに挙げたこれらのことの中に、私がやりたいことやなりたい姿は見当たらなかった。
çanomaを通して私が実現したいことは、いい香りを作ることと、そのよさを伝えること。そして、私が望むのは、心身ともに健康な生活と、モノ及びコトへの知的好奇心の充足。8月の暑さの中でたどり着いた、現時点での結論がこれだった。
こう考えると、ブランドを大きくすることは、çanomaを通して私が実現したいこととも、私自身のなりたい姿ともそぐわないように感じられた。大きなブランドになればその所帯を守るために売上を優先しなければならない局面が増えてくるだろう。すると必ずしも私がやりたいクリエーションができるとは限らない。私自身も忙しくなって、ポップアップの店頭に立てなくなるだろう。運動をする時間だってきちんと作れなくなってしまうかもしれない。
つまり、ブランドを大きくすることは、私にとっては間違った選択になる、といえるのではないだろうか。
アシスタントが辞めて、私ひとりになり身軽になったことで、私の考えまでもが軽やかになったのかもしれない。それまではブランドを大きくすることが“前提条件”のように重くのしかかっていたが、そんなルールはどこにもないことにふと気づいた。私は私がやりたいことを、私がやれる範囲でやるべきなのだろう。ブランドとしてやらなければならないブランディングやらマーケティングやらはよくわからないし、さしてやりたいとも思わないからやらない。ポップアップの店頭はどこであれ私が行きたいので、店の大小を問わず行く(とはいえ私の身体はひとつなので行く場所は選ぶ必要が出てくるが)。新作発表はイベント等に振り回されることなく私のクリエーションのスピード次第。私が倒れたらçanomaはおしまい。
それがきっと、私が思うブランドのあるべき姿なのだ。
大きくなればできることも増える、というのは正しい。ただし、大きくなることでできなくなることも出てくる。私の場合、çanomaが大きくなることでできなくなることの中に、やりたいことが含まれてしまっているようだ。
「大は小を兼ねない」いい例だろう。
これはあくまでも今時点での気持ちで、またすっかり変わってしまうかもしれない。それならそれで別に構わない。ただこうして、今の私をきちんと書いておくことが、長い目で見て重要であるように思ったのだ。
いずれにしても、大切なことを見失わないように、軽やかに、健やかに、これからもゆっくり前に進もうと思うのです。
そんなçanomaと私を、これからもよろしくお願いします。10月は新作も出ます、ようやく。
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